表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生先は魔王の娘でした。  作者: 成瀬イト
逃亡編
5/64

第二話 父の片鱗

初回のみ連続投稿します。

「....エレノア様は泣かないのですね」


カタストロフはそうポツリと言葉を零した時

日はとうに暮れていた。


ふと彼の方を見るとカタストロフは私の方を見ずに揺ら揺らと舞う焚き木の塵を目に映していた。


その瞳はエレノアの薄情さを咎めるでも無く

ただ寂しげで自嘲げな色を覗かせる。


困惑げに揺れるエレノアの視線に気づくと

困った様な笑みを浮かべて


「もっと頼って良いのですよ、

貴方はまだ小さな子供なんですから。

ただ..どうしてか急に貴方が大人になってしまった様で悲しいのです」と続けた。


きっと彼は私が心配かけまいと無理をしていると思っているのだろう、

そしてエレノアが急に大人びた事を

うまく甘えさせて上げられない自分の責任だと責めているのだろうと悟る。


しかしそれは少し違うのだ

大人びたのではなく実際に転生前の記憶を取り戻して思考の年齢は確実に上がった。


そんな事を今ここで話せば

父の死で頭がおかしくなったかと余計に心配させてしまうだろう。

そして父が死んだのに涙さえ出ないのは

まだ父が死んだのだと思いたくないからだ。

涙を流す事は父の死を受け入れるという事だから。


私は何も答えられなかった。

ただ無性に確かめたかった。

あの光だけで死んだのだと

認める事は出来ない、

父はもしかしたら生きているかもしれない。

もし生きているならば助けなければ。


そんな事がぐるぐると頭の中で駆け巡るばかりだった。


ふと一瞬だけ本当に小さな、

だけどはっきりとした見覚えのある魔力を感じた。それは紛れも無い父の魔力だった。

多分普通は見逃しているだろう。

だけどエレノアにはそれが感じ取れた。

父の魔力が復活する事を期待して

ずっと鋭敏に探していたのだから。


今思うと恐らく

私も相当参っていたのだろう。

まともな精神状態では無かったのだ。


「エレノア様?何処に行かれるのですか?」


腰を上げた私をカタストロフが引き止める。


「....察しなさいよ

分かってるわね?

恥ずかしいからついてこないでよ!」


暗にトイレに行きたいのだと伝えると

察してくれた様だ。


「....分かりました

早く帰ってきてくださいね、

10分経っても帰って来なかったら

迎えに行きますから

消して危険な事は考えませんように...」


念を押すカタストロフに

分かっているわ、と苦笑して伝えると

私はカタストロフの元を離れた。


カタストロフに伝えたら

恐らく止められてしまう。

彼はとても慎重なタイプだからだ。


それに様子を見るだけ、制限時間は十分だ。

それ以降は私の魔力を探知してすぐに連れ戻されてしまうだろう。


幸い探知したのは近い距離だ。

十分ならば様子を見ることぐらいは

出来そうだ。


早く確認したい


本当に微弱な魔力だった。

何キロ先にいても悍ましいほどに

感じてしまう強大な魔力とは

似つかないほどに、


微かな風で消えてしまう

ロウソクの灯火のような魔力に父が衰弱しているのだと予見する。


早く助けなくては父が死んでしまう。

逸る気持ちが足取りを急かす。


チリリとまた微弱な魔力を感じる。

今度はとても近い。


木々を掻き分け音が出ないように

そうっと近づく、


その場所だけ

木々が仄かに明るくなっていることから

誰かが薪を焚いているのだと分かる。

警戒して口を手で塞ぎながら

息を押し殺して木の陰から確認する。


薪の前で誰かが横たわっている...。

微弱な魔力はそこから確かに感じる。

顔は隠れて確認出来ないが

黒い髪に角が生えている。


あれは父なのだろうか、

魔力は確かに感じるのだ。

だが何か違和感がある。


本物だったら今すぐ助けたいが..

やはりカタストロフを呼んで来るべきだ

そう判断して静かに去ろうとする


その時うぅ..と横たわる男が呻いた

その声に弾くように反応してしてしまい

背丈の高い草を揺らしてしまう。


「誰だ!」


横たわる男とは違う方角から

厳しい口調の声が飛ぶ


しまった...!!!


罠だったと気づいた時にはもう手遅れだった。私の背後で隠れていた騎士のような服装の男に服の襟をがっちりと捕まえられた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ