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黒き復讐者の交響曲  作者: Rさん
第Ⅳ章 ~ゴルセオ大陸編~
57/111

次の目的地とドーバルの現状


ウルハとの激闘の末、お互いが勘違いで戦っていた事実に気付き、それぞれの場所で身体を休めて翌日――



クロビは謁見の間に姿を現した。



そこにはモーダンの王フォンダルタイン、ベーラとウルハ、数名の武族達、そして5名の領主が並んでいる。



「おおクロ殿、体の調子はどうだ?」



ウルハがクロビの姿を見付けると、気軽に話しかけてきた。



「どうも何も、見ての通りだ。 と言うか、お前も似たようなもんだろ」



二人は魔術である程度の傷こそ癒えているが、場所によっては包帯を巻いていた。


それだけ昨日の戦いは凄まじかったという事でもあるのだ。



「で、王様が俺に何か用か?」



「おい貴様、王の前だぞ! 少しは弁えろ!!」



ベーラがクロビの態度に青筋を立て、怒りを露わにする。



「いや、俺の王じゃないし」



「な、何だとっ!?」



「よい、ベーラ。 こういう男は何を言っても無意味だ」



「くっ……」



「で、今回のワイバーンの件、お主の仕業ではないと聞いたが、誠か?」



「ああ、笛がどうとかって話か。 あれは俺のじゃないし、昨日ウルハに話した通りだ」



「そうか……」



フォンダルタインは髭を触りながら少し考え事をするが、そこで一人の貴族が割って入ってきた。



「王よ、その者が言ってる事は嘘かもしれません! 騙されてはなりませんぞ!」



ふくよかな体型で口髭を伸ばしたビンダールだった。



「おいおい、急に入って来て嘘ってなんだよ。 大体、俺にこの国を潰す理由がないんだよ」



クロビはビンダールの物言いに少し苛立った表情で異議を申し立てる。



「私もクロ殿が黒幕とは思えぬな。 実際に戦いを通じて人と成りは分かったつもりだ。 まあ感覚的な話になるのだが」



「ウルハ様、感覚では証明にはなりません!」



「待てビンダールよ、なぜお主はそこまで熱くなる?」



フォンダルタインはビンダールの様子に違和感を感じ、問い質す。



「いえ、熱くなっているのではなく、私はこの国の安全を考え……」



すると、謁見の間の扉がバンと開いてガドが少年とフードを被った男を連れて入ってきた。



「――!?」



ビンダールはその姿を目にした途端、急に青ざめた表情になる。



「またお前か! 今回はなんだ!?」



前回もそうだったが、謁見の間に突然の乱入者状態のガドは申し訳なさそうに発言をする。



「はっ、突然申し訳ありません。 実は昨日、そこのクロに笛の詳細を改めて聞きまして、独自で動かせて頂きました。

その際、こちらの少年達からクロは笛を貰ったとの事。

そして少年達もまた、()()()から笛を貰ったと証言を頂いております」



「という事は、こいつが今回の首謀者って事か?」



ベーラはガドによって拘束されているローブを来た男に鋭い視線を向ける。



「ち、違う! 俺はただ雇われただけだ! これを誰でもいいから吹かせろと」



「うむ、ではその依頼人は誰だ?」



フォンダルタインは威圧をしながら問い質す。



「知らねえ! そいつもフードを被ってたから……」



「む、貴様嘘はいかんぞ? と言うかここで言い逃れても結局は罪人だ。

そのまま牢獄の生活になるであろうな。


だが、仮に牢に入らなくても()()()()()()()()のが落ちだ。

なら、ここでちゃんと全てを吐き、刑を軽くした方が安全ではないだろうか?」



ウルハもまた、物凄い威圧を放ちながら、まるで私がこの手で殺そうと言わんばかりにローブの男へ迫る。



「こ、こやつは自分が黒幕なのに言い逃れをしているのかもしれん! 即刻、即刻死刑に!」



ここでまたもビンダールがまるで何かに焦っている様子で口を開き、死刑と叫びだした。



「だからさっきから何なのだ?」



フォンダルタインはその様子に明らかな疑念を抱く。すると――



「おい! 聞いてないぞ! 死刑ってなんだ!? ()()()()()()()()()って言うからやったのにそれはないだろ!!」



「「は?」」



「な、何を言っている!? 私は貴様なんぞ知らんぞ!?」



「ええい、もう我慢ならねぇ! これまでも散々力を貸してやったのにまだ金貨1枚も貰ってねえ! そんなんで共犯とか言って脅してきやがって!

お前も道ずれだ! 全部暴露してやるからな!!」



「ビンダール、どういう事だ? 今すぐ説明せよ」



フォンダルタインの冷ややかな視線と威圧を込めた言葉にビンダールはあたふたし始めた。



「ひっ、し、知りません!」



「ほんとう、か?」



既にビンダールは冷や汗がダラダラと流れ、何も言えない状況へ迫られてしまっていた。


加えて、王、ウルハ、ベーラからの威圧で圧し潰されそうな状況となり、言葉が上手く出てこない。



「こやつ等を連れて行け!」



「「「は」」」



こうしてビンダールとローブの男は武族達に連れていかれた。



「ガドとやら、よくやった」



「いえ、私も巻き込まれた側なので、お力になれたらと」



「そしてクロ殿、すまんかったな」



「まあ、王侯貴族は面倒事が多いって聞くし、無事解決出来て一件落着って事で」



そしてクロビはガドと、少年達と共に城を後にした。



後日、ビンダールは日頃からブトールの領地内で問題を起こしていた事が分かった。


それはただの妬みでしかないのだが、順調に拡大し、発展していくブトール領と、自分が領主のビンダール領との差に嫉妬し、一気に崩すべく今回のワイバーン騒動を引き起こしたのだ。


しかし、結局街に被害はなく、自身の悪行がバレてしまっただけで終わった。



翌日、クロビはガドに挨拶を済ませ、モーダンの街を出た。



すると――



「クロ殿、もう旅立つのか?」



後ろからウルハが声を掛けて来た。


昨日の着物とは違い、灰色の袴に白をベースにしたこちらも桜の刺繍がされたものだ。



「ああ、もうここに用はないからな」



「そうか、なら()()()()()の情報をあげようではないか!」



「どうした急に?」



クロビはウルハの急な素振りに少々違和感を感じ、顔を引き攣らせた。



「む、やはり失礼だな君は! 激闘を繰り広げた仲ではないか! もう他人ではないのだぞ! ならよいではないか!」



「ああ、そう言う事な! でも今の言い回しだと周りに人が居た場合、体の関係と捉えられるから気を付けろ?」



「むっ!? 確かにそうだな、気を付けるとしよう。 まあ君がどうしてもと言うなら()()()()()()構わぬが、私は自分より強い男でなければ御免だ!

とは言え、今のところ互角の勝負をしたクロ殿が()()()()()になるのだが……」



「いやいや、勝手に話を進めるなって。

そこは断るぞ」



「ふん、やはり貴様は失礼なやつだ!」



ビシっと指をクロビに向けて指す。



「で、良い情報ってなんだ?」



「おお、話が反れたな。 当然、()()()()についてだ!」



「ほお、ならありがたく!」



「実はな、アーバロンがあるゴルデニア大陸の東にあるルーブ大陸は分かるだろう?」



「ああ、オウセンがある場所だな」



オウセンとは、ルーブ大陸にある、東方国の主要都市。


つまりは、このルーブ大陸の国の事を世間では東方国と呼ぶのだ。


故にクロビもウルハも、そしてかつてはアーバロン大帝国皇帝であるゼル・アーバロンも、この地の出身になる。



「そのルーブ大陸を南に下った場所にモーダンと同じ程の島国がある。


そこは〝忘却の大陸〟と呼ばれているのだが、どうやらその地にドーバル施設があり、新たな魔導兵器のテストを行なっているという話が出ていてな。


故に、もしかしたらゴルバフも参加しているのでは、と私は考えている」



「なるほど、と言うかまだそんな物作ってるのか……分かった! 助かるよ」



「ああ、クロ殿が我らと敵対しない事を祈るばかりだがな」



「じゃあとりあえず、クルッシュか。 服がボロボロだ」



クロビは指輪から魔動機を出した。



「む、何だそれは!?」



「ああ、俺の飛空魔動機だ」



「なんと……でも確かに色眼持ちの魔力なら使い勝手は良いかもしれないな。

にしても……黒い鳥……(カラス)か!?」



「おお、良い名前だな! (カラス)! 今度からその名にしよう!」



ウルハの発言で、急に魔動機の名前が決まってしまったが、クロビ自身、その響きに満足な笑みを浮かべた。



「こ、今度乗せてくれ!」



まるで勇気を振り絞ったようにウルハが告げる。



「ああ、でも俺専用だから一緒にになるけど、次あった時にでも! じゃあな!」



「そうか! 相分かった! では、達者でな!」



クロビはモーダンからクルッシュを目指して魔動機〝(カラス)〟を起動させ、飛び立っていった――




※ ※ ※ ※ ※



≪忘却の大陸・ドーバル軍事施設兼魔導研究所ルッセル支部≫



「どうだ、試作型の調子は」



「はい、今回の試運転では魔力の供給、蓄積を自力ではなく、純魔鉱石を使用しての試みとなります」



一人の若い研究員が説明をする。


そして、



「それが成功すれば、わざわざ人が魔力を補填ぜずとも交換する事で動かせるようになるぞ」



年老いた男が更に口を挟んだ。



「順調という事だな。 これが完成すれば敵無しだ」



「お前さん、また戦争始める気か?」



「戦争ではない、()()だよ。 その為にこうして研究に研究を重ねているのだ」



「まあいいがの。 しかし、お前さんの身体はもはや()()()()()()。 どこぞの騎士やハンターなら傷さえ付けられんだろ」



「ああ、だからお前には感謝してる。 後は俺の苦しみを紅眼にぶつけられれば達成だ! はっはっはっはっは!」



男は笑いながらその場を後にして行く。



「では、取り掛かろう。 試作を起動しろ!」



「「はい」」







男は施設内に設けられている自室へ戻ると、各地の情報を集める。



「ほぉ、エマーラルの国が同盟を……今更何を……」



「元帥閣下、アーバロンより通信が入っております。

繋げますか?」



「そうか、こちらに回してくれ」



補佐らしき男が通信用魔道具を机に置き、魔力を注ぐ。



『……私だ……』



「ああ、急ぎの用か?」



『急ぎではないが、モーダンで紅眼の情報が入った。 まあついこの前にはイーリスで目撃された様だが、西側にいるんだろう』



実際にクロビの姿はウルハ以外にもモーダンの武族達が目にしていた。


また、爆音やワイバーンの群れによってモーダンのドーバル施設からも部隊が周囲を偵察していたのだ。



「それは良い知らせだ。 だが、偽物も至る所にいるようだがな」



『まあ、いずれ本物に会うだろう。 で、そちらの試作状況は?』



「ああ、順調だよ。 一月後には()()()が完成する予定だ。 そのお披露目の時には招待状を送ろう」



『楽しみにしている。 ではな』



「ふん、紅眼は動いているか……」



「元帥閣下、この後の予定ですが、船で南の大陸へ移動して技術者達との会合があります」



「分かった。 では向かうとしよう」



「分かりました」



二人は部屋を出て、格納庫へと足を運んだ――




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