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ご近所ダンジョンを踏破しよう!②

 

「んじゃあ!まずはネズミ探してくる!」


 アオイやユールは飛んで行ってしまったが、ネズミは普通に徒歩で部屋を出てったからな。

 正直俺の悪い頭では、あの急すぎる一連の流れに違和感しか覚えてない。

 あのスカした野郎に全部説明させてやる!


「僕はずっとこの家にいたけどね」


「はぁ!?」


 キッチンのカウンターに、モコモコのネズミが立っていた。

 杖を片手に、またも煎餅をカリカリと齧りながら。


「おっまえ、この野郎!」


「少し決断が遅いんじゃないかい? 心配したなぁ」


 なんの話だ!


「さあ話せ!全部話せ! あのムカつくババアの事全部だ!」


「落ち着け馬鹿」


「へぶ!」


 親父に頭を叩かれた。


「君達親子は面白いなあ」


「そいつはどうも。んでアルバ・ジェルマンさん? アンタ、コイツに一体何をやらせたくて仕組んでんだ?」


 ケラケラと笑うアルバネズミに、ヘラヘラ笑う親父。

 翔平が不安そうな顔でそれを見ている。


「いやあ、バレちゃったかい?」


「そりゃあな、聞いた話だけならすぐに」


 何が?

 俺は本当に意味がわからない。


「このネズミ、龍の事については嘘は言わないんだろ。それじゃあ、お前と双子を引き離す事はしないと思うんだよ。お前を授乳に立ち会わせたのコイツだしな。それに双子の父親がお前で良かったとも言っている。尚更だな。んで本心はどうなんだ?」


「僕は最初から最後まで変わらないよ。あの双子の側には、君が居ないといけない」


「じゃあ何で! あの人を焚きつけた!」


 そもそも、コイツが人間を食わせば良いとか言ったから!


「話をちゃんと聞いてたの?僕は気が乗らないって言ってたじゃないか。双子にも色んな弊害が出るし、アオイが嫌がるともね。あれはどうしようも無くなった時の最終手段さ。例を挙げるなら君が死んじゃった時とかね」


 いっ、言ってた気がするが。


「正直に言えばね。あの場で僕にユールを止める手段なんか無いんだよ。僕が期待してたのは、君とアオイがユールを追い返してくれる事だ」


「あの人を追い返すって!?どうやってだよ!?」


 お前見てただろ!部屋の中を吹き荒れる暴風を!


「なあ、その、ユールさん。なんでそんなに急いてたんだ?」


「へ?」


 親父の問いに、耳を傾ける。


「いや、最初からずっとそうだろ。チャイム連打から土足で家に上がり込んでくるところ、アオイちゃんに決断を急かしたところまで。変に人間のルールを守りつつも、守りきれてない」


「え、だってそれは」


「お前が言う暴君キャラだとさ、扉ぶっ壊して勝手に入ってきて、サクッとお前殺してアオイちゃんと双子を連れて行く方が自然なんだよね」


 い、言われてみれば。そんな気もしないでも無い。


「人間嫌いなのもそうだけどさ。薫平が死んで無いって事は、少なくとも殺したいほど憎んでないって事だろ?」


 考えてみる。

 俺を直接脅したのは二回。


 階段を登ろうとした時と、反論した時だ。


「ん、俺が、止めたり話を遮ったから、話を巻いた……?」


「だーいせーいかーい!いやあ、そうだねぇ。普段のユールならもう少しおとなしいんだけどね」


 杖を大げさに降るアルバ・ジェルマン。

 いちいち反応がイラつかせるなこのネズミ。


「あの時のあの子、切羽詰まってて余裕が無かったんだよね。何せ今朝方この町に到着して、そのままここだ。アオイがキチンと違和感に気づいてくれたら、まずはベッドで休ませてくれると思ったんだけど。あれよあれよと話が大きくなるじゃない?どうしようかと思ったよ」


「へ?」


「いやあ、あんだけ満身創痍なユールなら、アオイでも簡単にあしらえると思ったんだけどね。久々に会えて舞い上がってたアオイには気づかなかったみたいだね」


 満身創痍?

 あれのどこが?


「君を吹き飛ばしたのだって、本意じゃないよ。普段のあの子なら加減を間違えるなんてありえない。仮にも龍王だし」


 そう言えば。


『死なないように手加減したつもりだし、殴らずに風で体を揺さぶって気絶させようとしたんだがな。加減が効かずに吹っ飛ばしちまったが、ちゃんと着地は補助してたから、大した怪我はしてないだろ?』


 そんな事も言ってたな。


「それに、冷静に考えたら、あの子がアオイと双子の面倒を見るなんて不可能なんだよね。龍王として空の調整が山程残ってるし、すんごい疲れるんだ。襲撃者を仮定するのなら、あの子がその相手をしてる余裕なんて全然無い。世界中飛び回らなきゃいけないしね」


「それがどんだけ大変なのかはわかんねぇが、薫平や俺たちがいる分ここで育てた方が良さそうには聞こえるな」


 なあ、待って。

 今の話だと、ユールはだいぶ考え無しに行動してて、最もらしい事を言って俺たちを煙に巻いたって事になるんだけど。


「切羽詰まっててって、何でだ?」


 そこが分からないんだ。


「単純に、仕事で疲れまくってて、立つ事すら億劫なんだと思うよ?ここに来る前もアメリカで色々してたみたいだしね。実際他の龍王達もかなり忙しいみたいでさ、みんな睡眠時間削って働いてるんだよね」


 それは、つまり。


「今のあの子、娘と孫の可愛さや、疲れて働かない頭のまんま行動してるんだよ。要するに、暴走してるの」


 な、な?


「何だよ!それは!」


 俺の絶叫が、ダイニングに木霊する。

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