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転生先は魔王の娘でした。  作者: 成瀬イト
魔王城編
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第一話 魔王城と影の青年

新章です。数話まとめて投稿します。

即位式までに間に合うように

三日ほどかけてエレノア達は新たな魔王城へ向かった。目的地も同じなので竜人族の人達と共に向かうことになった。


エレノア以外は翼を持っていたので道中は殆ど空の旅で、夜だけは降りた土地の種族の宿を借りた。エレノアにとってこれほど長い期間様々な土地を目にする経験がなかったため

非常に新鮮な体験となった。


そしてついに即位式の二日前に魔王城に到着した。

先代の魔王城と言っていたので

廃城のようなおどろおどろしいものを想像していたが、とても綺麗に整備されていた。


縦に鋭く伸びた城の屋根は

上品なシルエットをしていて、

高くそびえ立つ漆黒の城壁は

黒い竜のように荘厳な美しさを秘めている。

敵を寄せ付けまいとする複雑な城郭も

壁の一つ一つが丁寧に整備されて、

魔族達の仕事の手厚さが伺える。


中に入るとエレノアがステンドグラスを好ましく思っていたことを聞いたのか

窓のいたるところに上品に色づけされた繊細な装飾のガラス窓が付いていた。


広い城内には重厚な紅の絨毯が敷かれ

黒を基調としたゴシック調の家具が置かれている。この三ヶ月の間にこれだけの仕事が可能なのは魔族のポテンシャルの高さだろう。


城内には多くの使用人や臣下が既に到着しており、エレノアの到着を歓迎した。


魔王城を整備し、

城内に必要な人材を手配し、

魔族達を迎え入れるための手筈を整える

その殆どがカタストロフの指示であったと知り、彼の有能さを改めて知ることとなった。


使用人から自室だと案内された部屋に入り

ようやく一人になる。

キングサイズのベットには天窓がかけられ

6歳の少女が喜びそうな少女趣味にインテリアが飾られている。


ここ数日は常に誰かと行動を共にしていたため、無意識に気を張っていたのだろう。

疲労感が急に押し寄せ、ふらふらと力の抜けた足取りでベットに突っ伏した。

暫くベットの上で放心していると

トントンと扉を叩く硬質な音が聞こえた。


髪や服を整えて扉を開けるとカタストロフが立っていた。


「カタストロフ、どうしたの?」


「お休みの所失礼します、エレノア様。

急ぎで紹介したい者がいるので

お時間頂けますか?」


エレノアは了承すると、カタストロフが促した部屋へと足を運んだ。


魔王城ではあまり広くない部類の部屋に入るとカタストロフは部屋の扉やカーテンを閉めた。訝しむように首を傾けると、

カタストロフは薄く微笑む。


「もう出てきていい」


カタストロフが呟くと

エレノアの陰から静かに

黒髪の少年が現れた。

手品のような光景にエレノアはビクッと体を跳ねさせ目を丸くする。


影から出てきた少年はエレノアの前に立つと跪いた。

推定年齢は15歳くらいだろうか

父のような漆黒の髪に

アメジストのような紫の瞳を

揺らめかせ試すような視線を向ける。


全身は黒ずくめで

動きやすそうな格好をしている。


一見人のように見えるが

目の前にいるのに気配を全く感じない。

まるで亡霊のようだ。


「お初にお目にかかります、エレノア嬢

俺はアンデッド族の

主に諜報や護衛を得意としております

ニュクスと申します」


「よろしくお願いしますね、ニュクス

今のは貴方の能力なのかしら」


興味津々という眼差しでニュクスを見ると

ニュクスの後ろで様子を見ていたカタストロフが苦笑しながら答える。


「ニュクスは影に隠れる事が出来るのです。

若いですがとても良く動いてくれますし

エレノア様のお役に立つでしょう。

何より魔王に古くから使える信頼できる魔族です。」


「ニュクスを私につけるの?」


「えぇ、これからエレノア様は多くの魔族と関係を持つでしょうが魔族もいい者達ばかりではありませんから。

私もいつもお側にいる訳でもありませんので

小回りのきく護衛をつけようかと思いまして」


「ニュクスは了承しているの?」


「魔王様にお仕えできる事は一族の誇りですから。エレノア様さえ宜しければお受け頂きたいです」


ニュクスは瞳を閉じて僅かに微笑むと

跪いたまま恭しく礼をした

エレノアはまだ少し困惑の念が拭えないが

嘆息して了承した。


「私も年の近い方が護衛の方が緊張せずに済んでありがたいけれど

貴方は凄く仕事が出来そうだから

宝の持ち腐れにならないかしら」


「いいえ、エレノア様ならきっと

彼の良さを引き出せますよ」


カタストロフはそう言って微笑すると

閉じたカーテンを開けようと進む

それを察したニュクスはまたエレノアの影の中に入って行った。


「エレノア様、ニュクスの事は他言無用です。いいですね?

ニュクスが付いていることを知らない方が

色々と粗を見せてくれる魔族も多いですから」


カタストロフはニコッと作ったような笑みを浮かべるとお開きにしましょうと

部屋の外へと促した。


今も自身の影の中にいるかと思うと

あまり心地良い気分ではない。

というか先ほどエレノアの影から出てきたということはいつから潜んでたんだと

問い詰めたい気持ちを胸に押し留めた。


心配性のカタストロフの事だ。

ニュクスをつけた事はエレノアの身を案じたためという理由もあるが、

エレノアの行動を逐一把握するためでもあるのだろう。


ニュクスの主人は現状、

カタストロフだろう。


カタストロフの事は信用しているし

彼の推薦ならばと了承したが

今後私の行動に制限をかける存在になり得ないため、今の内からこちらに取り込まなければいけない。

現状エレノアの周りには

信頼できるというような魔族はとても少ない。それはエレノアが幼い事もあり城内にいたもの以外との関わりが薄かったからだ。

そして城内にいた四天王を含める多くのものが勇者によって命を落とした。


今は信頼できる存在が一人でも欲しい。

ニュクスの事もよく知っておかなければならない。

この章からキャラクターがかなり増えます。

またの機会にキャラクター紹介をまとめようと思います。

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