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黒き復讐者の交響曲  作者: Rさん
第Ⅰ章 ~ゴルデニア大陸編~
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別れとギルド

「おぉー! ローダンって結構栄えてるんだな!」


東方国では住んでいた街以外は記憶もないし、ルーセル領やカルネールでも基本的に行動範囲が狭かったクロビは、発展してる街を見るのは実質初めてで高揚していた。



「クロ、はしゃぎ過ぎよ! 皆見てるし……ここは鉱山があるから、採掘業が盛んなの。 まあ住人は基本的に男くさい連中と、その家族が多いわね」



鉱山から取れる金や銀などの金属はお金になり、鉱石類いは武具や生活道具などの産業資材になるのだ。


そして、魔道具の源となる魔鉱石やその原石がこの大陸では何より重要な素材となる。

また、ローダンから採掘された物資は各国へも流通する為、運搬用としてこの土地には駅を建て、魔導列車の停車都市にもなっている。


そう言った意味でも、ここはゴルデニア大陸の要と言っても過言ではない重要都市なのである。



「確かに筋骨隆々のおっさんが多いな! これじゃあカレン、恋人とか見付けるの大変なんじゃないか?」



「なっ!!? 何言ってんのよバカ! デリカシー無さ過ぎ!」



ぐはっ!っとクロビの腹にカレンの鉄拳が打ち込まれた。

魔力のコントロールは教えたけど、魔力を込めた拳はマズいよ……俺じゃなかったらその場でKOだ。


それにしても……カレンって意外と初心なのかも、とクロビは悪戯な笑みを浮かべてカレンを見た。



「何よ? べ、別に恋人とか求めてないし。 今は商売が大事なの! わかった!?」



「はいはい、すいませんでしたー」



ディルは二人のやり取りを柔らかい表情で見つめながら、しばらくして目的地へと到着した。



「クロさん、ここまで本当にありがとうございました。 あなたのおかげで楽しい時間も過ごせましたからな」



「いえいえ、俺も無一文から助けて頂けて感謝します」



「商人はお互いにプラスになってこそ、いい仕事が出来るものです」



クロとディルは熱く握手を交わし、これで臨時だが任務完了だ。



「そういえばクロはいつここを立つ予定なの?」



カレンは少し寂しそうに質問をした。



「そうだな、今日はもうすぐ日も沈むから、明日には出ようかと思ってるよ」



「そ、そうなんだ……」



「カレンにとっても良い出会いになったと思います。 娘の楽しそうな顔は久々でしたからね」



「ちょっ、お父様! そんな事ないわよ! 私は仕事が一番の楽しみなんですから!」



「まあ、またどっかで会えるだろ!」



「そ、そうね……そうだといいわ。 クロ、ありがとう。 仕事しながら魔術もちゃんと学んでみるから!」



「おう!次あった時の楽しみにしとくよ。 じゃあ俺はテキトーに宿でも借ります。 二人とも、お元気で!」



そう言ってクロビは宿を探す為に人混みへと消えていった。



「カレン、人の輪や縁は必ず巡って来るものだぞ」



「そうですね。 クロ、また会いましょう。 必ず……」




※ ※ ※ ※ ※




日も沈み、ローダンの繁華街は魔道具の明かりが照らしている。


既に労働者達は仕事を終え、ワイワイと一日の疲れをエールで流し込んでいるのだ。


その頃クロビはギルドに寄っていた。


ギルドは各都市や街に支部を持ち、一つの大きな建物の中に『ハンター・商業・産業・薬業』の四つの部署に分かれている。



「いやー参った。 ここの宿泊費用意外と高いのな……」



宿で一泊分の部屋を借りたのだが、思いの外費用が嵩み、列車と船の費用が不足する状況へと陥っていたのだった。


故に、この状況を打破する為、クロビは道中で狩った魔物の素材を売ろうと赴いた訳である。


実は道中でディルが欲していた素材とは別の素材もこっそりと集めておいたのだ。



「すいません、魔物の素材を売りたいんですけど~」



「はいはーい、買い取りですね。 ちなみに、ギルド登録はされてますか?」



ギルド登録とは、ハンターや商人などを始める際に登録する要は職業証明だ。



「いえ、特にはしてないんですけど、買い取ってくれるという事だったので」



ここに来る前、宿の人に素材は登録してなくても売れるのか、聞いてみた。

情報は大事だからな。



「大丈夫ですよ。 ただ、登録していない場合は買い取りの仲介料として2割り程頂きますが、宜しいですか?」



受付の人は丁寧に説明してくれたので、「大丈夫です」と伝え、素材を出した。



ちなみに、俺は腰に黒いポーチを付けている。

このポーチには『空間』の魔道具が埋め込まれていて、馬車の荷台程の物であれば収納が可能なのだ。


この空間ポーチやバッグは少々値は張るが一般的にも普及している。


勿論、その空間が広ければそれだけ値段も上がるのだが、俺はウーパーさんが使っていたものを改良して自分の物にした。魔道具様様だな。


ポーチに入っていた魔物の素材を受付に渡し、査定を待っていた。


そして数分後――



「お待たせしました。 こちらが今回の素材売却の詳細になりますね」



目の前に金貨や銀貨、銅貨などが並べられる。



「シルバーファングの爪、こちらは1本20ゴルドで20本。 皮は50ゴルドで4枚。

それと小鬼(コブリン)の牙が1本10ゴルドの5本。 大鬼(オーガ)の牙が1本250ゴルドの4本。

最後にドラゴモドキの爪が1本100ゴルドで20本の牙が1本650ゴルドの4本」


「合計で6250ゴルドになります。

で、仲介の2割が1250ゴルドになりますので、5000ゴルドがお渡しになりますね」



ちなみに、この世界の通貨は『ゴルド』


鉄貨が10ゴルド

銅貨が100ゴルド(鉄貨10枚分)

銀貨が500ゴルド(銅貨5枚分)

大銀貨が1000ゴルド(銀貨2枚分)

金貨が10000ゴルド(大銀貨10枚分)

大金貨が100000ゴルド(金貨10枚分)

白金貨は1000000ゴルド(大金貨10枚分)


となっている。



今回は5000ゴルドだから、大銀貨5枚だ。



「ありがとうございます。 助かりますね」



「いえ、こちらこそまさかドラゴモドキを討伐してくれるなんて、逆に助かりました」



「ドラゴモドキって……あのトカゲか!」



「羽の無い大型のトカゲですね。 あれ、ハンターの場合はB級からの討伐になるんですよ」



「そうだったんですね、知らなかった」



確かにデカかったが、動きは遅いし大した事は無かったぞ? でも、一応ハンターの力量と魔物の階級も知識に入れておいた方がいいかな?



「何にせよ、助かりました。 また何かあればいつでもお待ちしております

あっ、ちなみに次に素材を売る時は魔石もあると高値になりますよ」



魔石は魔物の核の部分で、上位階級の魔物や希少種だと相応の値段が付くのだ。


そういえば魔石の事をすっかり忘れてたな。カレンが知ったら発狂しそうだ。

まあ解体するのも面倒だったけど、次からは覚えておこう!


俺は受付嬢に頭を下げてギルドを後にした。


さて、もう時間も遅いからな。


とりあえず宿に戻って明日に備えるか。


クロビは宿に戻り、部屋のベッドで眠りについた――


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