表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒き復讐者の交響曲  作者: Rさん
第Ⅰ章 ~ゴルデニア大陸編~
4/111

回想Ⅰ

※主人公クロビの生い立ちからプロローグまでになります。

三部になってるので、お付き合い下さい。

罪人塔から脱獄して三日、俺はドーバル軍事要塞跡より南に()()()、カルネール村跡に居た。


要塞は政府や帝国の軍が整備にあたっていたが、カルネール村は状況確認だけ終わらせたようで、未だ崩れた家などはそのままの状態だった。


村の外れには沢山の墓が作られ、誰かが花などを定期的に供えられている。


きっと当時は居なかったこの村の出身者や関係者達だろう。


クロビも墓に近くで摘んだ花を供え、()()()へと向かった。



そこは透き通る様な綺麗な湧き水が流れていて、泉の中央には祠がある。


橋を渡ってその祠まで行き、静かに祈る。

村の人達もイベントの際はよくここを利用していたな……。



「少し待たせたかな? 俺も色々あってさ……」



その泉を眺めながら俺は挨拶をし、自分の人生を振り返った。




※ ※ ※ ※ ※


元々、前帝国――つまりは東方国の領地でもあった街で生まれた。


父はその国の城に仕える武人で、剣ではなく槍術に長け、その他武術にも精通していたと聞く。


母は武人ではないが生まれた時から魔力が高く、魔術が得意だった。

とは言え、一般よりも少し上位程度ではあるが。


そんな父、金城刀祢(かなぎとうや)と母、咲夜(さや)との間に生まれたのが俺、黒火(くろび)だ。


幼い頃は父に槍術と武術を習い、そして母からは魔術を教えてもら――わなかった。


ただ、興味はあったから仕方なく自分で魔術書を読み漁り、幼いながらも独学で研究を重ねた。


その後、父は病気で伏せ、亡くなった。

それが8歳の時だった。



そして、当時東方国に敗北して傘下となった国の騎士団員にして、父の親友だったダルク・ルーセルに母と共に引き取られて貴族の仲間入りを果たした。


義父のダルク・クルーセルはその後、騎士団を辞職し辺境伯になり領地で時おり魔物や盗賊の討伐をしながら穏やかに過ごしていた。


領主ダルク、そしてセイラ夫人、息子のダレン。


元は敵国の出身であった俺と母をルーセル一家はを快く受け入れ、優しくしてくれた。


そこでも俺は息子のダレンと共に付近の獣や魔物を狩ったり、魔術に没頭したりと、いささか普段ではないが、のんびりと過ごしていたのだ。



しかし、それも僅か2年で幕を下ろす事になる――



ある日、ダレンは勉学に励んでいたので一人で森に狩りに行き、夕食の材料となるイノシシを抱えて帰路についていた。


だが、家の前に着くといつもは門前で出迎えていたメイドの姿がなく、静けさで嫌な予感がた……そして、それは的中する。


そっと家の中に入り、辺りを見回すと母の声と聞き覚えのない男の会話が聞こえる。


「お前達はあの方にとって邪魔な存在。 ここで消えてもらうぞ」


そして、ドア越しに母から悲鳴が響き渡った――


ドアを蹴破り、中へ進むと応接間で見知らぬ男に斬られる母の姿だった。


「黒火、逃げて……」


血を吐きながらもかすかな声で呟くのが耳に入る。


そして、倒れ行く母の姿を目にした瞬間、身体の中で異変が生じた。


ドス黒い()()が湧き上がり、()()だけが異様な熱を持つ。

更に、身体全体に黒い炎が纏わりついていたのだ。



この時、クロビが初めて自分の力の覚醒へと至る――



自分には分からないが、三人居た恐らく暗殺者であろう一人が「あ、紅い眼だと!?」と言ってたので、熱く感じたのは自分の眼が変化したのだろう……


そこからはあまり覚えてないが、俺は一人を焼き殺していた。

だが、身体に重しが乗っかる様な感覚に襲われ、また、幼い自分では残りの二人を相手にするのは困難だと悟り、母の遺言通り森に逃げた。


追って来てるかも分からない。


只々、悔しさと憎悪、殺意、それらがぐちゃぐちゃに混ざり、今にも意識が飛びそうな感覚ながらも必死に森の中を駆け回った。


その後、何時間も走り続けて、自分がどこにいるのかも分からなかった俺は、森を抜けた丘の下部に洞窟を見つけ、心身共に疲れ果てて意識が途絶えた――



夢は記憶の整理だと何かの本に書いてあった。

その夢の中で、母と暗殺者らしき人達のやり取り、そして残した言葉やその時の光景が断片的に再生される。


覚えているのは、あの方と呼ばれ、母が口にしていた()()()()という名と、()()()()だ。


次第に映像すらも見えなくなり、深い暗闇に落ちていく。


そして――




「――い、―だ――ぶ? もし―し?」


声が聞こえる。


「おーい! ――える?」


もしかして追手か……?

そう思いながらもゆっくりと目を開けると、そこには見た事のない女の子が俺の顔を覗き込んでいた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ