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転生先は魔王の娘でした。  作者: 成瀬イト
逃亡編
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第三話 月の国の騎士

初回のみ連続投稿します。

騎士の服には母のブローチに描かれた紋章と同じ月をモチーフにした紋章がつけられている。


月の国の騎士だと分かるのにそう時間は要さなかった。


すぐに首筋に剣を突き立てられる。

その場に隠れていたのだろう騎士達も集まって5人ほどに囲まれた。


幸い勇者達はこの場にいない

このような罠を作ったのだから目当ては間違いなく私やカタストロフだろう。


剣を突き立てられて寧ろ頭が冷えた。

私は本当に安易だった。


首に微かに触れる刃物よりも

今も感じるこの微弱な魔力の

正体を知るのが怖い。


この場から逃げ出すにはどうするべきか思案していると騎士の一人がエレノアの顔を凝視する。


「銀の髪..もしかして皇女殿下の..」

「まさか..魔王との子か?!」


一人の騎士の言葉に周りが騒つく


「だとしたらどうする...

この場で殺してしまったほうが良いのではないか?」


「いや、仮にも皇女殿下の子だぞ...

捕らえて置けば後々利用できるかも知れん」


「だが..魔王との子だぞ?」


「まだ小娘じゃないか、

うまく洗脳させれば魔物を服従させる事も出来るやも知れん、生かしておいて損は無い」


物騒な話し合いが目の前で行われている中エレノアは横たわる男をじっと見ていた。


なんとか隙を作って逃げ出さなければいけない。魔物に助けを求めようにもこの辺りにいるのは弱い魔物ばかりで勝機が危うい。

エレノアは目の前の騎士の一人を見据える。


エレノアは父譲りの魔力の持ち主であったが

まだ6歳という事もあり魔術を教えられていない為使う事はできなかった。

しかし小さな頃から使える能力があった。

それは魔物を使役する力だ。


今はまだ低級の魔物しか使役する事は出来ないが人間にも使えるのではないかと思ったのだ。


見据える先の騎士が視線に気づく真紅の瞳が一層艶美に煌めくとそれに吸い込まれるように光を失っていく。


他の騎士達は論議に夢中になって

気が付いていない。

捕らえられた時魔術を使わなかったせいか

油断しているようだ。


エレノアは小さく囁いた。


”私を逃がして“


ふと父の言葉を思い出す


『エレノア、本当の使役とは

魔力で無理やり従わせる事ではない。

それだけは覚えておけ』


そういう父の元には多くの魔族が居た

四天王だった魔族達もカタストロフも

父の側にいた魔物達も皆父を尊敬していた。


なぜ今その事を思い出したかは分からないがいつかは私も父のように心から支えられる仲間が欲しいと思ったのだ。


そう思いながらも虚ろに近づく騎士を見ながら自嘲げに嘆息を零す。


首に剣を突き立てている騎士が近づく騎士に視線を向ける。


「おい、どうした?」


“どうしても気になることがあるから

私に渡してくれないか”


そう聞こえないくらい小さな声で囁くと同じ事を虚ろな騎士も言う。


「構わないが..子供だが魔王の子だ、

気をつけろよ」


剣を突きつけたまま別の騎士に

慎重に受け渡される、

そして完全にその騎士に受け渡された時騎士が剣を突き立てた騎士をドンと押し退けた。解放された手から勢いよく

飛び出して逃げる。


しかしピリリと悪寒とともに父の魔力が間近に感じられ振り向いてしまう。


そこにあったのは騎士が掲げた

瓶に詰められた

父の角だった。


「あ....ぁっ」


言葉にならない嫌悪感が

虫唾となって身体中を駆け巡る。

吐き気がするほどの不快感を感じながらも


逃げなくてはいけないのに

その瓶に詰められたものを

真紅の瞳が捉えて離さない。


「父との感動の再会ってやつか」


「化け物が人を操ろうとするからだ」


どこからともなく嘲笑にも似た笑い声が聞こえた。


気づけば応援にきた騎士が到着し、20名ほどに囲まれている。


だがもうそんなものどうでも良かった。

目の前にある父の残骸からは確かに父の魔力を感じる。


違和感はこれだった。

強い魔力は霊魂のようにその場所に残ると言われている。生命力を伴わない魔力とはなんて虚しいのだろう。


それは父の死を知らせるのに

十分な「証明」だった。


「どう....して....」


震える唇を必死に動かしても

稚拙な問いかけしか出なかった。

ただ熱い何かが頬をどくどくと伝っていく。


無意識に腰が抜けてしまっていたのだろう、

誰かが私の髪を掴み起こす。


「気をつけろ!こいつは妙な力を使う!

早くこいつを縛れ!」


騎士が叫ぶと数人の騎士達が群がる


「下賤な人間どもが、

崇高なお方に触れるなど...」


吐き捨てるようなしかし怒気を多く含んだ低い声が響くと焚火の炎が火柱のように渦を巻いて燃え上がるその炎が騎士達を襲うと

騎士達は情けない叫び声をあげる。


気づけばエレノアの眼前に

カタストロフが跪いていた。

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