好きな人
私には、好きな人がいる。彼女は、明るく、可愛く、愛らしい。私は彼女に元気付けられるし、何かあったら彼女に協力してあげたい、助けてあげたいと思う。しかし彼女は、私とは違う。多くの人に好かれていて、支持されていて、愛されている。彼女には居場所がある。私は違う。私にはそんなものはない。私だって人に好かれたいのだ。私だって、私だって…………。
きっと彼女にとって私など、存在しなくても何も変わらないのだ。私の存在の有無は、彼女には何も影響を与えない。私がどうしようと、どうなろうと、彼女は何も思いもしないのだ。辛くなってくる。私がどんなに彼女を必要としても、彼女は私のことなど必要とはしない。気にかけすらしない。醜い嫉妬は、独占欲は、どこへも消えることなく、ただただ心の中で渦巻いている。
私は、彼女が幸せでいてくれれば、それでいいのだ。沢山の人に愛されて、幸せならそれでいいのだ。その幸せを汚すなんて私にはできない。
だからいっそ、私が私でなくなればいいのだ。私が私である限り現状が変わらないのであれば、私は私で無くなればいい。変わるのだ。その為には、先ず自分であることをやめなくてはならない。……大丈夫。やり方は分かっている。
ゆっくりと、椅子を蹴倒した。