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転生先は魔王の娘でした。  作者: 成瀬イト
魔王城編
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第七話 灰の瞳の男

数話まとめて投稿します。

イアンは耳元で小さく呟く。

その声はわずかに震えていた。

その言葉にエレノアは蒼ざめて硬直する。


どこに?そう聞く前にイアンが続ける


「黒い服を着て左手に腕時計をつけてる、

暗い翡翠の髪に濃いグレーの瞳の男だ。

腕時計の下に付いていたのを偶然見た。

子供だから油断していたんだろ」


「種族は?」


「ぱっと見じゃ分からなかった。

兄に呼び止められて見失ったんだ」


「カタストロフにも伝えなければ」


「あぁ、今頃兄さんが言ってくれてるはずだ

俺たちも直ぐに見つけて

妙な事をしないか見張らないと

万が一何か起こされたらたまったもんじゃないぞ」


「分かったわ、直ぐに探しましょう」


焦りの色を多く含んだイアンの声に努めて冷静に応えようとしたが少し声が震えた。


大広間は神殿よりか広くないがそれでも

多くの魔族が集まっても十分な余裕があるほど広大だ。


イアンと相談し逆方向から手分けして探す事になったがやはり広すぎる、

そして本日の主役であるエレノアはあまりに目立つ為探すに向いていない。


「ニュクス、お願い」


誰にも聞こえないくらい小さな声で呟くと

影から魔力が遠ざかった。


思った通り、エレノアは広間に戻ると

多くの魔族に声をかけられた。


自身のために集まってくれた魔族達を無下には出来ないため、動揺がバレないように

丁寧に対応する。その間にも気づかれないタイミングで周囲に目を配らせ、

暗い翡翠の髪を探す。

数人見つけたがどれも

グレーの瞳をしていない。


『斜め右、20m先の贈り物の花の裏、

魔王様からは死角になっている

捉えるか?』


ニュクスが念話で淡々と告げる。

エレノアは首を横に振ると

静かな眼差しで足早にそこへ向かう

今ニュクスの存在を公にするのは悪手だろう


首筋に冷たい汗がひやりと流れ

脈打つ鼓動が身体を急かす


あと5mほどのところで


女性の悲鳴が広間中に響いた。


「なんだ、どうした?」

「あっち側から聞こえたわ」


突然の悲鳴に、会場が騒つく。


ハッとして悲鳴の方向を向く、

逆方向の丸テーブル前で青いドレスを着た

魔族の女性が座り込んでいる。


だが傍からゾッとするように背筋をなぞる悪寒を感じ弾かれたように振り向くと

丁度暗い翡翠の髪の男が通り過ぎるところだった。

深いグレーの感情のない曇った瞳が

エレノアを鋭く見据え

瞳の奥には静かな殺気を感じる。


その刹那の間に動転した気を取り戻した時には男は3歩先にいた。


エレノアが慌てて追おうとすると

ニュクスが声をかけた


『追うと女が死ぬ、

女にも呪印がかけられている

追わなくても口封じに殺す可能性が高い」


ニュクスの言葉に凍りつく。

いつの間にかけられた?それとも仲間?


しかし優先すべきは女性の方だ。

呪印を解くには使役して

自ら解かせるしか方法はない。


エレノアは悲鳴をあげた女性の元へと駆け出した。

腰を抜かし、放心状態の女性は何が起こっているのか理解できていないようだった。

女性の両肩を掴み呪印を探すと

首筋のドレスでギリギリ隠れる部分につけられている。

確認した後すぐに使役する為に

女性に目線を合わせる。

真紅の瞳を絡ませるように見つめると

女性は怯えたように体を後退させる、


「いや...いやぁ....っ」


跳ねるように震え上がり

腰を抜かしているのか

逃げ出したいのに出来ない、という様子だ。


「お願い!私の目に合わせて!

私に従って!このままでは死んじゃうわ!」


エレノアが思わず声を荒げるが女は顔を左右に振って目を合わせようとしない。

それに痺れを切らすと女性の顔を無理やり

両手で抱え額と額が当たるほど近くに顔を寄せる。思わず目を見開く女性の所作をエレノアは見逃さなかった。


目を瞑る前に集中力をその一点に注ぎ

刹那の間で使役する事を可能にした。


“解呪しなさい”


エレノアは呟く。

すうと瞳を虚ろにした女性は

静かにうつむくが

首元の呪印は消えない。


解き方を知らないのだ。

エレノアが使役するのを恐れていたため

契約による使役だと勘違いしていたが

イリアのように一方的にかけられたようだ。


「誰か、この人を縛ってくれるかしら」


控えていた護衛が手早く女性の手足に枷をはめた。

今使役を解くことは出来ない。

解けば別の使役主、おそらくあの男に殺されてしまうだろう。


エレノアは護衛に抱えられた女性と共に広間を出た。

使役している相手とは一定の距離から離れると自動的に説かれてしまう。

まだ能力が弱いエレノアは女性から離れることが出来ないのだ。


城の廊下を歩いていると

カタストロフが走ってこちらに向かってきた


「広間に呪印のかけられた物を

探しましたがありませんでした


それとイアンの言っていた特徴の男は

受付時には居なかったという

報告が上がっています

魔王城は身分証明を厳しく取り締まっていますから恐らく魔族の誰かが姿を変えていたのでしょう」


厳しく寄せられた眉間に

伏せ目がちに揺れる瞳は

悔恨の念を覗かせる。


「ひとまず、この女性をどうするかね」


「それならば、魔力無効化の結界内でなら

使役を解いても安全かもしれません。

ライリーが作れます

ですが難しい結界ですので

長くてももって1時間ほどでしょう」


「それでも話を聞くぐらいは出来そうね。

最悪、ライの結界が解かれる前にまた使役しましょう」


カタストロフはエレノアの言葉に頷くと

城内の一室に促した。

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