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黒き復讐者の交響曲  作者: Rさん
第Ⅰ章 ~ゴルデニア大陸編~
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旅立ち

※本編が進みます!


自分の人生を振り返り、「俺の人生で散々だな……」と、そんな事を思いながら橋を渡り、石が祀られている祠の中へと入る。


石で作られた台の上に丸く削られた魔鉱石が祀ってある。


その周りには、ここを訪れた観光客や村の恋人同士が永遠を……片思いであれば成就を願う短冊が飾ってった。



(俺もユナと付き合った時に一緒に来たな……)



少し感傷に浸りながらも、ふと祀ってある魔鉱石に手を触れる。


すると、突然パァーっとその石が魔力を帯びて輝き始めた。


何が起こったのか分からず、ただ立ち尽くしていたが、周囲を見渡すと小さな光が沢山浮遊している。


(これは……ここで願いを込めて祈っていた人達の〝想い〟なのか?)


光が身体に触れる度に、温かく優しい感覚を覚える。


そうして沢山の光を眺めていると、気付けば自分の前には拳ほどの大きさの光が停滞していた。


俺は無意識に、まるで導かれるようにその光を手でそっと包み込む。


すると、光が更にまばゆい閃光を放つ。そして――




黒火、私の愛する人。 

一人にしてしまってゴメンね。 


本当はこれからもずっと一緒に居たかった。 

家族を失ってしまったあなたに私と、貴方との子供と、幸せな家族を与えてあげたかった。




(こ、れは……ユナの最後の想いなのか!?)




きっと貴方にとっては苦しい過去になってしまったかもしれない。 

叶えてあげられなくてゴメンね。 

でも、それでも私はあなたの幸せをずっと祈ってるよ。

短い時間だったかもしれないけど、私はちゃんと幸せだったから。 

だから、だからこの先、新しい愛を感じた時には恐れないで欲しいな。


愛してくれてありがとう。

新しい人がもし出来たら、私に遠慮しないでその人を幸せにしてあげてね。


これは私の最後の願い。




(人々の想いや願いを届けてくれる石か……届けてくれてありがとう)



魔鉱石の魔力は消え、辺りは風に吹かれて木々の音が響いた。


俺はいつの間にか涙が頬を伝ってる事に気付く。


涙を拭い、ユナの想いをしっかりと刻んだ俺はそのまま祠を出て裏手に回った。


この下に、泉の中にユナが眠っている。



「ユナ、ちゃんと想いは届いたよ。 ただ、やっぱり復讐は遂げるよ。 今の俺にはそれしかない。と言うか、それが始まりになるから。 今生きてる意味でもあるしな。 

幸せになれるかどうかはそれを果たしたら……まあその時考えるよ。

それで許してくれ……」



今はゴルバフをこの手で殺す、それが全てなのだ。


「じゃあ、もう行くね。 また来るよ」



ユナが眠る場所に別れを告げ、その場を後にする。


この辺一帯は今でも帝国の兵が調査などをしに来る事がある。俺は一応脱獄者だから見付かると面倒だ。


だが、今のままでは力が不足しているだろう。

これまで日課だった鍛錬も出来ていなかったし、牢獄の生活である程度は戻ったが本調子ではない。


挨拶を済ませると、とりあえず人目に付かないようユナと出会ったあの洞窟へと場所を移し、これからの事を考えた。




ゴルバフ……自身を魔道具化してるなら、恐らく個人的な力も飛躍的に上がってるかもしれない。


だから俺も更に力を付けなくては。


魔力の増加と魔術強化は前に研究を重ね、自分でもそれを用いて高めていたから問題はない。


後は、眼が紅くなる事での身体変化、そして黒い炎、それらをしっかりコントロール出来なければならない。当然、通常の状態でもだ。


村の本好き爺さんの書物庫にその類の本があったから、焼け焦げてる部分もあるが、読めそうなのを持って来た。ある程度の知識はこれで得られるだろう。


ただ、黒い炎に関しては……正直全く分からない。

異能である事は理解してるが、ちゃんと知識として持っておきたいのに。


一応、現段階で分かってるのは、この炎はイメージでその形に変化出来る事。そして、接触した対象を焼き尽くすかどうかも俺次第って事だ。


とりあえず鍛えなおすかな!

こうして俺は魔術や槍術と、これまでの鍛錬を久々に再開させて身体を以前の状態に戻していった。


食料に関しては前と同じように森で獣を狩り、それを食う。


ちなみに、魔力を有する魔物の肉は、魔力を持つ人間にとっては非常に美味である。


食す事で魔力の回復も出来るからね。


魔力が少ない人間にはちょっと微妙らしいけど。









そして1年後――


罪人として捕まる以前よりもしっかりと身体を作る事が出来た。17歳にもなって年齢と共に色々成長出来たって事だな。


魔術はより質を高めると同時に魔力量の増加も図った。

そして、武芸に関しては日々の鍛錬に加えて感覚をより鋭くする為に熊の魔物を捕まえ、わざと攻撃をさせつつ目隠しをしながら躱すといった、普通なら死ぬ様な事にも費やした。


実際には何度か死にかけたが、そこは魔術の本が役に立ったよ。


魔術自体は恐らくそこらの国の魔術師より遥かに高い威力を持つだろう。


そして、課題でもあった黒い炎や眼の発色もほぼコントロールが可能となった。


この()()と言うのは、これらに関しての知識がないから上限が分からないのだ。


一応、眼に関しては色を持つ者は特に高い魔力を有し、異能を持つと書物には書かれていた。

しかし、色の特色などについては様々な為に詳しい事は記されていなかった。


なお、茶色と青の瞳を持つ者は単に魔力の上限しか違わない為、身体的な強さは比例していない。

だから身体能力自体はその人次第でもあったのだ。


だが、色眼を持つ者の場合は別らしい。


魔力量は凄まじく、同時に身体能力も優れているようだ。


勿論、何もしなければ武芸が身に付く事はないが、鍛錬を重ねる事での習得速度が速いのだ。


故に眼が発色した状態は通常の何倍もの力を発揮出来る。


元々武人でもあった実父から継いだ槍術や、森での獣・魔物狩りなどによって戦闘能力はかなり上がった。


その上で紅眼状態って……人間卒業にならないよな……?



ちなみに眼の発色スイッチは人それぞれのようだ。


俺の発色は〝憤怒と殺意〟


勿論、普段でも殺気や威圧を放つのは可能だが、それだけでは発色しないらしい。


本気で殺す感情、または心からの怒りを対象に抱かなければ発色はしないのだ。


とりあえず普段は赤茶色の眼をしてるから、普通に過ごしていれば色眼持ちだという事は分からないだろう。


実際に〝紅眼の死神〟と世間で知られている以上、眼を紅くするとバレてしまうからな。


という訳で、とりあえずここで出来る事は全てやり尽くしたから、当面の目標は黒い炎が何なのかと言う事と、ゴルバフがどこにいるのか、その情報を集めなければならない。



先ずは近くの街へ行こって情報収集だな!



こうして俺は良い意味でも悪い意味でも、沢山の思い出をくれたこの地を後にし、帝国領を北に向かって歩いていった――


面白いと思ってくれましたら、ブクマと評価お願いします!

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