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黒き復讐者の交響曲  作者: Rさん
第Ⅰ章 ~ゴルデニア大陸編~
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旅路

※ここから主人公の呼び名を〝クロビ〟に統一します。


カルネール村跡を出てから三日。俺はアーバロン大帝国の西にある、『港湾都市クルッシュ』を目指している。



クルッシュは海沿いにある都市で、漁港が盛んな街らしい。

そこでは魔導船が出ていて、西方にある『エマーラル大陸』へと渡れるのだ。


エマーラル大陸にはローズベルドという国があり、女王エリネール・ローズベルトが治めている。


エリネールは類まれなる高い魔力と膨大な知識、戦いとなれば容赦の欠片もない冷酷さを兼ね備えているらしく、世間では〝西の魔女〟の異名を持つ女王だ。


実際にその容姿も妖艶で、女王の座に即位してから数十年、全くと言って良いほど歳を感じさせないらしい……



「まあ、魔女と言えば何でも知ってるらしいからな。 しかも膨大な魔力って……もしかしたら女王も〝色持ち〟かもしれない。

だから黒い炎について聞ければ良いんだけど……そもそも俺は身分的に女王に会えるのかな?」



どちらにせよ、行けば分かるだろ!と、クロビは軽い気持ちで足を進めた。



とは言え、流石に徒歩で行けば何週間掛るか分からない道のり、そして馬車なんてこの辺は走ってない。



完全に行き当たりばったりな旅ではあるが、ここ1年で鍛えられた身体能力を存分に活かして山や谷、森を颯爽と駆け抜けていく。すると――



「ん? あれは……襲われてるのかな?」



ちょうど森を抜けた街道沿いで商人らしき人達が盗賊風情の連中に囲まれている。

旅路で人を助けるって良くある話なのだが、まさか自分がその場面に遭遇するとは……



「ははっ! 俺達も運がいいぜ! 貴族様だったら金しか頂けないが、商人様なら食料もあるよなぁ?」



「これなら一石二鳥だぜ! なあお頭!」



二人の下っ端盗賊が嬉しそうに剣を抜き、商人が乗る馬車に詰め寄っていた。

既に御者は逃げ、恐らく雇われの護衛が下っ端の手によって地面に倒れて血を流している。



「お前ら、仕事が終わったらそこの死体は森に捨てるか燃やしておけよ。 バレたら面倒だからな」



盗賊の頭は葉巻を加えながら下っ端に指示を出す。



「この商品は私達の命綱なのです! お金は渡しますからそれで勘弁して下さい!」



どうやら荷台には重要な商品が乗せられているようで、商人は必死に頭を下げて両手の平を擦り合わせていた。



「残念だったなぁ! ここで俺達と出会ったのが運の尽きだ。 大人しく全部渡すか、ここで死ねぇ!」



「止まりなさい! お父様をここで死なせる訳にはいかないわ!」



盗賊の一人が商人を切ろうと剣を振り上げた時、馬車の荷台から女が剣を持って飛び出した。



「おいおい、女が乗ってるなら先に言えよなぁ~商人様?」



「うひょーたまんねぇな! 楽しませてくれそうな身体じゃねぇか!」



見た目18~20歳くらいで、背は150センチ後半と平均的な高さだろう。


金髪の長い髪で前髪がポンパドール、目がキリっとしていて鼻立ちも整っている。

何より、豊満な胸が男心をくすぐるまさしくわがままボディってやつだった。



「何で出て来た!? 今すぐお前だけでも逃げてくれ! ここは私がどうにかする」



商人は顔を真っ青にしながら女に向かって必死に逃げろと伝える。


しかし、「嫌よ! 逃げるなんて」と聞く耳を持たない。


その容姿は可愛いよりも、綺麗でエロいって感じだろうか。


当然、盗賊達は逃がす気なんて毛頭なく、「ウヘヘッ」と盗賊達は卑猥な笑みを浮かべながら女の方に身体を向け、中には「ふぉーう!」と言いながら腰を縦に振ってる者もいる。



「盗賊って本当に下品ね……」



「だったらどうするよ? 剣なんて握ってねぇで俺らの()()握ってくれよ!」



盗賊の一人が剣を自分の股間に当てながら更に下品なセリフを吐く。



「私だって剣くらい扱えるわよ! 甘く見ない事ね! やぁ!!」



女は商人に剣を振るおうとしていた盗賊に勢いよく踏み込んで斬りかかる。



「おっとー! なかなか良い筋だな。 だが、速さが足りないぜ! よっと」



盗賊の一人が嫌味なアドバイスを与えつつ、女に剣を振り被る。



ガキン!



盗賊の一撃を受け止めるが、金属がぶつかりう音と同時に剣は弾かれ、女はズサァーっと吹っ飛ばされた。



「これがお嬢様と俺様の力の差だ。 残念だったな! まあ後で楽しんでやるからそこで見てろ」



「くっ……ダメ、このままじゃお父様が……」



再び弾き飛ばされた剣に手を伸ばし、剣を構えた瞬間。



「ぶはっ!」



商人に斬りかかろうとした盗賊は黒い影によって地面に叩き潰されたのだ。



「ん~、大丈夫かい? 倒せそうだったら見過ごそうと思ったんだけど、難しそうだね」



そういって女の前に一人の男が現れた。


黒髪で左頭部だけを借り上げ、茶色いコートに身長と同じくらいの黒い棍棒を持った謎の少年。



「あっ、その、む……無理じゃないわよ! さっきは油断しただけだから問題ないわ!」



「へぇ、でも一人やっちゃったし、面倒だから全部俺がやる」



問題ないって手が震えてるし、なんとも気の強い子だこと。



「さて諸君、覚悟はいいかい?」



そういって颯爽と現れた正義の味方気取りで、手に持つ棍棒の先端を盗賊の方へ向ける。



なお、この棍はドーバルの時に使用していた〝漆黒の鎌〟である。


この武器自体がクロビの黒炎から形成されている為、現在は刃が無い2メートル弱の黒棍となっているのだ。


勿論、刃を生み出して鎌にする事は容易だが、そもそも殺戮者になるつもりはない。


だから父の残した槍術と棍法を組み合わせたオリジナルの型で戦うのだ。



「てめぇ! 何勝手に割り込んで仲間ボコってんだよ! 邪魔すんじゃねぇ!」



そういって残りの盗賊が一斉に斬りかかってきた。


とりあえず、そのまま真っすぐ棍を一人の鳩尾目掛けて突きを放ち、更に円を描きながら足払いで転倒させる。


次に、斬りかかって来た盗賊の剣を棍を横にして防ぎ、そのまま受け流してクルっと延髄に打撃。


最後に向かってきた盗賊は額に伸ばした棍の先をそっと当てて手元の端を掌打。


その衝撃でバク宙をするように回転し、白目を剥きながら下っ端達は崩れ去った。



「す、すごい! あんな一瞬で……」



下っ端達を倒すのに時間は掛からなかった。およそ1~2分。


残すはお頭一人だね。



「ほぉ、お前さんやるじゃないの。 だが、そいつらと俺様を一緒にしてくれるなよ?」



「別に一緒だとは思ってないけど、それは微々たる差でしかないな」



「言ってくれるじゃねぇか。 おらぁ!!」



盗賊の頭は一般的なロングソードではなく、呉鉤の様な大きな曲刀を抜き、斬撃を放った。



「うぉ!」



盗賊だしそんな技を使わず、ただ斬りかかって来るものかと思ったけど……そうじゃないんだな。


しかし、驚いたとはいえしっかりと斬撃を受け切り、感心しつつも棍を構えた。



「さすがに今の一撃じゃ終わらねぇか。 まあどんどんいくぜぇ!

はっ! おらぁ!」



頭は次から次へと斬撃を飛ばしながら、じりじりとこちらへ迫ってくる。



「面倒だな~。 よし、仕方ない! ―(ファイヤー)(バレット)―」



クロビは斬撃を受け流しながらも隙をついて左手をかざし、魔術で火の弾丸を放った。



「な、魔術だと!? くそっ!」



斬撃を飛ばし続ける事に集中していた頭は避け切れず、そのままドガン!と被弾してしまった。


今だっと即座に前方へ跳び、側宙をしながらその遠心力で棒を土煙に覆われた頭へ振り下ろした。



ドゴン!



「いっちょあがり!」



更に土煙が立ち、それが晴れた時には頭は小さなクレーターの中でその頭部を地面にめり込ませていた。

生きて……るよね?



「た、助かったのか……? 良かった、生きてた」



ずっと頭を押さえて丸まっていた商人が周囲を見渡し、安全が確認出来ると安心したように立ち上がっる。



「お父様!」



そして女も商人に駆け寄り、抱き合っている。





※ ※ ※ ※ ※




「私達は商人でして、この先にある鉱山都市ローダンまで向かっている途中だったんですよ。 貴方のおかげで助かりました。 本当にありがとう!」



「そうだったんですか! 実は俺もこの辺の街からクルッシュに行こうかと思って向かってたんですよね~」



まあそっちの方向に馬車が向いてたし、とある程度の予想をしつつ話してみたけどビンゴだな。



「でしたらローダンから魔導列車に乗ればクルッシュもすぐですよ。 宜しければ馬車に乗って下さい。 助けて頂いたお礼ですし、また危ない事があればその時は是非!」



「護衛も兼ねてって事ですね。 勿論喜んでその依頼、受けましょう!」



「貴方……何だか発言が棒読みっぽいわよ?」



さすがは商人の娘!まあ俺も馬車に乗せて貰う気満々だったんだけど……演技力が絶望的だったかな? でも結果オーライでしょ!



「まあいいわ。 助けてもらったのは事実だし、私はカレン、カレン・リフォードよ」



「あっ、私とした事が! 改めてディル・リフォードと申します。 普段はローダンで商会をやっております。 これも何かの縁ですので、ご贔屓に」



ここは俺も自己紹介しなきゃダメか……? なら黒火とかルーセルの名は伏せといた方が良いかもしれない。


仮に名乗るとしても〝クロビ〟の方が良さそうだが、この辺は帝国領だしな……一応、世間的には脱獄者でもあるし、商人の情報網は凄まじいって聞くから念の為にも……



「俺は……クロだ。 家名はない。 あと、旅人かな?」



「貴方、旅人なの!? その強さで!? ハンターじゃないの?」



カレンが信じられないといった顔をして凄く疑り深い眼差しを向けてくる。



ハンターと言うのは、いわゆる冒険者的な存在。魔物の討伐や護衛なんかを生業にしていて、S級やA級だと国からの要請を受ける事もあるらしい。


B~D級の場合は街や村で依頼を受け、それに伴う報酬で生活をしていく者達だ。



「いや、ハンターではないな。 別に興味もないし」



「そうなの? 変わった人もいるもんね~。 それだけ強ければ階級もすぐに上がりそうなのに……まあいいわ! とりあえず立ち話もなんだからお父様、そろそろ行きましょ!」



「ここからだと二日程で着くと思いますので、それまでクロさん、宜しくお願いします。

ちゃんと報酬は払いますよ」



ディルは商人だけあってその辺はしっかりしているようだ。


数日だが俺は雇われの護衛という形でお世話になろう。



実際、街に行っても金持ってなかったんだよな。助かった~!!



面白いと思ってくれましたら、ブクマと評価お願いします!

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