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転生先は魔王の娘でした。  作者: 成瀬イト
魔王城編
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第二話 新たな魔王の誕生

数話まとめ投稿します。

「ニュクス、まさか貴方寝室までは付いてこないわよね」


自室の扉の前で小さく呟く。


『主のご意向のままに』


ニュクスは念話で答える。

こんな事もできるのかと感心したが、

小さく顔を横に振ると

影から彼の魔力が消えた。


自身の影と話しているようで不思議な心地だがこの分だと自分の最低限のプライバシーは守ってくれそうで安心した。


自室に入ると、

漸く本当の休息を取る事が出来た。




**********************




魔王の即位式当日

エレノアは使用人にドレスを着るのを手伝って貰い。

漆黒の厳かで艶美なドレスを身にまとった。

白銀の髪はおろしたまま軽く編み込み

ドレスと同じ黒を基調とした髪飾りをつける。


鏡の前に佇む姿を自身で確認すると

月夜を纏っているようだと思った。


そのままエレノアは王城の神殿に向かった。

魔王城にはとても大きな神殿がある。

その規模は魔王城の中でも最も広く、

多くの魔物が入ることが出来た。


魔王の即位式ではそこで魔神ノヴルーノに誓うのだ。魔神の祝福を得た魔王は晴れて魔族達の頂点となる。


神殿の前に着くとカタストロフが待っていた。


「とてもお綺麗ですね

よく似合っておられます」


カタストロフは目尻を下げて優しく微笑み

エレノアを賛美した。


いざ神殿の高く聳え立ち

魔物と魔神を模した彫刻のあしらわれた禍々しくも荘厳な扉を前にすると

身の裂けるような緊張感に顔が強張る。


エレノアは深く息を吸うとゆっくりとその息を吐く。そして決心をつけるとカタストロフの方を見上げた。


その姿にカタストロフは雄美に微笑むと

静かに頷き、左右に配置された従者がゆっくりとその巨大な扉を開けた。


広大な神殿を埋め尽くすほどに多くの魔族が中央の真っ直ぐに続く道を囲うように粛然とその場に膝をつけている。


魔族達の発する押し潰されそうなほどの圧力と張り詰めた緊張感に負けぬようにエレノアは真っ直ぐに神殿の先を見つめ、踏み出し、長い神殿の道を悠然と歩く。


その姿を数多の魔族達は食い入るように見つめていた。

多くのものはエレノアを歓迎する面差しを向けるが、ある者は鋭い視線を、ある者は陶酔の色を浮かべ、ある者は含み笑いを浮かべている。

様々な感情を一身に受け入れる小さな背中に

カタストロフはその背を間近で見守ることのできる身に感謝した。


神殿の先の段差を一段ずつ確かに登っていき

その頂に登ると広大な神殿を一望する。


その頭上には魔神ノヴルーノを表す壁画が描かれている。足元には冥界を表す模様が彫り込まれそれを埋めるように白磁の石がしっかりと詰められていた。


背筋を伸ばし魔族達を見つめる真紅の瞳に皆吸い込まれるように刮目する。


新たな王を歓迎するように魔力が踊ると

風もないのに白銀の髪が揺れる

真紅の瞳は月食のように艶美に煌めき

エレノアはその空気を一身に受け入れるかのごとく深く息を吸い込んだ。


「崇高なる魔神ノヴルーノよ

我が名はエレノア、

魔王となって魔族を導き

神の御心のままに祝福を届け

民の安寧を守ることをここに誓う」


エレノアの勇ましくも清らかな声が

神殿中に響き渡る。


魔族達の魔力に呼応するのか

その身の奥から魔力が猛る

静かにそれを鎮めながら


声が霧散していくのをを聞き届けると

その頭上に甚大な魔力の覇気を感じる。

高い神殿の天井よりもずっと頭上、

天がその言葉を聞き届けたかのように

猛烈な魔力の波が降ってくる。


ゴロゴロと暗雲が立ち込めるのが

雨雲の音と窓から刺す光が失われていく様で理解する。


その波がエレノアを包み

己の魔力がそれと呼応し歓喜の猛りをあげているのを感じるとともに理解した。

魔神の祝福を得られ自らが魔王になった事を。


その瞬間、眼前に佇む数多の魔族達の存在がより一層強く感じられることに気づく。

ここにいるものだけではない、

魔王国の魔族達の存在をエレノアは感じ取れるようになった。


エレノアの魔王即位を祝福するかのごとく

雷鳴が響き渡る。


パシパシと点滅する雷光の中

エレノアのその真紅の瞳だけは曇り一つなく

その光景を一望する。


魔王となった小さな少女から発する

猛々しくも烈々たる雄美な魔力に

魔族達は瞠目しごくりと息を飲んだ。


そして確信した。

我々が彼女を王にしたのではない。

彼女は王になるべく生まれたのだと。


一同が唖然とする中、

カタストロフだけはその光景を満足げに

そして誇らしく見守っていた。

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