先輩①
私の名前は下水流銀。皆からギンちゃんと呼ばれる高校一年生です。珍しい名前ですぐに覚えてくれるのが特徴だけの女子高校生です。30歳転生じゃないよ。正真正銘の高校生です。
出身地より父親の転勤に付き合わされ。遠くの地で高校を受験し。知り合いのいない中での新生活が始まった頃。私は……部室でくつろいでいた。
「先輩!! 1000文字かけたっす!!」
「うるさい。銀……俺はまだかけてない」
「おっそいすね!!」
「お前が速いだけだ」
「そうっすか~」
5月頃に入学式1週間後から私は文芸部に入部した。文芸部に入部した理由はもちろん先輩に会いたいからである。
「先輩~速く執筆してください」
最近、学生でもネットで執筆した物をそのまま投稿してなんちゃって作家の真似事が出来るらしい。
最初は何も知らずに入部し、そういう世界に入ったのだが………まぁ楽しい。特に今が。
「先輩~先輩~暇っす」
「……飴ちゃんあげるから大人しくしてくれ。今いいとこ……」
「ん~はーい」
先輩から飴をいただく。先輩は私の好みを知っているのかイチゴミルクの飴ちゃんをくれるのだ。
「本当に騒がしいなお前……」
呆れながらもニカッと笑う先輩に私は同じように笑い返す。笑う先輩は本当に格好いいと思っている。
「まぁまて……今からすぐ終わるから」
私は絶対に先輩の事が好きなんだと思うのだった。そんな先輩との出会いとの学校生活の話である。
*
文芸部室はただの空いている教室を使っている。テーブルと椅子しかなく。それもガタガタであり少し誇りぽい。エアコンは古臭い茶色に偏食し変な音を立てる時もあった。そんな教室で私は何人かの部員と一緒に。本ならなんでも持参したり、ネット小説を書いたりしている。
小説家に○ろうと言うサイトは登録するだけで書いて投稿できるのだ。まぁ私は底辺と言われる作者の一人で……先輩も同じようにじゃない……中級作家と言う物らしい。最近になって文芸部員となった先輩。あまり歴はないようだ。
「先輩。最近、何書いてるんです?」
「いつものスライム物を」
「本当にぶち好きやねぇ~」
「………おう」
先輩が首を傾げる。
「ぶちって何?」
「えっ? ぶちって……ぶちええな~っと言う意味っすよ?」
「いや!? ぶちだよ!! ぶちの意味」
「ぶち?……ああ。すごいと言う意味ですよ先輩」
「……お前の出身の方言だよな」
「そうそう。たまに出るんです。気をつけてるんですけど。つい……先輩だと出るんです!! 気にしちゃダメです!!」
「わかったよ。まぁ面白いな……そういうの」
「うーん。変わって初めて知りました。ぶちが全国共通じゃないことを……」
「だろうな」
放課後、先輩の隣の椅子でポチポチとスマホで先輩との出来事をメモしている。
「あっ……先輩のメアド教えてください」
「いいぞ。これ」
「うーん普通」
「なんだよ。お前はなんだ?」
先輩が顔をしかめて私を睨む。それを写メってメールに張り付ける。もちろん、変な顔ですと文を添えるしこっそり待受用に用意する。さすが私は策士。
「送った~あのラ○ン嫌いっすからディスなんたらですけどいいですよね?」
ブブブ
「俺の顔を撮ったの送るなよ……メアド………はぁああああああ!? キャラ名か!?」
「そうですよ~銀ちゃん言われてるのでその近いキャラから取りました。可愛いですし。可愛いですし」
「迷惑メール来そうだな」
「残念。ブロック出来てます」
こっそりといい感じにメールを交換できた。よしよし。
「ふふふ……」
私は周りの視線を感じながらスマホを胸に押し当てる。部活で先輩の隣を陣取りながら。
「あっ……お前。あれ投稿する?」
「なんです?」
「あれだよあれ」
「先輩~まだ以心伝心できない」
「ごめん。これ……」
それはある小説大賞の企画だった。知っている企画で私はもちろんと頷く。なお、通らないだろう。有名な所だがptが高い物しか取らないのだ。
「先輩は?」
「書けそうにないから次回の企画を頑張る」
「そうなんですね!! 頑張ってください!!」
私は頷きながら。別に大賞とか書籍化とか気にしてないのを隠す。
何故なら先輩と共通の話題が欲しいだけで頑張っているだけだったから。
「あっ先輩。誤字見っけ」
「……今日投稿したのすぐに見るのな」
「朗読しますよ?」
「それはやめろよ」
「ふふ。はーい」
そんな放課後。私は今日も楽しい時間を今日も噛み締めるのだ。