第五話 家族のような存在
初回のみ連続投稿します。
父の死を伝えてくると思って耳を必死に
塞いでいたが予想外の言葉が
返ってきて戸惑う。
ポカンと化石のように固まるエレノアに
カタストロフはふっと笑みをこぼした。
「このような場で自らが倒した証として王に献上する場合は生首がセオリーですから。
角だけ切り落とすなんて事をすれば
魔王である証をその首から切り落とすようなものです。恐らく勇者達は首を取ることが出来なかったのでしょう。
だから角だけ切って証明を確保したといことです。」
首を献上とかおっかない事を平気で口にするカタストロフに静かに引いたが
父が死んでいないという希望が出てきた事は素直に嬉しい。
封印されているならば解く方法を見つければいいのだから。
「その角私が持ってててもいいかな」
お父様が復活した時に角なしじゃ可哀想だし私が大事に保管しておかなくては。
その思いを察したのか
カスタロフは目を閉じて私の手をひょいとかわしつつ懐に戻した。
「大丈夫よ、無くしたりしないわ」
「いいえ、これはさり気無く
騎士達に返します
私達が封印に気づいたとなれば動きづらくなりそうですからね」
そう言って屈託無く笑う。
カタストロフが満面の笑顔を浮かべる時は
大体悪意がある時だと薄々感じている。
じゃあなんで持ってきたの、
と聞こうとしたが恐らく重要な品を
軽々と奪われてしまった騎士を
嘲笑って小さな復讐をしたのだろう。
こういうのは聞かぬが花だ。
だが父が生きていて良かった、
例え封印されたのだとしても
それでも喪うよりずっとマシだ。
エレノアがほっと胸を撫で下ろしている事に気づくとカタストロフはそっと目尻を下げてた。
カスタロフがずっと父の側にいたように
私にとっても生まれた頃から
身近な存在だった。
父のようで、母のようで、
兄弟のような存在だった。
「ありがとう、カタストロフ」
私はカタストロフに
感謝を込めてお礼を言う。
父の生を教えてくれた事だけではない。
これまでのことも含めて。
カタストロフは私の顔を見て
面を食らったように瞠目すると
すぐに嫋やかな笑みを浮かべる。
「こちらこそ、
生きていてくださって
ありがとうございます」
低く穏やかな声が森の中で響いた後
行きましょうか、という
カタストロフを合図に私達は
森のさらに奥へと足を進めた。
今回少し短いです。