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転生先は魔王の娘でした。  作者: 成瀬イト
精霊救済編
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第十五話 太陽の国への招待

次の朝捕らえた勇者たちの事情聴取を行った。教団員達は固く口を閉ざしている。呪印も確認されているので、事情聴取は魔力無効化結界の中で行われた。


そして今、悪魔と勇者の事情聴取の最中だ。


「つまりお前の言葉を要約すると、

呪印は魔王の力と勇者の聖剣による力を融合させて出来た呪いであり、

その呪いには二種類ある。


一つは一方的な呪い、つまりかけた相手の言うことを聞くだけの奴隷のような存在を作る呪い。


もう一つは契約による呪い。

これは術者のステータスが高いほど実行に移されやすく、信頼できるものにしか与えられない。


その能力の違いは自身の自由度が高く魔力と呪詛を融合する事が可能なため、

自身の得意とする魔法で呪詛をかけることができる。


竜人族での呪印は水を呪詛化していた、また悪魔であるお前も自身の風の力で呪詛の嵐を精霊の国内で起こした。


これで良いな?」


「あぁ、その通りだ。

だが契約呪印は普通の呪印よりも

かけられた者への負担がでかい。

聖剣の力のせいで魔族の体力もごっそり持ってかれるし、解くだけでも相当な負担だ。

俺様のような強い魔力を持ってなきゃ

あの時一斉に呪印を解放してたとき

死んでたぜ」


「呪印主は誰だ、

お前のように契約呪印の幹部はまだいるのか?」


「契約呪印の幹部は俺以外は

殆ど王宮の面子さ、

太陽国の、な

親玉は当然、分かるよな?」


カタストロフの淡々とした問いかけに、

ニヤリと不遜な笑みを浮かべる。


一方別部屋ではエレノアと勇者が事情聴取を行なっていた。


「太陽の国ソレイツェ王国国王、

それが呪印の主ね」


「その通りだ..

僕はあの王に言われた

もう誰も傷つけない仕事をやると、

給料も破格だったから僕は飛びついた」


「それであなたの仕事はなんだったの?」


「案内された魔術師の施設に行くと

大きな魔法陣があった。

その上に寝かされていたのが魔王だった。

僕は魔法陣に詳しくないが

とても美しかったのは覚えている。

とても緻密で、俯瞰すると太陽のような模様だった。

僕は魔王と逆側に立たされた。

足の下には太陽国の守護神とされている

聖神サンスウェリアの文字が書かれていた。

複雑でよく分からなかったがそれだけは読めた、それからはあまり覚えていない。


電気ショックのような魔力を浴びせられた。

とても不快だった。

頼まれてももう二度とやらないよ、

あんな実験、

手を貸さなければ良かったんだ

分かっていたのに..

僕は、本当に愚かだった」


勇者は眉を潜めてギリギリとはを噛み締めていた。


「お父様も、

同じ目に遭っているのでしょうね..」


エレノアは深く息を吐いた。

お父様は瀕死状態であのような目に遭っている、無事だろうか。

実験に未だ使われ続けていようが

切り捨てられていようが待っているのは地獄だ。胸がズキズキと痛む、喉の奥がきゅうと縮んでいく。


「恐らく国王は魔王を殺さないだろう。

あの男は信仰に狂っている。


今なら分かる、僕は昨日から寝ないで今まであったことを思い返していた。

聞かないふりしてきたことも沢山あった。

都合のいい解釈をして自分を騙したことも両手じゃ足りないくらいあった。


だから、今なら分かる

君は魔王だけど月の国の王女の娘だ。

半分人間で、僕と同じ世界の記憶を持っている。あの王はそういう者を探している。

絶対にあの男に君の正体を晒したらいけない。

あいつに見つかれば君を前魔王の力で

意地でもこちらへ引き込もうとするだろう」


「なぜ信仰に狂っていると思ったの?」


「最初の僕への極端な歓迎や

僕の聖剣の力への執着もそうだけど、


僕が魔王を倒して帰った時のことが大きい。

凱旋パーティ後の見た国の様子は以前と明らかに変わっていた。

市場も商業街も比べ物にならないほど活気付いていた。

貧民街も減り、魔術師達の力も平均的に上がっているようだった。


最初は僕が魔王を倒した影響かと思っていたが君が魔王になってもそれは変わらなかった。


それに僕が帰って来た後の国王の対応も違和感があった。

君を倒せと言って来ると思っていたのに

いうどころか僕はあの儀式に一回出てから解放された。


そして悪魔と共に魔王城へ行けと言われた、悪魔の護衛に勇者を使うなんてあり得ないだろ?

たとえ重要な任務だとしても

こんなリスクのある任務に行かせたんだ。

あれほど最初は勇者に執着していた国王が。


そんな時、風の噂で聞いたんだ神の愛子が神の祝福を受けたのだと。

そして王は王宮や街、農村にまで妄言を吐くものを徹底的に探していた。


違う世界の夢を見るもの

前世の記憶があるもの

人格がまるきり変わってしまったもの

子供なのに達観した言動するもの

捜索の範囲はとても広かった。

そしてそれへの執着は恐ろしかった。

かつての僕へ向けたもののように。


それは全て神の愛子を探すためだったのだとわかったんだ。

ソレイツェ王国には今君と同じ人間が必ずいる。その者が見つかってしまえば

きっと王国は再び君に牙を向けるよ

そして君が捕まってしまえば

世界は全て太陽国の物になるだろう」


エレノアは勇者の言葉に胸騒ぎを覚えた。


私の他にも記憶持ちがいる..?

記憶持ちは気になるが、

国王が見つけるまでいつまでの猶予があるか分からない。

だけどこれ以上あの国王に神の力を悪用させてはいけない。


「分かったわ、恐らくもうすぐソレツェ王国の使者が来るでしょう。

貴方達の連絡が途絶えて不審に思っているでしょうから」


タイミングよくコンコンと

ドアを叩く音が聞こえた。


「ソレイツェ王国の者が魔王様とソレイツェ王国国王との会談を開きたいとのことで迎えを参ったとの事、如何なされますか」


「分かったわ、すぐ行くと

伝えてちょうだい」


耳にヒソヒソと伝言した魔族は

エレノアはの答えに頷くと

足早に立ち去った。


「勇者、貴方の情報は必ず役立てるわ

あとこの太陽国の地図に

魔術研究所の場所や重要な施設があったら印をつけてくれないかしら」


エレノアが地図と書くものを渡すと勇者は手早く印をつけた。

礼を言いそれを受け取り、

従者に面会終了を伝えると

エレノアはすぐに目的の場所へ向かった。


玉座の間に入ると、すでにカタストロフや

護衛のクリストフ達が待機している。

ソレイツェ王国の使者は客室に待機させているとの事だ。


「エレノア様この度の会談、

どうなさるおつもりですか?」


玉座に腰を下ろすと

カタストロフが問いかけた。


「私が直接ソレイツェ王国へ向かうわ

カタストロフ、貴方も来なさい

護衛にクリストフや軍部の精鋭を連れて行く。代わりに竜族や信頼できて力の強い魔族をこの城に召集して。

今この城には勇者がいる、

彼らが城を開けている間に連れ去られる事のないようにするべきね」


エレノアの言葉にカタストロフは頷いた。


「恐らく国王は前魔王様を人質にとって勇者を彼方へ戻す事を提示するでしょう。」


「そうね、

ひとまずお父様の安否が知りたいわ

ただ、魔王は向こうの貴重なカード、

そう簡単に殺したりしないはず。


であればこちらも強気な姿勢で行かねば

向こうの都合のいい様にされてしまう」


それに勇者の言葉が気になる...


「もしかしたら国王は私を試しているのかも知れないわね」


「試す、とは?」


エレノアが眉を寄せて苦々しく微笑むと

カタストロフが訝しむ。


「ソレイツェの国王は記憶持ちを欲しがっていると勇者に聞いたの、

そして記憶持ちはすでにあの王国のどこかにいるという事も。

あの王は私が記憶持ちだと薄々感ずいているかもしれないわ」


カタストロフはその言葉を聞いて

ピリリとその空気を張り詰めた。


「なるほど、であれば

この会談がエレノア様に呪印をかける事を目的としていてもおかしくありませんね」


「えぇ、そういう事ね..」


カタストロフから静かな怒りを感じたが

エレノアはまっすぐカタストロフの瞳を覗く。


「それでも行かないわけにはいかないわ。

人間国と魔王国は一度きっちりと話し合うべきだもの。

大丈夫よ、カタストロフ

こちらもやられっぱなしでは

終われないでしょう?」


エレノアが強気に微笑むと

カタストロフもそれに答えた。


客室で待たせていたソレイツェ王国の使者との謁見を済ませたあと、使者には一度帰ってもらい、一週間後に会談を開くことが決定した。その間に連れて行く護衛の兵の編成や魔王城内の防衛を固めた。


「エレノア様?どうかなさいましたか?」


左官の執務室の扉を叩くと

書類整理をしていたオーガストが驚いたよう目を見開いた。

一時はその任を解かれたが

精霊救済作戦での活躍で

左官の任を再び受け持つことになったのだ。


「貴方、人間国の貴族とも縁を持っていると聞いたのだけど、それは本当かしら?」


「エレノア様のお役に立てることがあれば、なんなりと」


オーガストはその言葉にクスリと含み笑いを浮かべるとエレノアの前に跪き艶美に微笑む。


「貴族のマナーについて教えて欲しいの」


「マナー、でございますか?」


「えぇ、郷に入っては郷に従えというでしょう?

魔王国の王はマナーも知らない野蛮な王だと言われてはこの国の品格が問われてしまうもの。

私はあの国と同じ目線で話をしなければいけないのだから」


エレノアの言葉にオーガストはその笑みを深くした。


「魔王様の仰せのままに、

しかしエレノア様は元々貴族のような振る舞いをされますから習得もそれほど難しくありませんよ」


「そうかしら..」


確かに小さい頃から月の国の王族である母の姿を見て育ったせいか振る舞いや口調は貴族の令嬢のようだと言われる事もあった。


ともかく基本的な所作が身についている分付け焼き刃にはならなそうで安心した。


オーガストからマナーを学びつつ、

ソレイツェ王国国王との会談に備えた。

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