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黒き復讐者の交響曲  作者: Rさん
第Ⅲ章 ~エマーラル大陸編~
31/111

両軍の衝突と激化


クロビはエリネールの執事であるアランに連れられた応接室を出て、謁見の間へと向かった。


先ほど、紅茶を頂いていた際に感じた違和感はこの部屋からでもあったのだ。


上を見上げると、豪華に飾られているシャンデリアが少しだけ揺れている。



「もう居ないか……」



念の為、クロビは自分の魔力を部屋全体へと散布していく。


これは以前グランディーネ号でゼオに教えた気配などを探る際の基礎だ。


自分の魔力を周囲に広げる事で、他の気配や魔力が存在した場合は必ずぶつかる。そうやって感覚を鍛えていくのだが、更に気付きにくい微量の魔力を察知するには、この方法が最適だったりするのだ。


すると――



「ん~、玉座の後ろとシャンデリアの上か」



そして、クロビが玉座の後ろに回ってみると、そこには小型の魔道具が設置されていた。


魔道具は術式が施されている事で多少なり魔力を帯びている。


勿論、玉座とは言え試練の間から、つまりは部外者の出入りがある以上、謁見の間には防音や障壁などの魔道具が設置されているのだが、十人十色。人の性格や思考思想がそれぞれ違う様に、魔力もまた、人によって異なる。


何より、城に設置されている魔道具は専属の魔道具師がそれらを作っている事が多く、当然帯びる魔力もある程度は同じ色のはずなのだ。


しかし、今二か所に設置されている魔道具の魔力は()()


だからこそ、クロビも気付く事が出来た。



「これは……遠隔の爆弾か何かかな? 隠蔽の術式が重ねられてるが、かなりの魔力が込められてるな」



さすが戦争、こうやって隙をつくのも戦術の一つなんだろう。


でも、ここが壊れると例えローズベルドが勝っても話を聞くのが()()()()になってしまう。


よし、取り除いておくか!



クロビは二つの魔道具を回収し、試練の間へ続く扉へ向かって手を掛けるのだが……


ガタ、ガタ!



「……」



うん、開かない。押しても引いても。


ガタ、ガタガタ!


すると――



「クロ様、そちらは入り口専用です。 城をお出になる場合はこちらですので、案内致します」



「あ、アランさん。 そうなんですか……じゃあお願いします」



突然、後に現れたアランに驚くが、そのまま出口へと案内されていく。


って言うか執事ってみんな気配消してるの?



「こちらが出口になります」



アランに連れられて数分、出口へと到着した。


王城だけあって出口までも遠いし、その間にも沢山の扉があった。一体何室あるんだろうか。


出口の扉を開けると、そこはローズベルドを一望出来る広場になっていた。そこから街まで続く長い階段――


そういえば城は丘の上で木に持ち上げられてたしな。



「この階段を下り、そのまま真っ直ぐに街を抜ければ――」



ズドーン!!!



突然、アランの声を遮るかのように遠くの方で爆発音が響いた。



「おやおや、案内は不要のようですね」



「そうみたいですね。 ですが、ありがとうございます」



とりあえず、言ってみるしかなさそうだな。


こうしてクロビはローズベルド軍とイーリス軍が衝突する戦場へと駆けて行った――




※ ※ ※ ※ ※


≪ディネル大橋≫




既に開戦してから数時間――



戦場ではローズベルドの魔導師団からの攻撃によって至る所で爆発が起こり、時に氷の柱や土壁が出来ていた。


そして、イーリス軍も魔術を行使しつつ、騎士や兵が魔法を掻い潜り、戦場を駆け抜けていくのだが、その中でも〝一際目立つ部隊〟があった――



第一王子であるアルフレッドと共に戦場を駆けるS級ハンターの『レオン・ハートウィル』



胸元まで伸びた燃える様な赤色の髪と青い眼、180センチ程の長身で正義感溢れるアルフレッドとは違ったイケメンだ。


その鎧は白のベースで髪色に合わせた赤いライン。


背中のマントには龍と獅子をモチーフにした紋章が大きく描かれている。


右手に持つは長さ2メートル程で、羽の両端は龍が羽を広げた様な形の“コルセスカ”だ。


恐らく特注品で素材も一級品なのだろう。



アルフレッドも王子とは言え、非常に好戦的で剣術に優れ、魔術も得意だった。


それ故、二人は幼い頃から魔物狩りや討伐依頼を熟し、実力を高め合って来たのだ。


そのアルフレッドとレオンが中心になってローズベルドの騎士を薙ぎ倒していく。



「ふん! その程度かローズベルド! これじゃあB級の魔物の方が手強いぞ!?」



「ぬかせっ! S級ハンターのくせに生意気なぁ!」



ローズベルドの騎士が挑発するレオンに殺到する。



「雑魚が何人束になろうと、我が愛槍の前では無力だ!」



レオンが凄まじい速度でコルセスカで横一閃。


その勢いは衰える事なく、数人のローズベルドの騎士を斬り伏せた。



「アルフ、道は拓けた! このまま魔女の所まで駆けるぞ!」



「さすがだなレオン。 お前を横に置いて正解だった!」



「させはせん! ―万象の根源より溢れる清き水面、地より天へと還る幾多の棘、天変地異の雨となれ! ≪飛翔(ライジング)する水矢(ウォーターアロウ)≫」



ローズベルドの魔導士から水の魔法で、イーリス軍の足元から無数の細長い水が空へ放たれる。



「ぐわっ!」

「がぁぁぁ!」


次々とイーリス兵がその餌食となっていく。



「ええい、煩わしい! ―太陽の槍(ソーラジャベリン)―!!」



アルフレッドは剣を媒体にして光の魔術を行使する。


すると剣先から閃光が一直線に放たれ、先ほど水の魔法を唱えた魔導士の胸を貫いた。



「ふん、所詮は一介の魔導士! そのまま突き進むぞ! エリネールはすぐそこだ!!」



「「「おお!!!」」」



「イーリスもなかなかやりよるのう。 ちと劣勢か……」



「陛下、このままだと数もあちらが上ですので、苦しい戦いになるかと」



「そうじゃの。 仕方ない、後半戦といくか!」



エリネールは颯爽と飛び出し、前線の地に立つ。



「―星の嘆き、命尽きるは数多の流星、最期の灯は敵を殲滅せん!《流星雨(ホーリーレイ)》!!」



エリネールが再び戦場に降り立ち光の魔法を唱える。


序盤で唱えた魔法とは違い、魔法陣から光の粒が天へと放たれる。


そして、閃光と共に無数の光がイーリス軍へと降り注いでいく。


そう、以前クロビがイーリス軍を撃退した際に使用した魔術の魔法版だ。



「ちっ! またか、あの魔女め!」



「アルフ、魔女との距離が一気に縮まった! このまま突撃するぞ!」



アルフレッドの部隊は既にエリネールを視界に捉えていた。



「よし、目標はエリネールだ! いくぞー!!」



既に沢山の兵や騎士がその場に転がっている。


エリネールの魔法によって、前線で戦う半分以上のイーリス軍が削られてしまった。



アルフレッドは剣を構え、一気にエリネールへと飛び掛かった。


ガキン!



「おや、未来の王妃候補に剣を向けるとは、お主も野蛮じゃの~」



「ふん、その気もないくせに口だけは達者なやつだ」



エリネールは障壁を展開してアルフレッドの剣戟を防ぐ。



「しかし、これ以上長引かせてもお互い兵を失うだけじゃ。

そろそろ終わらせよう。 ―影の棘(シャドウソーン)―!」



エリネールが魔術を展開させると、自身の影が正面へと伸び、鋭い棘となってアルフレッドに襲い掛かる。



「近接で詠唱を避ける為に魔術へ切り替えたか、だが甘い!」



アルフレッドは即座に影の棘を躱し、一気に距離を詰める。



「ふっお主の剣じゃ妾の障壁は破れぬよ」



「――甘いな! せいっ!」



「なっ!?」



アルフレッドとの攻防の隙を付き、レオンがコルセスカに魔力封じの術式を施して振り下ろした。



パリンとガラスが割れるようにエリネールの障壁が崩れ落ちて消滅する。



「油断したなエリネール! 貴様と何度、剣を交えてると思ってる! これで終わりだ!」



「妾とした事した事がっ――」



アルフレッドの剣がエリネール目掛けて勢いよく振り下ろされ、エリネールは反射的に目を瞑る、が――



ガギンッ!!!




※ ※ ※ ※ ※ 

・クロビ視点・




クロビは王城を離れ、街を出てからは一気に速度を上げて先ほど爆音が聞こえた場所へ向かっていた。



今ってどんな状況だろう?


まあ戦争だし混戦してるんだろうけど……


そう思いながらもどんどん速度を上げて戦場へと向かって行く。


本来、ローズベルド国から戦地である≪ディネル大橋≫までは馬で駆けても半日は掛かる。


しかし、グラーゼンからもそうだったが、クロビの速度はもはや常軌を逸したものだった。



「おっ! あれがそうかな?」



遠くの方だが橋らしきものが目に入る。


そして――



ダンっ!と跳躍してローズベルド軍側の前線へと着地する。



「無事に到着っと」



「お、おい! 危ない!!」



「ん?」



後ろから声が聞こえ、横に振り向くとイーリス軍の魔術であろう大きな火球が飛んで来た。



「あら~、なんてタイミングだ。 ―水竜弾(ウォーターバレット)―」



クロビは即座に水の魔術を展開し、迫る火球を水の魔術で相殺した。



「さて、女王はどこかな?っと」



魔術を相殺した事でその周囲の兵達は驚きの表情を浮かべていたが、クロビは気にせずあたりを見渡して女王を探す。



「お、おい! 君は……味方なのか?」



近くに居たローズベルドの騎士が話しかけて来た。



「ああ、俺はローズベルドの女王に用があってここに来たんだよ。 勿論、敵じゃないぞ!」



「陛下の!? だが、陛下は今前線で敵国の王子と戦闘中だぞ! あそこに見えるだろ?」



自分が降り立った所から騎士が指す方に目をやると、王女らしき……と言うか、如何にも魔女らしい容姿の女性が赤い髪の男と金髪の男に迫られていた。



「あれちょっとヤバそうだな。 よし!」



こうしてクロビは黒棍を形成し、縮地で一気に魔女もとい王女の元へと一気に詰め寄った。


そして、イーリスの王子が剣を振り被った瞬間、颯爽と登場してガキン!!っと棍で受け止めたのだった――


※評価、ブクマ、よろしくお願いいたします。

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