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噛むからね?②

 

「えっと、じゃあ行ってきますね?ジャジャとナナを宜しくお願いします」


「おう、任せとけぃ」


「何かあったら私達に電話してね?アオイちゃんと離れないようにするから」


「浩二、大人しくしろよ。何かやらかしたらお父さんにチクるからな」


「にゃあっ!」


「こうちゃんは僕が見てるよ」


 玄関で女の子三人を見送る。


「ほ、本当にいいんですか?やっぱり私……」


「ほらほら、お前の買い物なんだからお前が行かなくてどーするんだよ。チビ達は大丈夫だから、たまには翼を休めてこい」


 実際に翼を持ってるアオイに言う比喩表現じゃなかったか?

 まあ、いいさ。心配するのはわかるけど、息抜きは必要だ。


「わかりました……。お土産、買ってきますね?」


「気にすんなって、行ってらっしゃい」


「行ってきます」


「行ってくるね」


「またな!」


 心配そうな顔のアオイと、三隈と佐伯が玄関を潜り門を抜ける。

 後を追って俺も外に出て、道路に出るとその姿を見送る。

 何度も後ろを振り返り、やがてその姿が見えなくなった。


「んっとに、心配性なんだから」


「しょうがないじゃん。ジャジャとナナを置いていくの初めてなんだから」


 俺の言葉に、翔平が答える。


 すでに五月も終えようかという日に、俺はアオイに休日を作る事にした。

 毎日毎日双子達の面倒と家事を頑張っているアイツにも、休みは必要だと判断したからだ。

 名目上はアイツの服と日用雑貨の補充だ。

 そもそもアイツの持ってる服は少ない。

 パジャマを含めても一週間もルーティーンできないぐらいしか持ち合わせてなく、俺の大きめのシャツやトレーナーを渡していたのだが女の子にそれは余りにも酷だ。

 なんせ俺にはセンスという物が無い。

 俺の持ち合わせている私服の色が、黒で統一されているのを見て察して欲しい。


 なのでアオイのセンスで好きな服を買って貰おうという計画を立てた。

 我が家に余裕があるわけでは無いので、自分の好みの服を買って貰うために先月から頑張って節約をしてきた。

 俺の金とアオイの小遣いを足せば、それなりの服を2.3着ぐらい買えるだろう。

 しかし、休みをあげたからと言っても俺がアオイに付き添う訳にも行かない。

 チビ達の面倒見なきゃ行けないしな。

 そもそも俺に女子の買い物に付き合えるほどのスキルは無い。

 そして、根性も無い。


 あれはこの世の地獄だ。

 毎回女の子のお買い物に着いていけるイケメン男子に素直に尊敬の念を送らせて頂きたい。


 ぼくにはむりです。


 なので、ここは同じ女子の助けを借りようと、三隈と佐伯に頭を下げた。

 快く引き受けてくれた二人の分の昼飯代は、同じく俺の小遣いからなのは内緒だ。

 お陰で俺は来月までひぃひぃ言わなければならない。

 まあ特に欲しい物もないし、良いんだけどさ。


 しかし小遣い頼りなのは本当に、情けない限りである。

 実際問題、親父の稼ぎとこの家のローン、俺たちの学費と生活費から考えると、実は我が家はカツカツだ。

 翔平の見事なやりくりで乗り切っているとはいえ、俺もバイトを考えなければならない。

 ジャジャとナナの為にも、俺は働くですよ!



 さて、初めてママの居ない日を迎えた双子達だが、最近は夜の授乳以外は粉ミルクと少ない離乳食を与えるようになった。


 人間の乳児の成長過程を少しだけ参考にしてみている。


 本当はアルバ・ジェルマンのヤツに意見を聞こうと思って居たのだが、最近姿を見せないのだ。

 牧場から戻った翌日、ウチのポストにヤケに達筆な手紙が入って居て、そこにはこう書かれていた。


『ここに向かってる龍の娘、どうやら迷子になっている模様。道案内がてら迎えに行くので、一月程留守になる。双子達は順調そのもの。そろそろ粉ミルクを与えてみるのも良いかもしれない。人間の部分がどう作用するのかわからないので、慎重に行う事』


 ……こういう部分のアイツはヤケに律儀だ。

 こう、なんていうか、切迫せっぱ詰まりかけている時に最も必要としてる情報をやんわり教えてくれる感。

 その癖、少し気になっている事や、知らなくても普通に生活できそうな事は一切教えてくれない。


 そんなところもムカつく。


「兄ちゃん、僕達ももう出かけるんだけど、本当に一人で大丈夫?」


「にぃ」


 見送りを済ませて玄関に戻って来ると、翔平と浩二が玄関に置いてあった鞄を背負った。


「宿題済ませに図書館行くんだろ?大丈夫だから行ってこいよ。あとでユリーさんも見に来てくれるらしいからな」


「うん。ありがと。お昼は冷蔵庫に入ってるからね?」


「おう、サンキュー」


「ゆあ、うぇるかむ」


 そう言って再び玄関を出る。


「行ってきます!」


「にゃあ!」


「行ってらっしゃい」


 元気良く飛び出して行った小学生組に手を振って、ドアを閉めた。

 ちなみに親父は外せない接待とかで朝早くから出て今頃ドライバーを振っている頃だろう。いや、もしかしたらバックを担いで『ファーーーっ!』と叫んでいるかもしれない。

 大変ですな。頑張れ、超頑張れ。


 さて、ジャジャとナナは朝ご飯後に眠りに就いた。

 洗濯機もさっき鳴ったアラームで終わったようだし、天気も抜群に良い。


 いっちょパパッと終わらせて、お昼は優雅に過ごしますか。


 小さな鼻歌を歌いながら、俺は廊下を歩く。

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