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湿度と体温と温もり

作者: つぶやくゆうき

18時25分。


仕事が終わり、身支度を終えて外に出る。

待ち構えているのは湿気った空気と雨模様。

今の季節が梅雨だとしても、この空気を許すことは出来ない。


否、赦してはいけない。


「何を大袈裟に言ってるんだ、たかだか雨が振ることが多くて日の目を見れていないだけだろう。」

と同僚は笑い飛ばすが、その返答すら煩わしくなるぐらいにこの季節は苦手だ。


歩く度にまとわりついているのが分かる湿気に、周りを囲んでいる雫。極めつけには無数の地雷を陸に貼り付け、車の往来を気にしながら、時には必死で避けなければならない。

こんな、地上から天空までを覆う天候には仕事で得た疲労を倍増させる効果がある。


だが、ここまでは多くの人が共通項として持ち得ていると思う。そして、それを我慢している人間や気にしていない人間が多いため、私もぐちぐちと言わない。

本題はここからなのだ。


家に帰ると待ち構えているのは、密閉された空間で仕方なく部屋に干している衣類と、待ってましたと言わんばかりに熟した湿気。

そして、ベッドに横たわって生気のない目で携帯を弄る嫁。


そう。ここでの本題は、湿気が苦手な嫁を看病しつつ家事をするお仕事が待っていること。

つまり、家に帰ることはタイムカードを再度押し、睡眠と同時に切られることと同意なのだ。

梅雨の間はこのような事が多いため、少し憂鬱だ。


とはいえ、嫌々やっている訳ではなく、ただ嫁をこのような状況にした湿気に憤慨しているだけだ。

もっと言うなら、嫁がベッドで精神力の回復に努めている間に家事をしなくてはいけないことが結構堪える。


そうして、夕飯作り(嫁は早めに食べていることがほとんどなので一人分)に食器洗い(これも自分が食べた分だけなので一人分)、洗濯物を畳んで(嫁はこの時期は外に出ることを嫌がるため、ほぼ一人分)床に就く。


「今日も疲れた。」そうつぶやくように言うと、

「いつもありがとう」と返事が来る。

「そんなことはない。いつもやってくれているんだから。こちらこそいつもありがとう。」と会話を続ければ、

「それでも迷惑をかけていることに違いはないから。」と返ってくる。


別にいいのに。そんな風に言わなくても好きでやっているんだから。と思いつつ、エアコンをドライにしているがために少し下がった室温と嫁の温もりを感じながら、その日の疲労を取り除いていく。


ここまで嫌悪感を丸出しにしているが、この季節は冬の次に好きな季節だ。



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