表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
39/201

マザー・ユール③

 

「客を待たせるとは、どういうつもりだ」


「はい?」


 我が家の玄関に、物凄い美人が立っていた。

 人間離れした美貌の持ち主が、偉そうに腕を組んでふんぞり返っている。


 陽光に照らされた透き通るような青い髪の毛は額で綺麗にまっすぐ揃えられていて、後ろは腰まで長いサラサラなロングヘアー。

 大胆に胸元を露出したドレスは大きなスリットが入っていて、艶かしい生足を惜しげもなく晒していた。

 身長は俺と同じぐらいで、腰なんて折れるんじゃないかと心配するぐらい細い。

 何より目を引くのが頭の両側に生えている大きな白い角と、背中から覗く太い尻尾だ。


 まるで一枚の絵画を見ているような感覚。

 そこに立つ人物は、現実感を喪失させるほど美しかった。


「おい聞いてんのか」


「あ、あの、どう言ったご用件で」


 美女が俺を呼び覚ます。

 危ない危ない。

 あまりの光景に一瞬我を失っていた。

 ちょっと待てよ。角と尻尾?


「入るぞ」


「え?」


 突然の言葉に呆気に取られた俺の隙をついて、玄関を通り土足で家に上がりだした。


「え、あの、おい、おいって!」


 余りにも自然な動作に、思わず黙って見送ってしまった。

 え、最近の強盗ってこんなクオリティ高いの?

 こんな美女が押し入り強盗とかしてるの?


 じゃねえ!

 突然の出来事に体が凍りついてた!なんだあの人!


「な、何やってんだアンタ! 警察呼ぶぞ!」


 俺は慌てて駆け寄り、強盗の右腕を取る。


「うっせえな。寝てろクズが」


 清楚な容姿からは想像もつかなかった乱暴な口調で悪態をつき、掴まれていない左腕を振るった。


「がっ!」


 一瞬、何かに激しくぶつかった。

 体が吹き飛び、景色が猛スピードで流れていく。


 気づいた時には家の前の道路に横たわっていた。


「くっ、ゲホッ! かはっ!」


 揺さぶられた頭が、視界をぐるぐると回す。

 全身に痛みが走り、続いて肺から登ってきた空気にえづいて吐きそうになる。


「な、何が」


 意味がわからない。

 家の玄関からここまでは、まっすぐ3メートルはある。

 あんな華奢な腕で、俺をここまで殴り飛ばしたって言うのか!?


「と、止めなきゃ」


 混乱する思考でも、放っておくとマズイのはわかる。

 クラクラと目眩を起こしながら、なんとか起き上がり家へと戻る。


 脳裏に浮かんだのは、ジャジャとナナの卵を盗んだ誘拐犯達


 まさか、ここにあいつらがいるのがバレたのか!?


 急いで門柱をくぐり、玄関にたどり着きスリッパを脱いで中に入る。


「……しぶといなお前」


 女はダイニングにいた。

 特に何も触らず部屋の真ん中で何かを探している。

 俺の気配を感じ取ったのか、振り向いて眉間にシワを寄せた。


「な、なんなんだアンタ!」


 余裕たっぷりなその態度に、俺は混乱している。


「ああ? なんでお前にそんな事教えなきゃいけねぇんだ。死にたくなかったら黙ってろ」


 俺に興味を一切持たずに、女は部屋の中を見渡す。


「……………上か?」


 その言葉に、心臓が跳ね上がった。


「……何を探してるんだよ」


「黙ってろって言ったよな」


「お前!何者だ!」


 俺の言葉を待たずに、女は右腕を振り上げる。

 俺は咄嗟に腕を交差して顔を守った。


「うぉっ!」


 同時に俺の体に、突風がぶつかる。

 あまりの勢いに体が浮き上がり、大きな音を立てて廊下の壁に激突した。


「だはっ!」


 残り少なかった肺の空気が、一気に喉を突き抜けて口から出る。


 そのまま手をつくことすらできずに、膝から順に折れるように倒れこむ。


「なっ……がはっ……っ!なんっ……なんだよっ……」


 霞む意識を無理やり掴み取り、なんとか気絶を防ぐ。

 頭は更に揺さぶられ、視界はチカチカと明滅を繰り返していた。


「丈夫なんだな。親に感謝しろよ小僧」


 聞こえてきたのは、何も無かったかのような強盗の声。

 そのまま女は倒れている俺の横を通りすぎようとしている。


「ま、まてっ……っよ!」


 渾身の力を込めて腕を動かし、上体を起こした。

 ガクガクと震える脚を気合いで抑えて立ち上がる。


 俺を通り過ぎて背中を見せた女に近づき、肩を掴んだ。


「……本当にしぶといな。お前」


 振り返った女は面倒臭そうに溜息を吐いた。


「この手、今すぐ離さないと焼き殺すぞ?」


『薫平さん!何かあったんですか!?』


 女が俺を睨みつけた時、二階からアオイの声が聞こえてきた。


「アオイ!来るな!ジャジャとナナを連れて逃げろ!」


 声を張り上げた。

 この女の狙いはアオイ達だ。

 空を飛べるアオイなら、チビ達を連れて逃げられる!


「アイ……」


 へ?


「ああ、元気そうだな……」


 女は二階を見上げて、嬉しそうに笑った。

 あれ?

 なんか違う?


「薫平さん!大丈夫ですか!」


 階段の踊り場に、アオイが姿を現した。

 パジャマのまま、慌てた表情で身構えている。


「アイ!私の可愛い宝石!」


「薫平さ………アイ?」


 アオイが固まったまま動かなくなった。

 アイって確か、アオイのちっさい頃の名前じゃ……。


「悪い!遅くなった!」


「え……あれ?」


 固まったままのアオイに、女が近寄り両手を広げる。


「ただいま!母さんが帰ったよ!」


「かあ……さん!?」


 え?


 母さん?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール

作者の別作品です!!



書籍1〜2巻、コミックス2巻は2019年12月24日発売!
帰宅途中で嫁と娘ができたんだけど、ドラゴンだった。


可愛い使い魔達とのんびり異世界ライフ
天騎士カイリと無敵に可愛い天魔パレード!

ハードな現代ファンタジーが読みたいなら
トーキョー・ロールプレイング~クソゲーと化した世界で僕らは明日の夢を見る~

えっちなお嫁さんは嫌いですか?
鬼一族の若夫婦〜借金のカタとして嫁いで来たはずの嫁がやけに積極的で、僕はとっても困っている〜

問題だらけのハーレムを従えて、最強の人狼が借金返済にひた走る!
騙されて多額の借金を背負った人狼、最狂のハーレムクランでのし上る! 〜火力が極限すぎてえげつない〜

あっちにもこっちにも勇者ちゃん!高校生エージェント、猟介の苦難が止まらない!
勇者ちゃん、異世界より来たる!〜とんでも勇者の世話をすることになったんだが、俺はもうくじけそう〜
よかったらどうぞ。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ