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黒き復讐者の交響曲  作者: Rさん
第Ⅶ章 ~エマーラル大陸編・Ⅱ~
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新装と新魔動機


神霊山でリースとリッシュの母、フェイリンとの邂逅を終えた一行はのんびりとローズベルドで過ごし、魔動機と武器を取りにロアの工房へと訪れた。



「ロア、出来てるか?」



「クロさん、リースさん、リッシュさん、出来てますよ!

魔動機は外に置いてます!」



見ると、クロビの時と同じように布が被せられた魔動機が二機置いてあった。



三人は外の机を囲う様に立つと、ロアが武器を取り出して並べる。



「先ずはリースさんの武器、これはグローブになりますが、甲部分に魔道具が嵌め込まれてます。


この筒状の部分にリースさんが言ってた金属糸を巻き付ければ、【射出】で爪を飛ばし、引っ掛けて【収納】で高い所まで上る事が可能です!」



「ロアっ!」



フワっとまたまた甘い匂いがロアを包み込み、みるみる内に顔が真っ赤になる。



「ありがとっ」



「い、いえ、良かったです」



「良かった? 私の匂い? 胸?」



「なっいやいやいや、そ、そうじゃなくて……喜んで貰えてですっ!!」



「ふふ、大満足」



リースは嬉しそうにグローブを手に嵌めた。



「えっと、次はリッシュさんですね。

一応、装飾も変えておきました


それで、魔導銃の外装をミスリルとオリハルコンに変えまして、魔力を蓄積させる弾倉もミスリルで作ってます。


ですから、かなりの魔力を蓄積出来ますね。

また、それに耐えられる外装になってますので、滅多な事では魔力の暴発はありません。


何より、銃剣部分ですが、剣もオリハルコンで作りました。

それと、属性付与が出来ますので、その辺は臨機応変にですね」



「おお、最高じゃねぇか! 見た目もかっけぇしな! ロア、やるじゃん!」



リッシュがロアの頭をわしゃわしゃと撫で回す。



「後、これは予備の弾倉ですね。 属性を付与しておけば即座に仕えますので、三つお渡ししておきます」



「おう、何から何まで!」



「まだ終わってませんよ! では、最後に魔動機ですね! これです!!」



ジャーン!と布を取ると、そこにはクロビとは違った鳥のフォルムをした魔動機が二機あった。



「クロさんの魔動機は〝(からす)〟と言ってますが、黒い不死鳥をイメージしてます。

ですが、こちらの二機は二人が銀色でしたので、風を司る白銀の鷲〝フレスベルグ〟をイメージしました」



「フレスベルグ、亜人の間では伝説の鳥。 魂を餌にして、風を起こす」



「いいねぇ! それっぽいじゃん!」



「はい、基本の機能はクロビさんの〝鴉〟と同じです。

ただ、リッシュさんのは【滞空】と【気配遮断】が施されてますので、狙撃にはバッチリかと」



「おいおい、至れり尽くせりだな。 文句無しだぜロア!」



「うん、私も嬉しい! ロア、ありがと!」



「えへへ、喜んでもらえて良かったです」



すると、リースが麻袋をロアに手渡した。


中には金貨が数十枚入っている。



「いやいやいや、これは流石に多いですよ!?

素材もリースさんが出したものですし!」



「ううん、いいの。 ロアが頑張ったから」



「貰っとけロア、それがお前の腕の価値だからよ!」



父、トロンも作業を終えて様子を伺っていた。


そして、もはや一人前となったロアを誇らしげに見つめていた。



「あ、ありがとうございます! 調整とか必要でしたらいつでも持ってきてください!」



「おう!」



「よし、じゃあこのまま飛行して服を取りに行こう!」



「あっ、ちょっと待って下さい! リースさんとリッシュさんにもこれを!」



ロアは二人にそれぞれ指輪を渡すと、リースが「ロア、プロポーズ?」とありがちなボケをかます。



「ちっ違いますよっ!? それ、魔動機を収納出来る魔道具です。

クロさんも付けてますからね

リッシュさんは二つ。 銃、しまうの大変だと思いますので!」



「助かるぜ! じゃあいくぜぇ~俺の魔動機!!!」



三人がその場から飛び立ち、雲の彼方へと消えていった――







≪港湾都市クルッシュ≫



「ミリアレアさ~ん! 服、取りに来ました!」



「はーい! ちょっと待って下さい!」



店に来ると、今日はミレアが買い出しに行っている様で、ミリアレアが接客をしていた。


そして――



「お待たせしました! ではこちらへどうぞ!」



奥の部屋へ通されると、そこには二人の服一式が置いてあった。



「先ずはリッシュさんですね、コートは長袖になりますが、ズボンもコートもワイバーンの皮、アイアンスパイダーの糸を使ってますのでかなり丈夫です。


また、銃を使うとの事でしたので、シャツの方にはガンベルトを付けました。

これで弾倉に困る事はありませんね!

どちらも【洗浄】の術式が施されてますよ!

あっ、それとこれはプレゼントです」



「プレゼント?」



「はい、バンダナかなりボロボロでしたので、サービスです!」



「おお、いいじゃねぇか! ありがとな!」



リッシュの服装はクロビと同じく黒の生地に赤いラインが入っている。


また、サービスのバンダナは黒と銀色の二色が使われていた。



「続いて、リースさん!

こちらはコートというよりも丈が短いものとなっております。

どちらかと言えば近接戦闘との事でしたからね。

所謂ポンチョの形になってます」



「可愛い……」



「嬉しいです! それと、ワイバーンの皮とアイアンスパイダーの糸で作ったショートパンツに、ロングブーツ!

ちなみに、コートの中はビスチェコルセットです!

リースさんのは黒地に青のラインが入ってますよ」



さっそく二人は着替えて登場する。



「おお! 似合ってるじゃん二人とも」



「素晴らしい! 最高です! もうパーフェクトですね!!」



何よりも、誰よりも、この服を作ったミリアレアが一番テンションが上がっていた。



「じゃあお会計を!」



すると、先程までテンションがアゲアゲだったミリアレアが急にしゅんとし始めた。



「えっと……そのぉ……」



「幾らだ? 別に幾らでも構わないぜ?」



「ごっ……54000ゴルドになりましゅっ!!」



金額を告げ、盛大に噛むミリアレア。



「意外と安いな! ほら、釣りはとっとけ!」



「はわぁ~、ミレアちゃ~ん!!!」



「なっ何!?」



タイミングよく戻って来たミレアが急に名を呼ばれて驚いていた。



「ミレアちゃん、お客様の神様がいらっしゃるよぉ~」



「何よそれ。 クロ様ももう大切なお客様でしょ! 大切にしなさいよ!」



「うん、大切にする~!!」



「さてと、これで一通りの用事は済んだな。 そのまま神霊山戻るか?」



「ああ、今なら何でも倒せそうな気がするぜ!!」



「いく、この武器の性能も試したい」



「じゃあ行くか! ミリアレアさん、また来ますね!」



「はい、ありがとうございましたぁ~」







≪神霊山・〝黄昏の丘〟≫



「よし、戻って来たな!」



「ドーバルの魔動機と全然ちげぇな! 断然早いし魔力もスムーズに流れるぞ!」



「ロアの腕が良い。 素晴らしい」



パチパチパチと小さく拍手をするリース。どうやらロアがお気に入りらしい。



さっそく〝現世の狭間〟へ足を運び、以前泊まった洞窟を寝屋に、更に奥へと進んで行く。


すると、ドシン、ドシンと大鬼(オーガ)が三体立っていた。


その内一体がニヤニヤした表情を浮かべて一歩前に踏み出してくる。


通常の大鬼(オーガ)は身体が緑か、たまに赤がいるのだが、目の前の大鬼(オーガ)は紫色と、まるで強者のオーラを纏っていた。



「ちょうどいい! 始めるか!」



クロビは黒鎌を形成すると一気に振り下ろす。


しかし、ガキンとそれは大鬼(オーガ)の持つ棍棒で防がれてしまった。



「何っ!? そんなに硬いのか?」



クロビの鎌は今まで鉄すら切り裂くものだったのだが、大鬼(オーガ)の持つ木の棍棒で容易く防がれてしまった事に驚愕した。



「何か纏ってるみてぇだなっ!」



パシュンっと魔弾を撃ち込み、その隙に「やぁ!」とリースがミスリルの爪を形成して大鬼(オーガ)へと向かう。


だが、それも容易く防がれ、同時にリースは棍棒によって近くの岩壁に吹き飛ばされてしまった。



「ぐわっ!?」



「リース、大丈夫か!?」



「大丈夫……」



ダンっとリッシュが飛び掛かり、銃剣スタイルで大鬼(オーガ)へと突き刺す。


グサっと大鬼(オーガ)の腕から血飛沫が舞う。



「リース、オリハルコンなら通る! がっ!?」



大鬼(オーガ)は斬られた怪我など一切気にする事なく、棍棒を振りかぶってリッシュを吹き飛ばした。



「―黒針(くろばり)―!」



クロビが黒炎の針を飛ばし、その隙に縮地で一気に距離を詰める。


そして、鎌をより鋭く、早く振るっていくと少しずつ大鬼(オーガ)の皮膚に赤い線が生まれていく。



「やぁぁあ!!」



リースが身体に回転を加えて大鬼(オーガ)に連撃を加えていく。


そして、リッシュが【爆魔弾】を大鬼(オーガ)の口目掛けてゼロ距離射撃を行なうと、ドガン!と頭部が破裂し、胴体だけがその場に倒れていった。



「マジか……三人で一体って結構キツいな……」



「ああ、ここに来て急に強くなりやがって……」



「あと二体いる……」



すると、大鬼(オーガ)の後方からドシン、ドシンとより大きな足音が地響きと共にこちらへ迫って来る。


それを耳にした二体の大鬼(オーガ)は何故かその場を離れてく。



「何だ……? 大鬼(オーガ)が退いたぞ……」



「何か来るな……さっきよりヤバそうな感じだ……」



リッシュの言った通り、その姿を見た時にクロビは驚愕した。



「マジかよ……」



「クロ、あれは!?」



「あれが前に話した岩竜だ。 こりゃあキツいにもほどがあるな……」



そう、全身に鉱石を埋め込んだ〝岩竜〟が目の前に姿を現したのだ。



「でも、やるしかない……」



「だよな……やるかっ!」



『グォォォォォオオオア!!!』



まるで開戦の狼煙の如く、目の前の岩竜はクロビ達を睨み付け、凄まじい咆哮が神霊山に響き渡った――



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