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黒き復讐者の交響曲  作者: Rさん
第Ⅵ章 ~ルッセル大陸編~
67/111

ドーバル戦再び


ルッセル大陸の温泉地らしき場所で銀狼族の兄妹と出会い、二人を連れてグルーデン領に泊まったクロビは翌朝。


鍛錬の為、早朝に目が覚めて身体を起こそうとしたのだが――



ムニュ



ムニュ



「なんだ……? 何か柔らかいし温かい……?」



少し寒かった為、しっかりと顔以外を布団で包めているのだが、こんなに柔らかいものを抱えた覚えはない。


ムニュムニュ……



「ん……んぅ……」



「……まさか!?」



クロビはガバっと布団を捲った。すると、そこには身に着けているのは綺麗な石のネックレスだけで、他は何もなく、裸で気持ち良さそうに寝ているリースの姿があった。


そしてクロビはしっかりと右手はリースの豊かな胸を、左手は肉付きの良い尻をガッシリと掴んでいた。



「ん~、おはよう」



「おはようリース。 何でここに居るんだ?」



「昨日、潜り込んだ……んぅ……そこ、ダメ……」



「あっ、ああ……悪い」



クロビは無意識にその柔らかさを求めるかのように手が動いていた。


透かさず手を話すと、頬を赤らめたリースが眠気眼でクロビへと視線を移す。そして――



「クロ、する?」



朝だからこそ、何より目の前に美しい裸体の美女が自分に抱きついていた事で、クロビの元気になっている部分をツンツンと指で突きながら聞いて来る。



「い、いや……しないぞ?」



「本当に?」



「何で攻めるんだよ。 リッシュにバレたら確実に殺される」



「私が……守る」



「うん、それは嬉しいんだが……とりあえず話をしようか」



「身体で?」



「違うわ!」



ぽすっと手刀をリースの頭に落とす。



「むぅ……」



リースは剥れながら布団に包まると、プイっとご機嫌が斜めになってしまった。



「大体、俺とお前は昨日会ったばかりだぞ? そんな簡単に許していいのか?」



「簡単じゃない……それにクロはもう私の身体見てる。 何度も」



「いや、そうなんだが……」



「それにクロの匂い、優しい。 そして悲しい。

だから目的は同じだけど、一緒に居てあげたなる匂い。

だから一緒に居たいの。 私じゃ嫌?」



「嫌じゃないよ」



クロビはリースの頭をポンポンと手を添えると、撫でてあげる。


すると、リースはふにゃ~っと気持ち良さそうにする。


銀狼族だからだろうか、人の形をしていてもこうしたツボは同じなのかもしれない。



「でもさ、まだ早いよ。 もう少しお互いを知ってからな?

ただ、今のところ俺は恋人とかそういうのを作る気はない」



「銀狼族は恋人という関係はあまり分からない。

勿論、好きとか嫌いとか、愛はある。

でも、特に女は()()()()()()と思うかどうかが重要……」



「じゃあまだ子は要らない。 それこそまだ早い」



「なら孕ませなくてもいい。 でも、なぜだかクロとは繋がりたいの」



「頑固だな……じゃあ今はこれで許せ」



クロビは両手でリースの頬に触れると、最初は軽く、そして段々と激しく口付けをした。



「――っ!? ぷはっ! ん~~!?」



クロビの舌がリースを蹂躙していく。



そして数分後――



「うぅ……クロ、ずるい」



「ずるいって、リースの方がずるいだろ」



「やだ、許さない」



するとリースはガバっと布団に潜る。


どうやらリースは極度の負けず嫌いらしく、クロビに負けず劣らずの蹂躙によってクロビは鍛錬ところではなくなってしまったのだった。







「お前な~」



「ふふっ」



「とりあえず皆がそろそろ起きるから部屋に戻りなさい。 服は忘れずに」



「……」



チュ



「……はーい」



「はぁ~」



リースの思わぬ積極さにタジタジとなったクロビは、リースが部屋を出た後で頭を抱え、深い溜息を吐いた――


その後、着替えを済ませるとダイニングで朝食を取り、ゆっくりした時間を過ごしていた。



「クロ、一応俺らはこれを見てこっちの大陸に来たんだ」



そう口を開いたリッシュが、以前ドーバルの基地から盗んだ機密情報の仕様を渡した。


そこには、過去からこれからの予定なども記載されていた。



「なるほど、何か魔動機か何かの試作をしてるってのは聞いてたが、昨日運ばれたのか。

通りで警戒してた訳だ」



「でも、それが昨日終わってんなら手薄には……ならないな」



「だろうな。 それに資料盗まれた情報はもう出回ってると思うから、予定が変更されてる可能性も高い」



「だよな~」



「「はぁ~」」



「面倒だが正面突破するか?」



「さすがにそこまでいくとかなり危険だろ。 俺が居てもだ」



「だよな~。 ってこれは!?」



「どうした?」



突然一枚の資料を目にすると、リッシュが青筋を立てて怒りを露わにしていく。



「ここに、アンネットって書いてあるだろ? こいつだ……俺達の国を滅ぼした張本人。 別名、冷酷非道の蛇姫」



「なるほど、大将か。 そんな奴相手なら尚更危険だな。

リッシュ、一人で行こうとするなよ?」



「ああ、分かってる。 さすがに一人じゃ殺されちまう」



そう言うと、リースがリッシュの肩を掴み、一人にしないでといった表情を浮かべる。



「大丈夫だ。 お前を一人にはしねぇよ」



「うん」



リースはそのままリッシュの隣に腰を下ろした。



「とりあえず、二人は俺の、俺は二人の力をちゃんと知らない。

今日はそれをちゃんと見た上で今後を決めるか」



「だな」



「うん」



そして三人はロスタールの街を出て、近くの森に場所を移すと、各自の武器、技、魔術や異能を披露していった――




※ ※ ※ ※ ※



≪ドーバル軍事施設魔導研究所・ルッセル支部≫



「試作機は昨日に輸送が完了しておりますので、本日にはそちらへ到着すると思われます」



『ご苦労。 後はソルジャンのバカの後始末とロスタールの件だな』



「はっ! ロスタールはここの兵共の力不足によるものかと」



『ふん、まあ研究に重きを置いてるからな。 だがお前が居れば問題なかろう? アンネット大将』



「ご命令頂ければ即座に進軍を開始致しますが」



『そこはお前に任せる。 好きにやれ』



「分かりました。 では、早急に招集をかけて準備致します」



『君の働きに期待している』



「はっ!」



プツンと通信魔道具の光が拡散する。



「お前達、聞こえただろう? 直ぐに兵を招集しろ。

明日、ロスタールへ攻め込むぞ!」



「「「はっ!」」」



「何だか楽しそうですね、大将殿」



「ドレイクか、何か分かったか?」



スーッと音も立てずに中将のドレイクが姿を現す。



「時おりですが、対空迎撃用魔動銃、動体検知魔導銃共に数回作動してるようですねぇ。

恐らく、資料を盗んだ者がこちらの様子を伺っているのでしょう」



「なるほど。 だが、これから戦に出る分、運が良ければ対峙するだろう」



「それなら一石二鳥ですからねぇ」



「明日には出陣予定だ。 お前も準備はしておけよ」



「分かりました」



「私は研究所へ行くが?」



「同行致します」







「動作状況はどうだ?」



アンネットが研究員に現状を聞く。



「今のところ問題はありません。 ()()()()()()同士でも模擬戦など行なって試しましたが、しっかりと作動します。 宜しければご覧になりますか?」



「ああ、ちょうど良い。 頼む」



「分かりました」



研究員は機械を作動させて魔導ゴーレムと呼ばれる新型の兵器を稼働させる。



「二番隊、各機に搭乗して模擬を開始して下さい」



『『はっ』』



ウィーンと音を立てながら二体の魔導ゴーレムがその姿を現す。


二足歩行で足には走行用の車輪が付属し、アームは【射出】と【収納】の魔道具が組み込まれ、右腕部には魔導銃が付属されている。


外装は全てがミスリルとオリハルコンで造られ、耐久性も非常に高い。


背中部分に搭乗席があり、乗り手はそこから魔力を流してゴーレムを動かす仕組みだ。



「では、始めて下さい」



ビーっと開始の音が鳴り響くと、両機が車輪を回して距離を詰め、ガキン!とアーム同士がぶつかり合う。


そして両機が後方へと下がるとどちらもアームが射出されてお互いを掴む形になった。


そのまま魔導銃がダダダダッ!と放たれると、障壁が展開され、双方無傷に終わる。


やがてアームが収納で戻り、元の位置にガコンと収まる。



「ほう、なかなか機敏な動きをするのだな」



「はい、現在この施設には五体の魔導ゴーレムが格納されております。

昨日輸送された新型はこれよりも更に互換性を高めてますので、恐らく五対一でも新型が圧倒的かと」



「ほお、一度目にしてみたいものだな。

明日、早速ロスタールを攻める予定だが、出撃は可能か?」



「今から整備して時間が余る程でしょう」



「では、任せる」




※ ※ ※ ※ ※



≪ロスタール近郊の森≫



昼頃から日が沈みかけた今の時間まで、三人は鍛錬や技をそれぞれ披露しつつ磨いていた。



「お前のその火は何でも焼き尽くすんだな。 地獄の業火みてぇだ」



「そうなんだけどな……前にS級ハンターのウルハ・オウバと戦った時は、アイツが雷を纏って無理矢理消し飛ばしてたけど」



「ウルハ・オウバ……名前は知ってるな。 だが、そんなすげぇのかS級ハンターって」



「いや、ウルハは俺と互角だったが、S級ハンター自体はピンキリだな。

その前に会った奴は弱かった」



「お前の旅って何か想像以上だな……」



すると、リースが何故か怒った顔でクロビを睨み、手にはミスリルで形成された鉤爪が見える。



「えっと、どうしたリース?」



「何で怒ってんだ?」



「クロ、ウルハって()よね……?」



「えっと、女だが……」



「ふん!」



ズギャンっとクロビが居た所が抉られ、三本の深い線が出来る。



「おいリース!? それ死ぬから! 俺、死ぬから!」



「女って事は浮気……!」



「アホ! ウルハは戦っただけだ! それに浮気って恋仲同士で別の女に手を出すって事だぞ? 

なら当て嵌まらないだろ!」



「――っ!? そうなの?」



「お前知らずに俺を殺そうとしたのか……」



「リッシュ? 浮気って違うの?」



「浮気? だから特定の女がいるのに他のとこにいくってやつだろ?

まあもしかしたら人族と銀狼族の浮気の定義が違うかもしれねぇけどな」



「じゃあクロ、浮気じゃないね。 良かったね」



「いや、何が良いのか分からないが……? それに、子を成したいかどうかじゃないのか?

なら、俺が別に他の女を抱いても良いと思うんだが」



「クロは違うの!!」



「全く、リースがここまで惚れ込むとはな……ここまで来ると俺は何も言えねぇよ。

まあ、クロ! 大切にしてやってくれ」



「宜しくお願いします……」



急にリッシュがクロビの事を許すと、リースは土下座をして、「不束者ですが…」的な様子でペコっと頭を下げた。



「待て待て待て待て~! 話が勝手に進んでるから戻そうか」



「戻さない。 宜しくね!」



リースは宜しくと言いつつも、再びミスリルの鉤爪を形成してクロビに言い寄る。



「脅しじゃないか……はぁ~」



こうして、三人はそれぞれがどの様な力を持っているのかを確認して、グルーデン領へと戻って行った。








「リース、お風呂行こ!!」



戻ると、すぐ様ニナがリースの手を引いて浴場へと向かった。



「さてリッシュ、明日はちょっと偵察にでも行くか。 今の状況も知りたいしな」



「だな。 状況は変わってるかも知れねぇし、細かく見てた方が対応し易い」



しかし、その翌日……二人の予定は大幅に狂わされる事になった。



ガンガンガン!



「グルーデン様!! グルーデン様~!!」



「門番か、どうした!?」



「ド、ドーバル軍が攻めて来ましたぁぁあー!!!」



「なっ――!? 大変だ! すまぬ、自警団に連絡を繋いで、急ぎ皆を地下へ避難させてくれ!」



「はっ」



その日の朝もリースはクロビの部屋へと忍び込んでいた。



「お義兄さ――っ!? キャー!!」



「ん……!? 何だ?」



「な、なんだじゃないですよ、こんな非常事態に!!

それに、リースを……最低! お姉ちゃんに謝れ~!!」



「ん? あっ、リースお前また勝手に入って来たのかよ……」



「ん~、だってクロ悲しい匂い、一緒に居れば消えるかと思って」



「誤解されるから辞めなさい」



「ニナ、違うよ。 あっ、でも違くない。 私はクロ好き」



「も、もう! そういう事じゃなくて~! ってそうだ!

違うの二人とも、ドーバル軍が攻めて来たの!」



「「何っ!?」」







その後、領主邸には自警団達や腕に自信のある者などが集められ、どう対処していこうかと会議を始めていた。



「鉄壁で時間稼ぎは出来るが、戦力が乏しい……」



「このままだとまずいな。 既に霧の範囲外、街の周辺まで来ている」



「数は?」



「凡そだが1000は居るだろう」



「こちらは?」



「集めても300程度……絶望的だな」



ロスタールは今や国ではない。


だからこそ、それでも民達の為に鉄壁を造り、そして守り抜いて来た。


だが、守りには強くても相手を攻める術がある訳ではないのだ。


国であれば騎士などが居たかもしれないが、ここはただの街。


自警団こそいるものの、強さで言えばハンターのC級ほどだろう。



「なら俺らがやるよ。 多少の穴埋めにはなるだろ?」



その場に居た全員が振り向くと、そこにはクロビ、リッシュ、リースの三人が立っていた。



「クロさん、良いのか?」



「ああ、元々ユナに家族を頼むって言われてるし、こうして世話になってるんだ。 働かせてもらうよ」



「俺達も同じだ」



「グルーデルさん、この方々は?」



ロスタールに来てから基本的にはグルーデンの屋敷か外にしか出ていない為、街の人達は三人を見かける事こそあったのだが、その詳細は知らなかった。



「ああ、頼もしい人達だから安心してくれ。 だが、人数は壊滅的だ。 

だからこそ、民達を安全な場所に移す事が最優先してくれ!」



「「おう!」」



「よし、じゃあ早速やるか!」



「君達、待ちなさい」



クロビ達が外へ向かおうとすると一人の男が話し掛けて来た。


頭部に少しだけ生えた朱色の髪に朱色の髭を生やした如何にも職人という風貌の男だ。



「この霧の中では逸れたら合流する術がない。

これを持っていくと良い」



男から渡されたのは三つのアクセサリー。


その先端には黒い石が嵌め込まれていた。



「これは通信魔道具だ。 最初に通信する人の魔力を流して覚えさせる。

そうすれば魔力を流した時にその人に繋がる」



「おお、助かります!」



「頼む、街を守ってくれ!」



三人は手を重ね、三つのアクセサリーに各自の魔力を流していく。


そして一つずつ手にする。



「ん~この形なら……」



クロビが持っていたアクセサリーはまるで釣り針の様な形をしていた。


だからクロビはそれを耳たぶにそのままぶっ刺した。



「よし、これでピアスになるな 手を使わなくても魔力流せるし、通信出来るだろ? 聞こえるか?」



『問題ないぜ』



『クロ、血出てる』



「よし、じゃあ改めて行くか!」



リッシュもクロビと同じ様に通信魔道具を耳に刺し、リースは付けているネックレスにそれを繋げ、三人は屋敷を後にした――



※評価、ブクマなど、是非宜しくお願いします。

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