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黒き復讐者の交響曲  作者: Rさん
第Ⅰ章 ~ゴルデニア大陸編~
17/111

酒と友と魔導散弾銃


服職人であるミリアレア・ルーヴィンに新しい服をオーダーし、宿を取ったクロビは夕刻のクルッシュをブラブラと歩いていた。


そして――



「酒場……そういえば酒ってちゃんと飲んだ事は無かったなー、ここは経験として行ってみるか」



この世界の成人は15歳。


以前、カルネールでユナとの婚約や誕生日の時は少量だが酒を口にしたのだが、以降は口にする事もなく罪人塔に居たり、洞窟生活が長かった為、ほぼ未経験と言ってもいい。


が、現在17歳のクロビ。そろそろ酒位覚えてもいいのでは?と考えた。


そして酒場に入ると夕刻という事もあり、ちょうど職人や住民が酒を酌み交わしていた。


クロビはカウンターに座り、簡単なつまみとエールを注文した。


それから今後の事を考え、酒を口にしながらのんびり過ごしていると同じく一人で飲みに来たであろう、同じ年くらいの男が話し掛けて来た。



「お一人みたいですね。 良ければご一緒しても?」



「あぁ、構わないですけど、俺と飲んでも楽しくないですよ」



「では遠慮なく。 マスター、いつものを!」



どうやらこの男はこの店の常連らしく、この店で飲んでる客に悪い人間はいないそうだ。

だから同じ年くらいの俺を見付け、隣に座った。


っていうか何も考えてないだけなんじゃ……



「おや、ゼオさん。 今日も来たのかい?」



「ちょうど一仕事終えたのでね」



マスターと仲が良いのか、お互いに気軽な対応をしている。



「申し訳ない。 改めて、私はゼオと言う。 これでもハンターですよ。

実は、こうして話し掛けてみたのも貴方がバンディットモンキーを討伐したって聞いたからでして」



ゼオと名乗る男は金髪の青い眼、輪郭はしっかりと整い、鼻も高い。

ハッキリ言えば、王子様みたいな爽やかイケメンだ。


それに、ハンターという事もあって引き締まった体。もう女子なら即効で落ちるだろ。


それにしても、噂か。


まあ、ハンターでもない俺がB級の魔物を討伐すれば多少なり広がるよなぁ~。



「俺はクロと言います。 しがない旅人ですよ。 後、多分年が近いか同じだと思うので、崩しても?」


「そうか! ではクロ、私も崩して話そう」


「良かった。 そっちの方が楽だしな。 ちなみにハンターってゼオは何級なんだ?」


「今はB級だね。 今度A級の試験を受ける予定だよ」


ハンターはD~Bまでは依頼の達成数やその内容で決まるのだが、A級やS級は昇格試験を突破する事で階級が上がる。しかし、BからA級に昇格するのは力があれば問題ないが、S級昇格は力と〝信頼〟が無ければ難しいのだ。



「A級試験を受けられる程なら、バンディットモンキーは討伐出来たんじゃないか?」



確かあの猿達は10体以上でもB級って言ってからしな。



「確かに今の私の階級なら討伐は可能。 でも、流石に単独では少々厳しいよ。

この都市のギルドは主に産業重視だからC級以上のハンターが少ないからね」



なるほどね~まあ分かる気もするけどね。



「しかし、それを単独で、しかもハンターではないクロが討伐したって聞いた時は驚いたよ」



「でも、俺はハンターじゃないからそこまで魔物に詳しくなくてね。 たまたま小銭稼ぎのつもりで討伐しただけだよ」



「そんな謙遜しなくていい、とりあえずこうして出会えた事に乾杯!」



「乾杯!」



二人でエールを飲み干し、更にもう一杯ずつ追加していく。


俺は過去の事は伏せるが、旅を始めてから今に至るまでの経緯などを話した。


すると、どうやらゼオは『水の都グラーゼン』の出身だと教えてくれた。


そして、俺が列車で知り合ったルージュの事も知った仲だったようだ。


世間は狭いな。


ゼオ自身も世間の動きや他の大陸がどのような場所で、どの様な状況なのかを知る為にハンターに登録したらしい。


こうしてお互いの話をしつつ、楽しい時間を過ごしていたが、別の席で飲んでた男達から思いもよらない会話が聞こえた――



「――そういえば聞いたか? 1年くらい前に脱走したヤツいただろ?」

「あー赤目のなんちゃらってやつか! ドーバル潰した張本人だっけか」

「〝紅眼の死神〟な! どうやら最近動き出したらしいぞ!」

「マジかっ! 一人でドーバル潰すヤツだぞ、何企んでるんだろな! まあ俺らには関係ないがな!はははっ!」



――俺、一応存在は隠しながら旅をしてるはずなんだけどな。


どっかで顔が知られてるとかか?いや、だとしたら相手の挙動で何となくは分かるはずなんだが……まあでも対策は練っておくかな。


そんな事を考えてると――



「どうしたクロ! 酒が止まってるじゃないか~」



おや、ゼオがちょっと酔っていらっしゃる?



「すまん、いやー後ろの席で紅眼の死神って話をしてたからさっ!」



「クロは紅眼に興味があるのかー?」



ゼオがフラフラしながらクロの肩に肘を置く。



「まあ紅眼は世間で見ても大罪人だからね。 まして、ドーバルは過去不敗の軍事施設だった。 それが一人の手で落とされたらそれはもう世界最悪の罪人って言ってもいいだろう」



おーそこまでか、って相応の事は確かにしたが、全ては()()()が俺から全てを奪ったのが悪いんだが――



「ただね、今巷の噂になってるのは少々別問題だよ」



「ん? 別問題ってどういう事だ?」



ゼオは酔って気分が良いのか、結構色々と教えてくれる。



「この世界には悪人がゴロゴロいるでしょ? 罪人塔に居るやつ等は別としても、まだ捕らえられずにいる指名手配犯や組織は多く存在する」



確かに善があれば悪もある。


闇組織、闇ギルド、犯罪ギルド、それらは盗賊が居なくならないのと同じで沢山いるのだ。



「そして紅眼が脱獄してから1年が経ち、これを頃合いと見て全く関係無い悪人がその二つ名を利用して名を上げようとしてるんだよ。

現在確認出来ている中でも4人の紅眼が各国に存在しているね」



あ~これはあれか。俺が自分の名を含めて一切何も話さなかったから二つ名だけが一人歩きした結果か。


そういえば罪人塔管理のロウゼル、元気かな……?



「まあ、紅眼の事はいい! それよりも楽しく飲もうクロ!!」



「はいはい、分かったよー」



「俺は君とは仲良く出来ると感じているぞ! クロもそう思うだろ!?」



そういえばこうして気軽に話せる友人はいなかったなぁ~俺って意外と寂しい人生を送ってるのかも。



「よし、ゼオ! 今日は飲み明かそう! 二日間なら俺はこの都市にいるからな!」



こうして二人は親交を深め、そして酒に呑まれていった――




翌日、酷い二日酔いに襲われ、何も出来なかったのは言うまでもなかった。




そして二日目――



今日は夕刻にミリアレアさんの所で服を受け取る予定だ。


クロビは昨日何も出来なかった分、早朝から宿の外にある空き地で槍術の鍛錬をしていた。


バンディットモンキーとの戦闘が良い経験になったクロビは黒棍に重力の魔術を施し、


ブン、ブン、シュッ!


と、上段・中段・下段とそれぞれの型に習って振るっていく。


慣れて来たら更にその速度を上げて、身体全体に負荷を掛けていくのだ。


筋力と速度を上げるには最高の鍛え方だ。


しばらくして、クロビは後方から視線を感じて振り向いてみる。


すると、そこには酒の席で親しくなったゼオが立っていた。



「やあ、おはようクロ。 朝から物凄い過酷そうな鍛錬をしてるね」



「おはよう、ゼオ。 鍛錬は癖みたいなものだし、強くなるに越した事はないだろ?」



ゼオは確かに!っとに笑みを浮かべながらクロビに近づいて来た。



「クロは槍術使いなのかい?」



「まあ、槍術ではあるけど、今は棍法かな? と言うか、どっちも混ぜたやつか?」



「棍法? 聞いた事ないな」



元々、実父である刀祢は東方国の武人として、剣ではなく槍を用いた戦いを好んだ。


しかし、槍術はリーチもあり広範囲での攻撃が重視される為、戦など敵味方が入り乱れる場所ではそれも考えて戦わなければならない。


また、柄が長い分、接近戦には不利な武器でもあった。


だから刀祢は槍術の他に接近戦を補うべく、古武術も取り入れるようになる。


昔から東方国の一部の街では、槍ではなく棍や様々な武器を用いた古武術が存在し、それを槍でも取り入れる事で槍術の達人へと呼ばれるようになったのだ。



「だから相手の力を利用したり、受け流したりしながら倒していく武術を棍を使っても出来るようにした。 それが棍法だ」



「なるほど、と言うかクロは東方国の出身だったのか。 まあ黒髪だから予想はしてたけど」



「まあね。 あまり記憶にないけど」



実際に住んでたのは8歳までだし、あまり外には出なかったからな。



「ちなみに、古武術には“勁”っていう技法があるよ」



「ケイ? それはどういうのだい?」



流石は他国に興味津々のゼオだな。


クロビは庭に埋まってる大きな石を見つると、足を肩幅に開き、真っすぐ手を伸ばして手の平を当てる。


そして、「破っ!」っと気合を入れると、その瞬間にドンっとクロビが立っている地面に小さなクレーターが出き、手を当てた石が粉砕された。



「なっ! クロ、石が割れた!? どうなってる!?」



「これが“勁”だよ。 丹田から氣を全身に巡らせて最小限の動きで放つ」



これを棍を使って行うのも棍法の一つである。



「もはや旅人とは思えない力だ……いや、だからこそ、そんな逸材と友人になれて良かったのかも」



「そういえばゼオは何の武器を使うんだ?」



「あぁ、私はこれだ」



そう言ってゼオは腰に付けた大き目のポーチから魔導銃と一本の剣を出した。


剣は騎士などが扱うロングソードではなく、剣より短くナイフよりは長目の細い剣。


魔導銃は通常両手持ちが基本だったのだが、こちらは片手で扱えるサイズに改良されたものだ。



「私は銃と剣の両手持ちで戦うのが基本だ。 だから剣も短めで魔導銃も片手用と小さい。 ただし、この銃は魔散弾を使用している」



まさかこんな所で魔導銃を目にするとはな……クロビはそれを感慨深い表情で見つめていた――


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