決意と安らぎの一時
※エロ少々※
ドーバル軍の進軍を阻止し、中将ドレイクを討ち、大将アンネットをその場から消し去った一行はグルーデンの屋敷で治療を受けている。
守りに徹し、クロビ・リース・リッシュの三人が奮闘した事で小さな被害で収まったのだが、それでも門番の二人が殺され、住民達も戦争へ参加した者は数十名がその命を絶たれる結果となった。
クロビ自身はそこまで深手を負っていなかった事もあり、一日で完全ではないが回復した。
また、リッシュも回復魔術である程度の傷が治ると動ける状態までに至った。
だが、リースは思ったよりも傷が深く、未だベッドで安静にしている。
そして、ニナもまた、身体強化などされていない普通の身体だからこそ、リースの魔術によって一命を取り留めたが、未だ意識は戻っていない。
クロビとリッシュは街の様子を見つつ、ロスタールの北側にある小高い丘へと来ていた。
「とりあえず被害が少なくて良かったな」
「ああ、まあ正直キツかったけどな……ってかお前ドーバル軍事要塞の時、よく一人で戦えたな?」
「いや、その時はあの白黒蛇女みたいな強い奴はいなかったからな」
「そうか……で、あれは何だったんだ?」
リッシュはクロビの異変、言わば白眼状態が気になって仕方無かった。
「ん~、何って聞かれてもな~? 俺も初めてだったし。
ただ、最初に発色した時の感覚に似てたな。
まあ多分だが、色眼の覚醒みたいなもんだろ。
茶色から青になるみたいなさ」
「俺も色眼持ちの色が変わるとか聞いた事ねぇしな……誰か知ってるやついんのか?」
「なら……西の魔女エリネールに聞いてみるか? 俺知り合いだし」
エリネールは魔女と呼ばれるだけあって博識だ。実際に色眼についても、魔術や魔法に関しても知識はかなり豊富だった。
「魔女か、あれも色眼持ちだったよな? 紫の」
「ああ、それと……マジでエロい」
「は?」
クロビは突然、真顔で全く無関係な事を言い放った。
「いや、すんごいんだよ。 男なら本能的に求めるだろ? そういうの。
それ全部擽って来るんだよな」
「てめぇ、それリースの前で言ったら殺すからな」
「はいはい。 だが、情報が欲しいならエマーラル行くか?
そうすれば飛空魔動機も手に入るかもしれないし」
「あの黒い鳥か! いいじゃねぇか!
って何か自然と一緒に行く感じになってるのな? 俺等」
「確かに……まあ目的が一緒なら良いんじゃないか?
もしかしたらあの白黒蛇女生きてるかもしれないし。
バジリスクの血が混ざってるって言ってたからな……」
「あれで生きてたらマジで不死身だぜ……でも可能性はゼロじゃねぇよな」
「実際、ゴルバフがそれで生きてた。 だからこそ警戒は必要だし、昨日のあれで分かった。
ゴルバフが復讐の対象ではあるが、それも全部ひっくるめて俺は〝ドーバル〟を潰す」
「いいねぇ! その話乗ったぜ。 俺も、母や国の皆が殺された。
その悲しみは誰も背負わせたくねぇし。
それにあの女が生きてたとしたらもう一回、次は俺の手で殺す!」
二人は復興作業をする街の人々を見ながら、それぞれが熱い思いと誓いを心に立てた。
そして――
「何なら組織でも作るか! ドーバル軍に仇名す反乱軍的な?」
「組織か……確かに1000対3じゃ流石にキツいよな~。
別のとこでそれ以上の軍だと多分死ぬ。
組織なら人を増やせるし、俺らみたいに戦える奴が多く加わってくれりゃあ施設の一つくらいはちゃんと潰せるだろう」
リッシュは少し考えを巡らせ、「やるかっ!」と答えを出すと、そのままクロビと拳をぶつけ合った。
「よし、ならどちらにしてもエマーラルには行かないとな。
組織って言っても何するか分からんが、旅をしながら人員探してドーバルの施設潰して、って感じか」
「だな! いいねぇ~燃えて来たぜ!」
「じゃあ詳しい話はリースが起きてからだ。
とりあえず戻るか」
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その日、各国ではまたもドーバル軍事施設が壊滅させられた事実が広まった。
いつ、どこで、どのように情報を得ているのかは分からない。また、その者達の存在自体も誰も知らされていないもはや謎の組織。
それらは各国に広がり、その都度様々な出来事や情報を集めている。
どこぞの国の戦争から不倫、王侯貴族の恋愛話まで。
そして、当然忘却の大陸と言われるルッセルの出来事も世界に広まっていたのだ。
〝紅眼の死神、再びドーバル軍事施設を襲う〟
更に
〝紅眼と銀眼兄妹の共闘か!?〟
とまで書かれていた。
「うわぁ~情報早いなぁ……と言うかドーバルの施設を襲った覚えはないんだか?」
「銀眼兄妹って俺達の事だよな……どっからその情報を得たんだ……」
「分からん。 まあ良いけど、これで居場所がバレたから早めに動かないとな」
グルーデルの屋敷ではサロンでクロビとリッシュが頭を抱えていた。
「おやおや、知らなかったのか? 恐らくだが君があの大将を討った時に黒くて大きな光を放っただろ?
あれが実は西側にある基地ごと撃ち抜いたんだよ。
だから私は清々しているんだ」
ロスタールの領主、ダナンが何故か嬉しそうに新聞を見ていた。
「そうだったのか!? まあ、なら良いか!
いや、でもダナンさんはこうして俺等を匿ってる形だから危ないですよ?」
「そしたら戦うさ。 街の連中も君達を恩人だと言っている。
もうロスタールが味方なんだよ」
「マジか……ありがとうございます」
珍しくリッシュが頭を下げて礼を述べた。
「そういえばその魔導通信機を渡したドンズが君達を探してたぞ。
街の東に工場があるから寄ってみるといい」
どうやら通信魔道具をくれた朱色の髪の男はドンズと言うらしい。
「分かりました。 じゃあ行ってみるか?」
「そうだな」
しばらくはクロビとリッシュの二人で行動する形になるようだ。
未だリースもニナも目を覚ましていない。
だからとりあえずはのんびりしつつ、出発までの準備を整えようと考えた。
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ダナンに聞いてロスタールの東側、ドンズの工場へとリッシュを連れて訪れる。
「どーも、ダナンさんから聞きました」
「おお、二人ともよく来たね。
先ずは、この街を救ってくれてありがとう」
「いえいえ」
「ドーバルは俺らの敵だからな」
「君達を呼んだのはね、恩人達にこれを渡したくて」
するとドンズは通信の魔道具を五つ、その他にも生活面で役立つ魔道具が一式入った箱を渡した。
「良いんですか? 街もこれから復興で大変だと思うんですけど」
街は昨日の戦争の爪痕が未だ色濃く残ってた。
だからこそ、必要なら街の復興に活かして欲しいと言うのがクロビ達の本音だった。
「そこは心配しなくてもいい。 これは寧ろ余りなんだ。
って、余りを渡すのも申し訳ないが、きっと役に立つと思ってな」
「クロ、貰っておこうぜ。 これから必要になるだろ?」
「そうだな。 じゃあ遠慮なく。 ありがとうございます」
「ドンズのおっさん、もし力仕事とか必要なら声かけてくれ。 俺達はまだいるからよ」
リッシュは口こそ悪いが、元々王族という事もあり、民を一番に考えているのだろう。
良い青年だ。
「何かあればグラーデン領に行くとするよ」
「分かりました」
こうして魔道具一式を受け取ると、二人はグルーデンの屋敷へ戻っていく。
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屋敷へ戻ると、メイドや執事達が何やら慌ただしくしていた。
「戻りました! どうしたんですか?」
「あっ、クロ様! ニナお嬢様が目を覚まされました。
また、リース様は少し前に目を覚まし、今はサロンにいらっしゃいます」
「ありがとうございます」
「クロ、先ずはサロンに行くぞ! ニナもいきなりはあれだろ?」
「そうだな」
そして二人はサロンへ向かうと、そこにはリースが座っていた。
「リース、起きたか」
「リース!! 大丈夫か!?」
「リッシュ、クロ……大丈夫」
「そうか……良かった」
リッシュは少し涙目になりながらリースの頭を撫でる。
「起きてて平気なのか? 言ってもまだ怪我は癒えてないだろ?」
クロビが少し心配そうに言葉を投げ掛ける。
「大丈夫……それに、ニナが起きたって」
「ああ、そうだな。 もう少ししたら行ってみよう」
そしてダナンがニナの部屋から降りて来ると、そのまま案内をしてくれた。
部屋に入ると、そこにはメイドや執事が手当てや髪を梳いたりしていた。
「ニナ!」
「リース!」
二人はそっと抱き合い、お互いの無事を確認すると涙を流しながら喜んでいた。
「良かったよ、本当に」
クロビもその姿にほっと一安心する。
「そういえばクロの家族なんだよな? 一応」
「まあ、正式に結婚は出来なかったけど、そうだな」
「なのに魔女がエロいとか言ってて良いのか?」
「おいリッシュ、痛いとこを突くなよ? まあ大丈夫だ。 ちゃんと神霊山で許可貰ったし」
確かにユナと会った際、お許しは貰った。
だからこそ、ちょっと吹っ切れているクロビでもあった。
「まあ、そういうもんか。 別にお前が良いならそれでいいんじゃねぇか?」
「なんだそれ」
クロビはリッシュの意味の分からない発言に笑った。
「リッシュ……いつの間にクロと仲良く?」
その姿を見たリースが少し不思議そうに見ていた。
「まあ、詳しくは後で話すよ。 ニナ、身体は平気か?」
「お義兄様、ご心配をお掛けしました」
「本当に、また失うかと思ったよ……」
クロビは少し悲し気な表情を浮かべ、ニナの頭を優しく撫でる。
「すみません。 でも、ちゃんと生きてますからね?」
「おう」
「リッシュさんも、改めてこの街を守って下さってありがとうございました」
「気にするな。 って言うか自分の身体を先ずは心配しろよな」
「ふふ、皆さん過保護ですね」
「「「お前が言うな!」」」
怪我して倒れていた張本人がそんな事を言うもんだから三人が一斉にツッコミを入れた。
「ふふふっ、ごめんなさい」
「とりあえず休め。 まだ本調子じゃないだろ? 俺らもまだここにいるから安心しろ」
「はい」
そして三人はサロンへと場所を移し、今後の事について話を始める。
先ず、クロビとリッシュはまだリースを含めて三人なのだが、組織を作って標的をドーバル軍そのものに切り替えた事。
ドンズから魔道具を一式貰った事。
身体が本調子になったらエマーラルへ向かってクロビの白眼の覚醒について、二人の飛空魔動機などを手に入れる方針を伝えていった。
「分かった。 一緒に行く。 クロのあれは私も気になる」
「よし、じゃあ方針は一応決まりだな。
ただ、どうやって行くかだよな」
「あの黒い鳥で行けばいいんじゃないのか?」
「いや、さすがに三人は無理だ……。 だとすると船でゴルデニアに行って、そこからまた船でエマーラルか……二週間位掛かりそうだ」
そんな事を考えていると、ダナンが耳よりの情報をくれた。
「確かドーバルの基地には偵察用の飛空魔動機があったはずだ。
今はクロさんの爪痕で混乱してるし、奪えるかもな! ハッハッハ!」
おいおい、このおっさん何で嬉しそうに危ない事言うんだ。
だが、リッシュはかなり乗り気だった。
「いいなそれ! どーせ組織組むんだし、なんなら今の内に潰しとくか?」
「はは、まあ潰せんならそれが一番だな。 でもロスタールに影響が出ない形でやるか、迷惑を掛けられない程に完膚なきまでやるか」
「叩き……潰す……」
おっと、リースさんまでかなりやる気が出てるようだ。
「ドーバルは我がロスタールの敵だ! だが、私達では手が出せん。
なら、君達に託すしかないだろう?」
「じゃあ潰しにいくかな。 とりあえず三日後くらいか? それまでに体調を整えようか」
既に攻撃を受けて戦力が削ぎ落されているドーバル軍事施設だが、それでも研究所などもあり、今の状態で挑んでも無傷では難しいだろう。
だからこそ、療養は必要だった。
そしてその夜――
クロビは部屋で色々な事を考えていた。
白への発色もそうだが、ドーバルには強い兵もいるという事実。
それは寧ろ当たり前で、実際にS級ハンターのウルハはクロビと同等の力を持っていた。
故にクロビと同等、もしくはそれ以上の存在が居てもおかしくはないという事を改めて感じさせられた。
「鍛錬で伸ばせるか……ってエマーラル行くなら神霊山で修業するか。
それが一番良いよな……」
そんな事を考えていると、ノックもなしにキィーっとドアが開いた。
部屋は既に灯りを消していて真っ暗だ。
しかし、夜目になっているクロビはその姿をしっかりと確認出来ていた。
そう、〝リース〟だ。
「クロの匂い……クロの匂い……」
おいおい、何か危ない奴が来たな……
もぞもぞっとそのままリースはクロの布団内へ侵入していく。
そして、頭を出すと――
ぽすっ!とクロビが手刀を放つ。
「いたっ……クロ、起きてた?」
「起きてた?じゃない。 どうして入って来るんだ?」
「クロの匂い、落ち着くの」
「まあ落ち着くのはいいが、忍び込むのは問題だぞ?」
「へへ……」
これまでずっと表情は変わらないリースだったが、クロビと出会ってから少しずつ、表情を見せる様になって来た。
「クロ、襲ってもいい?」
「バカたれ。 目覚めたばっかだろ」
「亜人種は身体を交えると愛の力で回復するの……」
「はい?」
リースから聞いた事のない持論が語られ、リースはそのまま服を脱ぎ捨てると、クロビの服まで剥ぎ取った。
「おいおい、本気か?」
「本気じゃなかったらこんな事しない」
「いや、そういう問題では……」
「クロ……いや?」
あっ、これずるい奴だ。女はこうやって男に否定させない術を持っている。
まして、美女にそんな事言われたら断る方法なんて一つも浮かばない。
「はぁ~」
クロビは溜息を吐くと、そのままリースの唇に自分の唇を重ねる。
そして、次第に激しく舌を絡めていくと、リースの息が荒くなっていく。
・
・
・
「クロ……幸せの匂い」
「そうか? まあ確かに満たされる感覚はあるけどな。 リースのお陰だ。
と言うか俺が回復してどうするんだ?」
「ふふふっ、私も満たされた。 強い男を求めるのは銀狼族の女の本能」
「まあ、満足出来たなら良かったよ」
「うん……でも、もう一回」
「マジか……?」
「マジ……」
そう告げるとリースが主導権を握って再び夜の戦が開戦となった――
そんな夜を迎えてから三日が経過した。
リースは毎晩のように求めて来る訳で、しかし毎晩相手をする訳にもいかずに時には断る事もした。
また、結果的にそうした出来事がリッシュに見付かってしまい、リースと一緒に怒られた。
どうやら匂いで分かるらしい。
「リース、身体は完璧か?」
「うん」
リースの生命力は思いの外強く、既に身体の傷は塞がり、いつもの調子を戻した。
「お義兄様、お出かけですか?」
サロンにはニナの姿もある。
まだ傷などは完全ではないが、それでも歩けるくらいまでは快復したのだ。
「ちょっと野暮用だな。 今後の事もあって色々準備しなきゃならないから」
「そうですか。 気を付けて下さいね?」
「おう、じゃあ行くか!」
その日――
ドーバル軍事施設兼魔導研究所は未だ復興作業を行っていた。
謎の攻撃の爪痕は深く、動力源こそ地下に設置されているのだが、その他の魔導機器の修復にはかなりの時間が掛かる。
「リッシュ、どうだ?」
リッシュは異能を使い、基地内の状況を把握していく。
「警戒はしてるっぽいが、それでも復興をメインにしてるから意外と見張りとかは手薄だな。
ちょうど三人組が見えるが、服奪って侵入するか?
それとも正面突破か」
「正面から行くか? 組織としての初仕事だし」
「派手にってか! いいねぇ!」
「じゃあ二人、 これ被って」
リースから渡されたのは後々にドンズに頼んで作って貰った魔道具の仮面だ。
世間的に紅眼、銀眼の存在がバレてるにしても、その素顔までバレては情報を得にくくなると同時に、このままの姿での旅が難しくなる。
だからこそ、襲う時は変装をしようと考えたのだ。
クロビが付けるのは二つ名通りの骸骨の仮面。
リッシュとリースは骸骨だが、どこか獣っぽい仮面だった。
どれも目の部分だけは開いていて、視界はしっかりと確保出来る。
また、仮面自体に通信の魔道具が組み込まれている優れものなのだ。
「じゃあ初仕事、行きますか!!」
三人は準備を整えると一気に基地内へ侵入し、向かって来る兵達を叩き伏せていった。
施設内に入ると頑丈な扉が沢山あるのだが、ニナが刺された時に力を増したリースの異能によって難なく突破出来た。
途中、三人はそれぞれに分かれて各自が各場所を破壊していく。
研究所のメイン動力となる魔道具、格納されている飛空艇、常備されている魔導機銃などの武器類。
それらは全てが三人の手によって鉄屑と化していったのだ。
「侵入者を殺せ!! 仮面を付けた三人組だ! このままだと基地が潰れるぞ!」
「「「はっ」」」
やがて兵達も各自迎撃態勢に入るのだが、時は既に遅かった。
基地内の主力となる箇所は全て鎮圧されており、ドン、ズガンっと様々な場所で爆発が起こっている。
また、兵達は兵達でどこから飛んで来るのか分からない魔弾によって次々に撃たれ、その身を地面に寝かされていった。
そして、1時間ほどで基地の蹂躙は終わる。
「さて、逃げるか! 格納庫に集合!」
『『了解』』
三人が格納庫で合流すると、そこには数機の飛空魔動機があった。
「これこれ! ってお前達は扱い方知ってるのか?」
「「知らない」」
「おい……まあ魔力操作は人族より得意なんだろ? なら乗って覚えるしかないな。
簡単に、【吸着】【浮遊】【風】【射出】の魔道具が組まれてる。
それを足から魔力を流して操作しながら飛ぶんだ。
俺らは色眼持ちだから魔力に問題はないだろ?
ちなみに俺のは特別製だから俺しか扱えないけどな」
「ずりぃ! 俺も俺専用がいい!」
「その為にメマーラルに行くんだろ?」
「そうだったな! じゃあ逃げるぜ!! 一旦戻るんだろ?」
「ああ、でも一応見られるかもしれないから遠回りな?」
「「分かった」」
二人は飛空魔動機を起動させると、徐々に浮遊していく。
そして、ブォーンっと音を立てて飛び立っていった。
初めてでもちゃんと乗りこなせているのは、やはり亜人として魔力の操作が得意だからなのだろう。
クロビも〝鴉〟を取り出し、その場を離れていった。
「クロ、風が気持ちいい」
「だろ? 最高なんだよ空の旅は」
「うん」
既に三人は仮面を外している。
そして、クロビとリースが楽しんでいると、更に楽しんでいる奴が前を飛んでいく。
「ひゃっほー! なんだこれ、最高じゃねぇか!!」
飛空魔動機を回転させながらはしゃぐリッシュの姿。
「そういえば、二人って何歳なんだ?」
「女性に年齢を聞くのは失礼……」
「はい、すいません。 じゃあリッシュは?」
「リッシュは人族で言えば25歳」
「やっぱり俺より年上か……ってならリースも俺より上なんじゃ?」
「そうなの? 私お姉さん?」
「俺はもうすぐ18だからな」
「クロ、子供。 私、大人」
何故かリースはえっへん!と誇らしげな表情を浮かべる。
「でも、亜人種はあまり歳とか気にしない。 基本は強いかどうか、それが本能でもあるから」
「なるほど。 まあ確かに関係ないよな。 あれを見てたらどっちが上か分からん」
目の前では未だ「うっひょー!!」とテンション高めにはしゃいでいるリッシュの姿がある。
「リッシュは昔からそう。 今は楽しませてあげて」
こうして三人は無事にドーバルの施設を潰し、飛空魔動機を奪うと遠回りをしてグラーデンの屋敷へと戻った。
再び世間では〝ドーバル軍事施設ルッセル支部、壊滅! 謎の仮面三人組現る!〟と広められた。
ドーバル傘下国などはこの話題に怒りと恐怖を感じ、ドーバルによって傷を負わされた各国は歓喜した。
※ ※ ※ ※ ※
≪ドーバル軍事要塞・総本部≫
基地内の私室では、補佐が最高司令官へ状況報告を行っていた。
本部の私室だけあって部屋は非常に豪華な作りとなっている。
最高級のソファに机。
部屋の端には歴代の魔導銃が壁に掛けられ、その下には功績を称えるメダルなどが置いてあった。
「ゴルバフ元帥閣下、先程の知らせでルッセル支部が壊滅したようです」
「構わん。 既に魔導ゴーレムの新型はこちらに輸送済みだからな。
それに、その他の新作も開発中だ。 本部が壊れん限りドーバルは不滅だ」
「はっ、それとアンネット大将が治療施設へ移されました」
「アンネットがやられるとはな……紅眼が本格的に始動したか。
ルッセルを襲った仮面の三人、紅眼じゃないのか?」
「未だ確証はありませんが、その可能性は高いかと。
今後、ドーバルへの攻撃が激化した際に紅眼の名が出て来なければ恐らくそういう事になりますな」
「ふん、小賢しい真似を。 一応各国の基地に伝えておけ」
「はっ」
「俺とお前が再び対峙するその時も近いな。 まあこの身体になった事は寧ろ感謝してるが、必ず俺の手で殺してやるぞ、紅眼!! ガハハハハハッ!!」
※評価、ブクマなど、是非ぜひよろしくお願いいたします。




