久々の再会
≪エマーラル大陸・イーリス国≫
クルッシュでミリアレアへ服のオーダーをした一行はそのまま魔動機で飛び立ち、ロアの居る魔道具の工房を訪れた。
「ロア! 久しぶり!」
「わっ、クロさん!? 久しぶりです! どうしたんですか?」
「いや、実はロアに仕事の依頼をしたくてね」
久しぶりに会ったロアはそこまで日が経っている訳でもなかったのだが、それでも以前と比べて職人の顔付きになっていた。
「依頼ですか? えっと、でしたら明日でもいいですか?
今、城からの依頼を熟してまして、父の手伝いではありますが、今日中には終わりますので!」
「ああ、急に来たからな! 大丈夫だ。
良いだろ、二人とも?」
クロビは後ろに控えるリースとリッシュに確認をする。
「おう、俺は構わないぜ!」
「……」
「リース?」
すると、リースが突然ロアに近づき、くんくんと匂いを嗅ぐ。
「えっ!? なっ何を!?」
急に銀色の髪を靡かせ、近づいて来る美女にロアは顔を真っ赤にしてあわあわし始めた。
だが、リースの行動は更にエスカレートし、ロアに抱きついた。
「なっ――!?」
「優しい匂い……クロとは違うけど……好きな匂い」
どうやらリースはロアの匂いに惹かれたようだ。
だが、当人はリースの豊かな胸に顔を挟まれ、恥ずかしさと息苦しさで意識を手放しそうな状態だった。
「リース、ロアが死にそうだぞ?」
クロビはすぐにロアの様子に気付き、助け舟を出す。
「あっ、ごめんなさい……」
「ぷはっ」っとまるで水面に顔を出したように大きく息を吸い込み、呼吸を整えるロア。
だが、その顔は真っ赤で、やはり今にも倒れそうな勢いだ。
「おいおいクロ殿、ロアは女に免疫がないんだ。 そのまま倒れられたら明日に持ち越しちまうからその辺にしてくれよ?」
奥からロアの父、トロンが作業をしながら声を掛ける。
「ああ、すいません! じゃあまた明日来ますので!」
「おう!」
「ロアも、明日よろしく!」
「わ、分かりました~」
ロアはフラフラしながら工房へと戻っていった。
「じゃあ俺等は宿でも取ってゆっくりしよう。 ここまで基本飛び続けてたし、意外とのんびり出来なかったしな」
そうして三人は宿を取り、今後の方針などを話しつつ就寝した。
翌日、またもベッドに潜り込んでいたリースを起こさないよう、クロビは宿を出てイーリス城へと訪れていた。
「よっ!」
「わっ、クロ!? って今着替え中っ!!!」
「クロ様、久しぶりなのは嬉しいですが、覗きは許せませんよ?」
どうやら第一王女メイリーンが着替えをしていたタイミングで窓から来てしまったようだ。
メイリーンは服を前に持って来て身体を隠し、ぷくーっと頬を膨らませながらクロビを睨み付ける。
「すまん、屋根で待ってるよ」
そして数分後――
「もうっ! 別に窓から来なくても大丈夫なのよ?」
既にイーリス国の王フラーネスなどにはクロビの存在が知られている。
だからこそ、わざわざ窓から来なくても問題はないのだ。
「いや、癖でな」
「相変わらず変わらないですね。 紅茶を入れましたのでどうぞ」
「ありがとう、ミラさん」
すると、メイリーンの部屋の入口がコンコンとノックされる。どうやら訪問客が来たようだ。
その後、ミラとやり取りをするとドアから見た事のある爽やかなイケメンと後ろにニコニコした執事が入ってきた。
「ク、クロ!? 何をしてるんだ!?」
「よっ、ちょっとこっちに用があったから挨拶しにな。 ゼオもレバンさんも久しぶり!」
部屋に入って来たのはグラーゼンの王子ゼオールと、その執事レバン。
そのままミラは紅茶の準備を、レバンはそれを手伝い、三人が机を囲む。
「しかし、クロ。 なかなか派手に暴れているようだね?
仮面を被ってもバレバレだよ」
いくら仮面をつけていても、その前に紅眼の動きが世に知らされた時点でどちらもドーバルを襲っていて、その正体は安易に想像出来てしまう。
「まあ……そうだよな? その辺はおいおい考えるとするよ」
「でも、さすがと言うべきか……ここを出てからはどんな旅だったんだい?」
「あっ、それ私も気になる! 聞きたい!」
ゼオールもメイリーンもクロビの旅話に興味津々の様子だ。
クロビはミラが煎れてくれた紅茶を口に含むと、前回エマーラルを出てからのゴルゼオ、ウルハ・オウバとの戦いや、ゴルデニアのベルベラ国の出来事、そしてルッセルでの銀狼兄妹との出会いやドーバルとの戦いを語っていった。
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「すごいな、やっぱりクロの旅話は興味深いよ」
「うん! いいなぁ~、私も久々に旅したいよ~」
二人は楽し気な表情でクロビの話しを聞き、紅茶を口にしていく。
「そういえば二人、婚約したんだろ? おめでとう!」
「「あ、ありがとう」」
婚約の話しをした途端、急に二人はモジモジし始める。
「いや、そこは恥ずかしがるとこか? めでたいじゃん」
「だ、だってぇ~、何か恥ずかしいんだもん」
メイリーンは顔を赤くして両手でそれを覆い隠す。
その仕草も久しぶりで懐かしさを感じるクロビだった。
「で、式は?」
「式はもう少し先かな? 勿論、クロには来てもらうからちゃんとギルドで伝言を受け取って欲しい」
「ああ! A級になったってのもクルッシュで聞いたし、大丈夫だろ。
そっちもおめでとう!」
「ありがとう、だが……S級への道は遠いな。 ウルハ・オウバか。
クロと互角って凄いな」
「俺も驚いたよ。 イーリスのS級と全然違ったし」
「レオン・ハートウィルか。 あれなら今の私と同じくらいだろう」
「かもな」
そんな話をしていると、メイリーンが「クロ!」っと声を上げた。
「私、銀狼に会ってみたい! ダメかな?」
「多分、大丈夫じゃないか? 同じ色眼持ちだしな。
これからロアのとこ行くから、予定内なら一緒に行くか?」
「うん!」
その後、久しぶりの会話を楽しんだ三人はミラとレバンを連れ、ロアの工房へと向かった。
クロビは途中、宿に戻ってリースとリッシュを叩き起こし、工房へと連れていく。
「ク、クロさん!? 何ですかこの豪華な面々は!?」
ロアの目の前にはクロビ、ゼオール、メイリーン、リース、リッシュが並び、後ろにミラとレバンが控える。
「わぁ~綺麗な人! それに、モフモフっ! きゃー!!」
メイリーンはリースを目にすると、透かさず抱きついてキャッキャし始める。
「朱色の眼、綺麗ね」
「銀色の眼も綺麗よ? あっ、私はここ、イーリス国の第一王女でメイリーン・ロウ・イーリスです」
「メイリーン……メイ?」
「うん!」
「私はリース。 リース・フェルト・ルーナリア。
でも、ルーアリア国はもうないからリース」
メイリーンは、一瞬悲し気な表情を浮かべたが、すぐに戻ってリースを抱きしめた。
その側では、リッシュもゼオールに自己紹介をする。
「俺はリッシュ。 リッシュ・フェルト・ルーナリアだが、今はただのリッシュだな。 リースの兄だ」
「私はイーリスの南にあるグラーゼン国の第一王子、ゼオール・デル・グラーゼン。 メイリーンは私の婚約者だ。
そして、二人ともクロの友人だ」
お互いがしっかりと自己紹介を交わすと、ロアとトロンも自己紹介をしてワイワイと話し始める。
「それでクロさん、今回は何を造るんですか?」
ロアがそう尋ねると、クロビではなくリッシュが勢いよく立ち上がる。
「魔動機作ってくれ!」
「後、武器もお願いしたい……」
続けてリースもロアに要望を伝えていく。
「武器と魔動機……となると素材が必要ですね……」
そう告げると、リースとリッシュがその場を離れ、数分後にルッセル支部から奪って来た魔動機を持って来た。
「これを改造して欲しい!」
リッシュがそう告げると、その横でリースが異能を使い、ミスリルやオリハルコンを形成していく。
「これで素材は足りる?」
「「えっ――!?」」
「ななななっ何をしたんですか!?」
リースの異能を目の当たりにしたロアとトロンが驚きの表情でリースに尋ねた。
「私の異能。 触れれば作れる。 素材、足りる?」
「は、はい! これならすぐに取り掛かれます!」
「うん、それと武器……」
「あっ武器ですね。 要望はあります?」
するとリッシュもその話に参加して自分の銃を取り出し、伝えていった。
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「では、三日ほど下さい。 それまでに完成させますので!
クロさんの魔動機も調整しておきますね!」
「俺も手伝うぜ! 王からの依頼は終わったからな。
こんだけ仕事が豊富なら、魔道具師冥利に尽きるってもんだぜ!」
ロアもトロンも何やら嬉しそうに、自信たっぷりに三人へ告げると、またもフワっとロアの鼻を甘い香りが擽る。
「リリリリ、リースさん!?」
「ロア、優しい匂い、好き」
「すすすす……」
プシューっと湯気を出しながらロアが崩れていく。
「はは、まるでメイみたいだな?」
「ちょっとクロ!? 何でそこで私が出てくるの!?」
メイリーンはポカポカとクロビを叩き、猛抗議して行く。
「よし、じゃあこのままエリーのとこに行くか」
「でも魔動機置いてくんだろ?」
リッシュとリースの魔動機はこのままロアに預ける。
だからこそ、どうやって行くのか疑問に思い、クロビに尋ねる。
「大丈夫! 走って行けば数時間で着くぞ」
「なら良いか! じゃあロア、頼むぜ俺の魔動機!!」
「はいっ!」
「メイ、バイバイ」
「うん、また遊ぼうね!!」
三人は颯爽と工房から飛び出し、ローズベルドへと向かって行った。
≪エマーラル大陸・ローズベルド国≫
数時間後――
ローズベルドの城門前に一行は到着した。
すると、以前イーリス軍から助けた部隊長、マーベラルが立っていた。
「あっ、マーベラルさん、どうも!」
「ん? おっクロじゃないか! 久しぶりだな。 エリネール様に用か?」
「そうです! まあ試練の間は面倒だったので直接ここに来ましたけど」
「お前なぁ……エリネール様も忙しいんだぞ?」
実際に王女だからこそ、公務などはしっかりと行なっている。
また、本来は試練の間を抜けた者しか謁見出来ないというこの国のルールがあるのだが、クロビは何度もそれを無視していた。
「まあ、大丈夫ですよ――「何が大丈夫なのじゃ?」――」
すると上から聞き覚えのある透き通った声が響いた。
「エリー! 来たぞ!」
「お、おい! エリネール様に不敬だぞ!?」
普段からクロビはエリネールに対しては崩れた口調なのだが、マーベラルはそれを知らない。
だからこそ、注意をするのだが……
「よい、こやつはいつもの事じゃ。 さっさと上がって来い。
妾は忙しいのじゃ! 全く突拍子もなく来おって」
そのまま三人はマーベラルに案内されて客間へ移動する。
扉を開けると、アランが既に紅茶を用意して待っていた。
「紫の眼……魔女……敵?」
「ほお、お主達が噂の銀眼か。 それにその姿は……なるほどのう」
「クロは渡さない……」
「狼娘はクロに惚れておるのか? まあそこは関係ないがの」
「……」
突然、部屋に入った瞬間、二人の間でバチバチと火花が散り始める。
「どうした?」
クロビが二人の一触即発の雰囲気に割って入る。
「クロよ、女の戦いに首を突っ込むと痛い目に会うぞ?」
エリネールはまるでその場を楽しんでいるかのように不敵な笑みを浮かべて警告を促す。
「あれが魔女か……色々とすげぇな」
リッシュは雰囲気とか関係なしにエリネールの姿に驚いていた。
「さて、お主等はそっちに座るといい。
紅茶が冷めてしまう」
そして三人は用意された紅茶を飲みつつ、エリネールに向き合うような形で腰を下ろした。
「お主等はルーナリア、フェイリンの子達じゃろう?」
「「っ――!?」」
「何でママを知ってるの!?」
エリネールの言葉に二人は少々警戒を強めた。
「警戒しなくともよい、フェイリンとは友人じゃった。
故に残念でならんの。
こうも長く生きとると様々な出来事が起こり、そして繋がりも断たれていく。
親しい友人も、共に戦った仲間も、気付けば命を落としておるからの」
エリネールは少し悲し気な表情を浮かべて窓の外に視線を送る。
「ちなみにじゃが、お主等がまだ幼い頃に妾が抱いた事もあるのじゃぞ?
まあ、覚えておらんじゃろうが」
「えっ!?」
「よくもここまで立派に育ったものじゃな。 会えて嬉しいぞ」
すると、先程まで敵対心をたっぷりと抱いていたリースが涙を流しながらエリネールに抱きついた。
「全く、さっきの威勢はどこにいったのやら」
エリネールは優しく頭を撫でながらリースを宥めていく。
「ってエリネール、あんた幾つ――「―氷の槌―!」――ぐわっ!?」
リッシュが口を開き、何やら失礼な事を告げる前にエリネールは魔術でそれを阻止した。
「女性に年齢を聞くものではないわっ!」
「うぐぐ……すまん……」
「して、今回は何ようじゃ? 景気よく暴れてるみたいじゃがの?
紅眼と銀眼の三人組よ」
「まあ、バレてるよな。 いや、実はさ……」
クロビはドーバルとの戦い、そして本題であった色眼の覚醒をエリネールに話していった。
「なるほどの……色眼の覚醒、実際にそれは珍しい事ではなかった。
茶色眼が青眼へ覚醒する事は多々あるじゃろ?
故に色眼だけが覚醒しないというのはおかしい事なのじゃ。
とは言え、実際にそれが頻繁だったのは500年程前と聞いておるし、書物にも書かれておる。
また、妾も一度だけ経験があっての」
「っ!? エリーもあったのか!?」
どうやらエリネールも過去に発色からの覚醒をした事があるらしい。
その時は大切な友人を目の前で殺され、その時の怒りの感情が爆発して紫の眼に桃色の瞳へ変化したようだ。
「まあ、それ以降覚醒する事はなかったが、恐らくは〝怒り〟が起爆剤になっておるのじゃろう。
実際に人の感情で一番のエネルギーを持つのが怒りじゃからな」
「確かに、あの時は怒りもあったな。 なるほど、やっぱエリーに聞いて正解だった。 さすが魔女だ」
「クロの言った通りになったな。 まさかここまでの知識を持ってるとは……俺も驚きだぜ」
「ふん、舐めるでないわ。 で、お主達はこれからどうするのじゃ?」
「私、ママに会いたいの。 だから神霊山に登る」
「なるほどの、なら明日にするといい。 今日はもう遅いから泊まっていけ」
こうして三人はローズベルド城に厄介になる。
リースはエリネールの部屋に、クロビとリッシュは客室へと案内された。
「しかし驚いたな……まさか母さんと魔女が友人だったとは」
「ほんと、エリーの交友関係が気になって来るな」
「にしても、色眼の覚醒ねぇ……俺もなれんのか?」
「そればっかりは何とも。 でも可能性は十分にあるだろうな?」
「もっと強くならねぇとな。 もっともっと……」
「ああ」
クロビとリッシュが語っていると、コンコンとノックされ、アランが入って来る。
「お二方、食事の用意が出来ました。
エリネール様とリース様は既に向かわれてますので、ダイニングへどうぞ」
「「分かりました」」
アランに連れられ、ダイニングへ向かうと二人が待っていた。
「せっかくじゃし、皆で食事でもと思うての。 酒もあるから楽しく過ごそう」
「ありがとう! じゃあ頂くか!」
「だな! ってリースは既に食ってるけど」
リッシュがリースを見ると、骨付き肉を美味しそうに頬張っていた。
久しぶりの豪華な食事に心を躍らせ、それぞれが食事を楽しんでいく。更に、酒を飲みながらこれまでの出来事などを語っていると徐々に様子がおかしくなっている二人が目に入った。
「クロ、熱い……冷まして」
「いや、熱いのになぜくっついて来る?」
リースは顔を赤らめながらクロビの膝の上に座る。
リッシュを見れば「うぉぉぉおお! 強くなりてぇ!!」と何故か涙を流しながら叫んでいた。
「エリー、何か仕込んだか?」
「バカ言うでないわ。 まあ人族の酒に慣れておらんのじゃろう」
「ん? 亜人種って飲む酒が違うのか?」
人族は基本的にエールやワイン、シャンパンなどを好んで飲む。
だが、亜人種の酒は魔物を浸したもので、人族の飲む酒よりもアルコールが強めだ。
とは言え、得意・苦手などもあるようで、特にサンジェラル大陸から他の大陸へ出た事がほとんど無かった二人は、ワインでベロベロになってしまったのだ。
「そうなのか……」
「まあ、逆にお主が亜人種の好む魔物酒を飲んだらこうなるかもの?」
「ちょっと興味あるな! まあ機会があれば」
「では、戻るとしよう。 このままじゃと二人が暴れ……ってリッシュがおらん」
「え? あっ、居ない……扉空いてるし……まあその内戻って来るだろ。
で、リースは寝てるし……」
「仕方ない、そのままお主の部屋へ運べ」
クロビは仕方なくリースを抱きながら部屋へと戻っていった。
そして、ベッドに寝かせると急に後ろへ引っ張られた。
「どわっ! 何だリース、起きてたのかよ」
「これぞ、トラップ!」
自慢気にリースがクロビを押し倒すと、その勢いで服を脱いでいく。
「寂しさ、埋めて……」
「はぁ~、まあずっと外だったからな……」
もはや有無を言わさずリースがクロビの唇を塞いで来る。
「ん……んふ……」
お酒の匂いもあってか、徐々に体が熱くなり、激しさを増していく。
そして二人の時間を楽しみ、そのまま眠りについた――
・
・
・
一方迷子になっていたリッシュは城の中を彷徨っていた。
少し酔いも冷め、冷静に考えていくのだが、幾分初めての場所の為、どうしていいか分からない。
「あ~匂いもしねぇ……ってか向こうから花の匂いがするな……」
リッシュが花の匂いを辿って行くと、そこは浴場だった。
「まあ、酔い醒ましにちょうどいいか……」
服を乱暴に脱ぎ捨て、入っていくとそこは様々な花が飾られた女性らしい浴場。
すると――
「ぬわっ!?」と水場で足を滑らせ、そのまま転がり、ドカンっとどこかにぶつかってしまった。
「いってぇ……なんだ?」
湯気で視界が悪く、どこに転がったかも分からずのリッシュだったのだが……
ムニュン
ムニュン
「ん~? 柔らけぇな……」
そのままムニュムニュしていると声が響く。
「リッシュ、お主何を人の胸を揉みしだいておるのじゃ?」
「なっ!? エリネール!?」
よく見ればリッシュはエリネールに覆いかぶさるように倒れていたようで、起き上がる際にエリネールの実った大果実を揉みしだいていたようだ。
「わ、わりぃ!」
「急に入って来て突撃されたと思えば胸を……お主も色眼持ちと言う事か。
とりあえずどいてくれるかの? これでは動けぬ」
「すまん! じゃあ出る!」
リッシュは慌ててその場を立ち去ろうとしたのだが、エリネールがそれを止めた。
「よいよい、せっかく来たんじゃし、浸かっていけ。
じゃが、長湯は控えるのじゃぞ? 酔ってるなら更に回るからの」
「おお、じゃあ……」
二人は湯船に浸かり、疲れを取っていく。
「にしてもクロと一緒に行動するとは、不思議な縁じゃの?」
「ああ、敵が同じだったしちょうどよかったんだ。
あいつ強いし、力になってくれると思ってな」
「確かに強いの。 じゃが基本的には何も考えておらんから後々面倒が起こったりもするが」
「それは言えてるかもな。 まあ目標をドーバルに変えて組織を作る方向で話を進めてる。 今は三人しかいねぇが、意外と楽しいぜ」
「ならよい。 明日、妾も同行する。 せっかくじゃからの」
「そう、か……」
「ん? どうしたのじゃ?」
「ちょっと、クラクラする……」
リッシュは身体を持ち上げ、浴槽の淵に腰を掛けた。
「酔いが回ったかの? 出るか?」
「……」
「全く面倒なヤツじゃ。 ほれ、立てるか?」
エリネールは立ち上がり、リッシュの近くまで行くとその腕を掴む。
そしてリッシュは腕を掴まれた拍子にすっとエリネールを見ると……
リッシュ自身、これまでにモテない事は無かったし、女にも困らなかった。
だが、よくよく見れば目の前には紫の艶のある髪に張りのある真っ白な肌。
何より、女性であれば誰もが憧れる抜群のスタイルの女性。
更に、以前クロビが言っていた言葉を思い出した。
『マジでエロい』
『すんごいんだよ。 男なら本能的に求めるだろ? そういうの。
それ全部擽って来るんだよな』
「おい、お主……立てるかと聞いたのじゃが……?
反応するところが違うじゃろ」
「……」
するとリッシュはエリネールの腕を掴み、そのまま自分へと引き寄せ唇を奪った。
「んっ――!? むはっ、ちょっと待て! 今のは冗談じゃ! じょ……ん~、んふ」
リッシュがエリネールの口を塞ぎ、侵攻を開始した。
「んっ……ちょっ……あ……まさか、本気か!?」
リッシュは何も発せず、黙々と蹂躙していく。
「むぅ……生意気な狼じゃ! そっちがその気なら!」
そしてお互いに風呂場で戦を始め、やがて力尽きていった。
「はぁ……はぁ……こ、ここまで激しいとは……」
「わりぃ、はぁ~」
「よい、そういう時もある。
じゃが身体が動かぬ。
すまんが、ベッドまで運んでくれ。
お主の部屋は恐らくリースがクロビを襲ってるはずじゃからな」
「ああ」
こうしてリッシュはエリネールをお姫様抱っこして寝室へと運び、眠りについたのだった――
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