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転生先は魔王の娘でした。  作者: 成瀬イト
精霊救済編
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第八話 悪魔との対面

魔王城の玄関口の広間に

魔族の幹部が両側に列をなして待機させる。

その際奥にエレノアとカタストロフも背筋を伸ばし並び立った。


「そろそろ、約束のお時間です」


カタストロフがこちらを一瞥し、伝える。

カタストロフの瞳に映る自分の姿は

オーガストに変身魔法をかけて貰い

全身呪印が刻まれ黒々と変色している。


無論この場にいる者全てにその魔法はかけられているため、

皆が並ぶとそれなりの迫力があり、

一目でこの状況が異常だと理解出来る。


魔力の強い魔族達は己の力を過信しがちな為

このような武力に物を言わせない作戦は

初めての経験なのだろう。

皆どこか緊張しているようだった。

演技に自信のないものは瞳を閉じさせ

極力動かないよう命じてある。


ギイと重い扉がゆっくりと開かれる。


中から踵を鳴らしながらゆっくりと

一人の男が入ってきた

その後から白いローブを深くかぶった

教団員らしき者達が付いてくる。


その姿にエレノアはどくりと脈が波立った。


その男の容姿は

エレノアの誕生祭でフィリルが変身していた

暗い翡翠の髪に濃いグレーの瞳の男そのものだったのだ。

その時とは違い悪魔らしい角や翼が生えている。


間違いない、あの男がヴィルカーンだ。


ヴィルカーンは城内を見渡すと

片眉を下げる


「へーえ、

本当に征服するとは魔王城も

存外呆気ないものだな


で?どいつが魔王の娘なんだ?」


「一番奥にいる白銀髪の娘だ」


「おい、”です“だろ

精霊王、

お前は一生奴隷だって言ったよな

口の聞き方に気をつけろ

さもなくばお前の命も

精霊の自由も失うんだからなぁ..?」


ヴィルカーンは不遜な態度で

ライリーを睨むと

ライリーは黙って目を伏せた。


ヴィルカーンはふんっと鼻を鳴らすと

不機嫌げに足を進める。


眼前にヴィルカーンが立つと

どきりと身体が跳ねそうになるのを堪え、

エレノアは極力平静を装うように

無機質な人形を演じる。


ヴィルカーンは繁々と顎を指で撫でながら

エレノアを観察した。


「7歳と聞いていたが

こんなガキが魔王ね...

それにしてもこの呪印のかけ方は

心まで縛ったのか?

しかも自我が戻らないほど厳重に、か

つまらない呪印のかけ方をしやがるなぁ」


ヴィルカーンはライリーの方へ向き直り

氷のように冷酷な瞳を愉快げに細め

太々しい笑みを浮かべる


「こいつらが本当に縛られているか

試す必要があるな


ククッ殺し合いでもさせるか?

国王は魔王さえ手に入れば後は

どのように処分しようと構わないと

言っていたしな


女の魔族だけは殺さないでやるよ

俺のおもちゃにしてやるから

光栄に思えよ?


なぁ、何が一番不快か教えてくれよ?

アンタは優しい優しい精霊の王だもんな?


あ、そうだっ

なぁ、アンタが指令を出せよ

この場にいる女以外殺しあって

生き残った奴を俺の奴隷にしてやるからさぁ


つまらなくなったら殺せばいい話だ」


エレノアはその言葉に

沸き上がるような怒りを覚えるが

表に出ないよう必死に取り繕う。


しかしこの状況を何とかしなければいけない。

暫くは我慢出来ているが血の気の多い魔族がいつ切れるか気が気じゃないのだ。


幸いまだ私たちが呪印出操られていると

思ってくれているようだが

いざ指令を出せば一発でアウトだ。


ライリーが指令するとしても

殺し合いを要求されては

出来るわけがない。


ドクドクと脈が上がり、

エレノアの背に冷たい汗が伝う。


「悪い、少し気にかかることがあったから

外の様子を見ていた」


遅れて城の扉を開けたのは勇者だった。

城に入ると軽く右手を上げた。


......フィリルだ。

右手を上げるのは作戦成功の合図。


やはり勇者は日本語に乗って来たようね..

騙すような作戦だけど、

武力行使以外でいい策は

これしか浮かばなかった。


勇者といえど高校生くらいの少年だもの。

この世界で文化的な孤独を感じていても

おかしくない。


それに、父を倒した時のあの歪な笑みが妙に

引っかかっていた。

あの時は特に疑問に思わなかったが

今思うと、あの瞬間あのように

含みのある笑みを浮かるのは

魔族に対して何か別の感情が伴っていたと

思えてならない。


それが迷いであれば

私達にとっては好都合だが。


「えっと..今はどういう状況なんだ?」


勇者が訝しげに問うと

ヴィルカーンが答える。


「こいつらの呪印の効力を確かめようとしてたのさ。

勇者サマは何が望みだ?

女か?それとも血か?

魔族の血なんぞ見飽きてるだろうがな」


ヴィルカーンはククッと

皮肉げに喉を鳴らす。


「お前がどう言おうと

魔族は全員国に明け渡す。

魔力の強い者を使役できれば

国益になるからな。


傷をつければ治癒が面倒だ。

そうならない範囲で

適当に命令すれば良い」


「今日の勇者サマは気丈だな?

聖剣をチラつかせれば

いうことを聞くとでも思っているのか?」


ヴィルカーンは鋭い爪を光の速さで

勇者の喉元に突きつける

すんでのところでピタリと止めた。

勇者はピクリとも動かず

ただヴィルカーンを睨む。


やがてヴィルカーンは

ふっと萎えたように目を逸らした


「つまんねぇ、反応だな

聖剣の味を教えてくれるかと思ったのによ」


エレノアも一瞬の惨事に

目を見開きそうになるが

心の中で安堵の息を吐いた。


フィリルの持っている聖剣は木の枝か何かを変化させた張りぼてだろう。

戦闘にでもなればフィリルが

勝てるわけもない。


はぁ...早くヴィルカーンに隙を作るタイミングを作らなければ。

心臓がいくつあっても足りないわ。

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