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黒き復讐者の交響曲  作者: Rさん
第Ⅱ章 ~航路編~
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復活の狼煙

※短いですが、本編の裏の話しになります。


※時は遡り、一人の少年の手によって一機の小型魔導飛空艇が撃ち落とされてから数時間後――



実はドーバル軍事施設の周辺には有事の際にすぐさま兵や武器を補充出来る様、小規模の待機所が点在していたのだ。


〝あの事件〟の後すぐに捜索部隊が派遣され、各部隊は広範囲で捜索を開始し、魔導通信を使って連携を取りポイントを目指していく。


そして、東に5キロほど離れた雪が積もる険しい山の8合目辺り。


厳しい環境によって捜索は難航したのだが、開始から五日目で吹き飛ばされた飛空艇の残骸の発見へと至った。


捜索隊には医療班や数人の魔道具士と魔導研究員で構成されている。


魔導研究員はドーバル軍事施設にて、主に魔導兵器の開発、化学や工学を活かした要塞強化などを担うチーム。


実際に電力供給や下水処理、駆輪や列車などの魔道具を用いた乗り物を世界に広げたのもこのチームの研究成果なのだ。


そういった経緯があり、医療用魔道具を準備しての参加だった。



「こちら三番隊、発見しました! 直ちに医療班を!」



各部隊が駆け付けると、飛空艇の残骸の奥に血だらけの男が見えた。



「ほっほっほ、生命維持装置を使って生き永らえたか。 悪運の強いヤツじゃ」



「しかし、これは……」



「まあ、どうにかなるじゃろ。 半分は人間卒業じゃと思うがな」



医療班と年老いた研究員が血だらけの男の様子を見ながら状態を確認していく。



「ちーとばかし骨が折れそうじゃ。 とりあえずこの場所では何も出来んな。

維持装置はそのままで飛空艇に乗せなさい」



各部隊が残骸の撤去作業を行ない、ゆっくりと男を運んで行った――




それから半年後――



「んぐ……っ!? ん? こ、こは……?」



「目が覚めたようじゃな、元帥閣下よ」



「貴様は、ガーボンか……ここはどこだ?」



「ここは の山中にある研究施設じゃよ。 まあ結界もあるから誰も見付けられんがな。 お前さん、身体はどうじゃ?」



「身体? まだ動かんが、右目の視界に違和感を感じるぞ……」



「そりゃそうじゃ。 それは目ではなく魔道具じゃからな」



ガーボンはここに運ばれた時のゴルバフの状態を説明し始めた。


生命維持装置のお陰で命を落とす事はなかったにしろ、放たれた魔術による爆発、小型飛空艇の墜落とその衝撃、雪山だった事での凍傷と壊死。



「普通なら死んどるぞい! ほっほっほ!」



「だが生きておる」



「そうじゃな。 まあ半分はお前さんの生命力、もう半分は我々の実験による結果だ。

とりあえず右目も含めた顔の側面、右腕、両足は魔道具を用いた機械になっておるぞ」



「機械……そうか、改造しなければ生きれないという事、か」



「さよう、ただお前さんじゃからの。 手と足は魔導兵器が組み込まれておるぞい」



「そうか、まさかこの私が自ら兵器になる時が来ようとは……だが、いい。

だが、あの小僧!! 私が築き上げた不敗神話に泥を塗りおって!!!」



ゴルバフは憎しみを込めてベッドを殴りつける。



「落ち着いたら今の情勢と身体の使い方を説明するからの。 使いこなせなければ話にならんぞい」



こうしてゴルバフは自らの身体を改造され、命を繋ぎ止めた。


とは言え、これまでとは違い、自身が強大な力を持つ存在へと至った事で世界の均衡も崩れるかもしれない。


そしてゴルバフは再び動き出す。


その半年後には各地に点在する施設の強化、より強固な部隊を作る為の人材育成に力を入れたのだ。



更に半年後――



「閣下、こちらを」



「ん? ほう……あの塔を抜けたのか」



「世間では〝紅眼の死神〟と呼ばれておりますね」



「ふん、確かにあの眼は色持ち特有だった。 だが、こちらも力を付けておるからな。 必ず俺の手で殺してやるぞ!

お前達、これから試作に入る。 準備を始めろ!」



「「「はっ」」」



「脱獄して何を企んでるかは知らんが、必ず私を見付けるのだろう?

だが、その時は貴様の最後になるだろう……はっはははは!!!」



ゴルバフは燃え盛る野心を糧に、新たな実験を重ね、再び武力を集めていった――

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