リッシュVSダーラ中将
『全員、急いで退避しろぉぉ!!』
ドーバル軍からまるで全てを飲み込んでしまいそうな真っ黒な球体が放たれ、それを捉えた獅子団長ライアンは急ぎ号令を出した。
「マズいな……あれじゃ間に合わない……やってくれるな、ドーバル!
ライアン、俺が迎撃する! だが余波は防ぎ切れない! 各軍で頼む!」
「分かった! 頼む、クロ殿!!」
真っ黒な球体はその周辺に雷が発生している。
また、恐らく重力の魔術なのであろうその周辺には予想以上の圧が掛かり、球体の下に立っていた兵達が敵味方関係なく圧し潰されていた。
クロビはライアンに指示をした後、すぐに魔力を練り始め、両手を真っ黒の球体へと翳した。
「―破壊の聖閃―!」
二重の術式が浮かび上がり、クロビが翳した両手から聖光の光線が放たれる。
それは一直線に真っ黒の球体と衝突し、周囲には暴風が吹き荒れた。
「くっ! 直撃は免れそうだが……さすがに被害は出るか……」
クロビが必死に抑え、魔術による衝撃で次第に球体が真下へ落下し始める。
そして――
ドォォォォン!!
爆音が鳴り響き、辺り一帯は暴風で兵達や亜人族までもが吹き飛ばされていく。
また、ゾルディッカの村にも影響し、頑丈に造られた岩の建物もその衝撃波によって崩れてしまった。
やがて辺りは静寂を取り戻し、空から一人の女が降りて来る。
真っ白の戦闘服を着て、二本の角が生えていて、クロビとは相対する白い鎌を持っていた。
「私の魔術を受けきるとは、さすが仮面の男……いや、〝紅眼の死神〟!」
「ギリギリだったけどな。 後、仮面付けてる時はその名を呼んでくれるなよ」
「ふん、どちらでもいい。 ここで貴様を倒してその首を持ち帰るまでだ!」
すると、女の姿を目にしたライアンが驚きの表情を浮かべながら口を開いた。
「お、お前はパトリシアか!? 何故ドーバル軍側にいる!?」
「ライアン、久しぶりね。 それにゾルスも」
どうやらこの女はコルトヴァーナの幹部達と顔見知りらしい。
「知ってるのか?」
「ああ、元々はこの国の者だ。 しかし、以前戦争があった際に家族達を殺され、我々獅子団も敵軍の猛威によって助けに行けず、恨んでいるのだろう」
ライアンがパトリシアとの因果関係を話すと、「今更関係ない」と切り捨て、鎌を構える。
「まあ、色々あるよな。 だが、今は敵同士……討たせてもらう」
クロビもまた、黒鎌を構えてパトリシアと対峙した。
「行くぞ! 紅眼! ルルナリア様の邪魔はさせない!!」
「知るか! 向かってくるなら抗うまでだ!」
双方が勢いよく踏み出し、ガキンと激しい金属音と共に鍔迫り合いが始まった――
・
・
・
≪ロストヴァーナ・ラグラット≫
魔導ゴーレムを一丸となって撃破し、迫りくるドーバル軍を撃退し続けた事でラビル族、遊撃部隊などは疲れの色が見え始めていた。
そうした中でもシャルとリッシュの奮闘によってどうにか村への侵入を免れていたのだが――
「諸君、ここまでご苦労だったな。 しかし、運が悪かったとしか言いようがない。 この俺が来てしまったのだから!」
突然森の中から数人の亜人種が村側へと吹き飛ばされ、白目を剥いて倒れた。
「もう! ちょっと手加減して下さいよ! 私、巻き込まれるとこだったじゃないですか!」
「はははっ、すまんすまん。 と言うか君も少しは戦ったらどうだ?」
「時が来ればそうします! でも大体はダーラ中将が片付けるじゃないですか!」
「向かってくるなら殴り飛ばす、それだけだぜ? フィラ」
そんな会話をしながら、眼帯を付けた体格の良い坊主の中年男と、ショートカットの小柄が女が森から姿を現した。
「ああ、何だ? 将官クラスみてぇだが……」
「そのまさかだぜ、狼男! 仮面の三人の排除が俺等の任務でな」
「ふん、返り討ちにしてやるよ」
ダーラはその体格を生かしたパワータイプであり、手には金属のグローブを嵌めていた。
「シャル、お前は女の方を頼む」
「分かった!」
フィラは小柄なのもあって、ショートソードを手に持っていた。
「じゃあ、やるかぁ!」
ダーラはガチン!と拳と拳をぶつけ、近くに居た亜人種達を次々と吹き飛ばしていった。
「弱いなぁ、鍛えが足りん! オラオラオラ!」
「チッ、戦闘狂かよ! おらぁ!」
パシュン!とリッシュは魔弾をダーラへ撃ち込み、距離を縮めて銃剣を振るう。
ギン!
「ほお、危ねぇな! ふんっ!」
ダーラはリッシュの魔弾と剣を拳で受け止めると、そのまま逆の手を振り抜いた。
「がら空きだぜ!」
ダーラの拳はリッシュには当たらず、空を切る。
すると、その隙を見逃さなかったリッシュが銃剣をダーラの脇腹へ突き立てた。
グシュ
しかし、ダーラの身体は思いの外硬く、剣の先端部分しか突き刺さらなかった。
「チッ、オリハルコンが通らねぇってどういう身体してんだよ」
「いや、俺に傷を付けたのは20年振りだぜ? おらよっ!」
ニヤっと不敵な笑みを浮かべたダーラがその剛腕を振るい、リッシュを吹き飛ばした。
「ぐあっ!? な、なんて馬鹿力だよ……」
ズドンっと後方にある古民家にその身が突っ込み、ガラガラと建物が崩れていく。
リッシュは勢いよく立ち上がると、魔弾を数発放ち、同時に接近して銃剣を振るっていった。
「いいねぇ、この殺すか殺されるかの環境、最高じゃねぇか!!」
「ケッ、なら一人で死ね!」
ガキン、ガキンとリッシュの銃剣、ダーラのアイアングローブが激しく何度もぶつかり合う。
一方その頃、シャルはフィラとの戦いに奮闘していた。
「もう! すばしっこい!」
「そっちだってさっきから!」
ビュンビュン!とフィラのショートソードが素早い剣戟を繰り出し、シャルは何とか感覚を強化してそれらを躱していく。
しかし、まだその感覚を掴み切れていないシャルは、腕や足に少しずつ切り傷を付けられていった。
パン!
パン!
ジリジリと剣戟を受けていくシャルは、透かさず二丁銃から魔弾を発射し、腕や足の棘を魔力で固めて飛ばしていく。
「くっ、この~! 乙女の顔に切り傷を付けるとは! 許すまじ!!」
シャルの棘がフィラの右頬を掠め、赤い線が出来ていた。
「軍人なら傷は勲章だろ? たぁ!」
「このクソガキ! 殺してやる!」
傷を付けられた事に憤ったフィラは「―火の弾―!」と魔術を行使しながら剣で更に追撃をしていく。
「ぐわっ! 熱いっ!! くそ……魔術とか卑怯だ!」
フィラの魔術が被弾し、その隙に足を剣で斬られる。
「はぁ、はぁ、やっぱり将官クラスは強いのか……でも、オレだって修業したんだ!」
シャルが勢いよくフィラへ飛び掛かると、「遅い!」とフィラがタイミングを合わせて剣で突きを放った。
「ぐっ、……へへ、捕まえたぜ」
「なっ!?」
シャルはあえてフィラの剣を受け、動きを止める戦法に切り替えた。
右肩を貫いた剣。
しかし、シャルは不敵な笑みを浮かべて銃を構える。
「終わりだぁぁぁ!」
パンパンパン!!
シャルが魔導銃から魔弾を連発し、剣を奪われている為に防ぎ切る事が出来なかったフィラは肩や腹部分に被弾していく。
そして――
「だぁ!!」
身を捻って遠心力を活かすと、そのまま棘の付いた足で思いっきりフィラを蹴り飛ばした。
「がぁぁぁあ!?」
ズドンっと森の木に直撃し、フィラはそのまま意識を失う。
「っしゃあ! アニキ、やった、ぜ……!?」
シャルがリッシュの方に目を向けて勝利の喜びを伝えると、その先にはダーラに頭を掴まれ、ぶらんとしていた姿だった。
「アニキ!?」
「ん? フィラがやられたか……まあ死んでないならいいか。
少し早いが止めにするか」
「ぐっ……」
頭を掴まれているリッシュはそのままの状態で何度もダーラの剛腕をその身で受けていた。
「やめろぉぉ!!」
透かさずシャルがパン!パン!と銃を撃ち、接近するのだが、ダーラはわざとリッシュを盾にして魔弾を回避した。
「なっ!? ぐあっ!」
そして、リッシュを盾にされた事で隙が生まれたシャルをその剛腕で一気に吹き飛ばす。
「おいおい狼、こんなもんか? それとも俺が強すぎたか?
まあ中将だが、大将並みだからな、俺」
はははっとダーラが大きな声で笑い、「ドーバル軍、全員突撃しろ!」と周囲の兵へ号令を出した。
実際にダーラは大将と同じ実力を持つ。しかし、自分自身出世に興味が無く、自由に出来る丁度良い地位として今の中将となっているのだった。
「さ、させるか、よっ!」
リッシュは爆魔弾をダーラの腹に撃ち込むと、その衝撃で掴まれていた頭の手が離れた。
「ちっ、まだ力残ってんのかよ。 だが遅いぜ? この村は終わりだ!」
遊撃部隊も奮闘しているのだが、さすがにやり切れない。
また、シャルは吹き飛ばされてしまっている為に指示が出せない状態だった。
次第に兵達が村へと入っていき、入り口付近は火が放たれ、燃え盛っていく。
「くそっ、」
リッシュは水の魔弾を発射して火を食い止めるのだが、兵達が次々と村へ侵入していく。
「まだ……俺は弱いのか……守るんだ。 諦めねぇぞ! ちくしょうがぁぁあ!」
リッシュは挫けそうな状況だが闘志を再び燃やすと、感覚を最大限に高め、「ホーミングショット!!」と上空に魔弾を撃ち放った。
それらは無数に枝分かれして村へと侵入したドーバル兵達を撃ち抜いていく。
「ほう、まだ元気があるのか。 だが、そろそろ限界だろ?」
バシンとダーラへ蹴り上げられ、その身が村の中へと吹き飛んでいく。
「いっ、はぁ……はぁ……こんなとこで負けられっかよ!」
リッシュはどうにか立ち上がると、目の前には20人程のドーバル兵が立っていたのだが――
「はぁ~! 獅子爪炎舞!!」
突然後方から女性の力強い声が鳴り響き、視線を送るとライナが爪から炎を生み出し、クルクルと舞う様にドーバルの兵達を切り刻んでいく。
「私の居場所は奪わせない!」
「ライ、ナ……ははっ、かっこ悪いとこは見せらんねぇよな!」
そして、ゆっくりと前方からはダーラが歩いて来る。
「ほう、良い女がいるじゃねぇか。 こりゃあ楽しみだぜ」
ダーラはライナの姿を見ると本能赴くままの発言をする。
戦争に負ければ抵抗しても意味がない。
誰も守ってくれず、されるがままになる。
それを知っているからこそ、ダーラはあえてそう告げたのだ。
「させるかよ! ライナ、わりぃがそっち頼めるか?」
「ええ、そっちはお願いね!」
二人がやり取りをしていると、「動くな!」と聞き覚えのある声がその場に響き渡った。
「「っ――!?」」
「何で……レオルさん……」
二人の視線の先には、以前ライナに言い寄っていた獅子族の男、レオルが立っていた。
しかも、ライナが世話をしている孤児宿舎の子供に剣を向けて。
「動くと殺す。 ライナ、お前が悪いんだぞ? 俺の愛を受け入れないから!」
「くっ……」
「お、お姉ちゃん……」
「ユロ……どういうつもりですか、レオルさん。 私が振り向かないからって子供を人質にするって、傭兵から屑に成り下がったのですか?」
「うるさい! そこの狼男とイチャイチャするとは……許せん!
お前が手に入らないなら、殺すまでだ!」
「おいおい、八つ当たりも甚だしいぞレオル」
リッシュは睨み付けるような鋭い眼光に威圧を込め、レオルへ視線を向けた。
「黙れ、ここまで来たら退けないのだ! ライナ、こっちへ来い!
そして服を脱げ! 今この場で孕ませてやる!」
レオルはもはや自分の欲を満たす事しか頭にない。
だからこその強硬手段ではあるのだが、リッシュはその発言に青筋を立てる。
すると――
ピー!
上空から鳴き声が響き、そちらへ視線を向けると遊撃部隊副団長のトルクがコクっと頷いた。
「了解……」
そしてリッシュは魔導銃をレオルに向けて構える。
「き、貴様! 何のつもりだ! このガキが死んでも良いのか!?」
「うるせぇ、残念ながら死ぬのはお前の方だ、ぜっ!!」
パシュン!
リッシュの魔弾が見事にレオルが武器を持つ右手の肩を撃ち抜いた。
そして、スパン!っとタイミングを合わせるようにトルクが右腕を切り捨て、サッと子供を抱えて後方へと下がった。
「ぎゃぁぁああ! 俺の右腕がぁぁあ!」
子供には見せられない光景。
だからこそ、トルクとの迅速な連携技で助けると、周りの状況が見えないように優しく抱え込んだ。
「レオル……分かっているわよね?」
「は、はひ……」
子供が開放されると、ライナが獅子団長顔負けの威圧を放ちながらレオルの前へ足を運ぶ。
そして、ザっと片足を空高く上げると、一気に振り下ろした。
「あなたなんて、大ッキライ!!!」
ズギャン!
レオルはライナの踵落としによって顔を一気に地面へと叩きつけられ、その衝撃で生まれたクレーターの中で頭部を潰されて絶命した。
「はははっ、終わったか? 茶番もそろそろ飽きたところだ。
面倒だから全員で来い!」
レオルとの状況を見ていたダーラはその顛末を見届けると再びガチンと両拳をぶつけ合い、ニヤっと笑みを浮かべる。
「おらぁ!!」
「はっ!」
リッシュとライナが一斉に飛び掛かり、ダーラへと強襲する。
「いいねいいね! そうこなくっちゃなぁ!」
ライナの爪で切り裂かれ、リッシュの銃剣が刺さり、血を流しているのだが、それでも笑みを崩さず攻防を繰り広げるダーラ。
そして、「とっておきだぁ!!」
ダーラは脱力し、ぶらんと下げた腕を思いっきり、鞭の様にしならせてライナへ叩きつけた。
「きゃああ!」
「ライナ!?」
「おっと、余所見はいけねぇぜ!」
再びリッシュに向けてもしならせた剛腕を振るう。
その速さは尋常ではなく、バシンっとリッシュまでもが吹き飛ばされてしまった。
「うぐっ」
すると、ダーラはライナの方へ行き、頭を掴んで持ち上げた。
「ほお、間近で見ると一層いい女じゃねぇか! なっ!!」
そして、ビリっとライナが着ている服を掴み、勢いよく下ろして縦に破り捨てる。
「ぐっ……離して……」
「はははっ、たまんねぇな! どうだ狼男? 最高の眺めだろ?」
ダーラはニタァっと不敵に笑い、「黒の下着とはなぁ」とライナの身体を舐め回した。
「おい……」
「ああ? どうしたナイトさんよ? お姫様が蹂躙されるぜ?」
「ああ? 離せよ……調子に乗んじゃねぇ!」
パシュン!!
リッシュの魔弾が勢いよく発射されると、ライナの頭部を掴んでいた手に被弾した。
「ぐっ!? いってぇな! ってさっきより威力上がってんじゃねぇか!」
「てめぇ……」
リッシュは縮地でライナを抱えると後方へと飛び、自分が着ていたコートを掛ける。
「リッシュ……」
「後は俺がやる。 守るって約束したから守るんだ」
「うん……リッシュ……眼が」
「ん? ああ、何か色々湧き出てくるぜ」
そしてライナを崩れた古民家の瓦礫に座らせると、ダーラと対峙した。
「おいおい、ここで覚醒かよ。 しかも色眼持ちが覚醒とはな!
良い戦いが出来そうじゃねぇかよ」
リッシュはライナに非道な行いをされてしまった事で自分自身の弱さ、守りたいのに守れない現状に怒りが爆発し、茶色眼が青へと覚醒したのだ。
「清々しい気分だな。 まあ身体は限界だがよ」
「そうか、まあそれもすぐに終わる。 俺がトドメを指してやるからな?」
そして、「ふん!」とダーラが大きく踏み出し、その剛腕をリッシュへ向けて振り下ろした。
「あれ、こんなに遅かったか?」
スパン! パシュン!!
リッシュは目にも止まらぬ速さで銃剣を振り抜き、ダーラの拳を切り裂くと、更に魔弾を撃ち抜いて追撃した。
「ぐあぁ、いってぇ……」
「のんびりはしてられねぇな……」
周囲に感覚を広げると、ダーラによって吹き飛ばされたシャルも立ち上がり、兵達と戦っている。
また、遊撃部隊も傷を負いながら必死に抵抗を見せていた。
だが、皆が既に疲労困憊の状態だからこそ、時間を掛けてはいられないのだ。
「限界突破!」
リッシュは一言告げると、己の感覚を極限まで高め、更に研ぎ澄ませていく。
また、同時に魔力を練り上げ、魔導銃へと蓄積させていた。
「余裕ぶってんじゃねぇよ! おらぁ!」
ダーラは切り裂かれた拳を関係なく振り下ろし、容赦なくリッシュを襲っていく。
「ぐほっ……全く……馬鹿力が」
「はっ、お前が貧弱なんだろう?」
「まあいい、これで終わりだ」
「あん?」
「岩竜も貫通させる俺の奥の手だ。 耐えられるもんなら耐えてみやがれ!! バーストショット!!!」
ズキューンっとリッシュの魔導銃から、銃口よりも太い閃光がダーラを襲った。
「ふん!」
ダーラはそれを両拳で押さえるのだが、切り裂かれた箇所に金属はない。
「くそっ、運が悪いぜ……」
次第に押さえる事が出来なくなり、リッシュが放った閃光はダーラの胸部を貫いた。
「ゴブッ……俺、が、負けるとは……」
そしてその場から崩れ落ちていった。
「あ~、しんどっ……」
リッシュも全ての力を使い果たしたのか、その場にバタンと倒れた。
「アニキっ!!」
「リッシュ!」
シャルとライナがリッシュのところへ駆け付けると、ライナは膝の上にリッシュの頭を乗せる。
「ありがと……リッシュ。 守ってくれて」
ライナが涙を流しながらリッシュの頭を優しく撫でる。
「アニキ~!」
シャルも泣きながらリッシュの横に座って心配そうに見つめる。
やがて、中将が討ち取られた事でラグラットを攻めていたドーバル軍は後退していった。
「あ~身体いてぇ……まだ弱いな俺……」
「そんな事ない! アニキは強い!」
「一つ言える事は……」
「「え?」」
シャルとライナが次の言葉を待つ。
そして――
「俺は近接格闘向いてねぇ!!」
リッシュの魂の叫びがラグラット村の前に響き渡っていった――




