衝突世界のお役所事情③
全然、納得はしていない。
だけど、聞かなきゃ始まらない。
「それで、あいつらはこの町じゃ生活できないんですか?」
そう、それが一番重要な事だ。
俺は涙を拭ってドギー巡査を見る。
「まさかっ!追い出したりなんて!」
「でも、龍が居る事が知れたら……」
命すら危ないかも知れない。
ドギー巡査は大慌てで首を振った。
よく見れば、犬の尻尾がお尻にあって、ピンと伸びている。
「話は最後まで聞いてってば!いい?署長はこの事を徹底的に揉み消すと決めたの!警察機構としてはしては行けない事だけど、彼女達の安全と秤にかけたら、些細な事だわ!それで、私と井上巡査と、あと四人であなた達の生活の補助をする事になったのよ!」
「へ?」
あれ?
「あの誘拐犯達だって、別件をこじつけて逮捕したの!『特殊魔法具ならびに銃刀法違反』っていう、最もらしい罪状でね!」
あ、バズーカとかナイフ……。
「大変だったんだから!彼らは西日本トレジャーハンター協会認定の歴とした国家資格なんて持ってるもんだから、『申請区画外における特殊具、又は特殊効果具の故意の不正使用』なんて、犯歴の無い条例まで槍玉に挙げて!生命の危機だったって事で、罰則自体は一ヶ月の軽い勾留と罰金、半年のダンジョン利用の禁止程度しか課せられなかったけど、それでも昨日は協会のお偉方と署長は大ゲンカよ!さっきまでその令状を裁判所に出させるって、私達おおわらわ!」
な、なんか急に分かりづらい話になったぞ?
「に、西日本トレジャー……何です?」
「西日本トレジャーハンター協会!関東より下の地域のダンジョンを利用する場合、身体を守る為の武器や魔法具を運んだり使ったりする時はこの協会の認定と免許が必要なのよ。世界衝突が起きる前はトレジャーハンターなんてアウトローの代名詞だったけど、今の日本は異種族共存の模範モデルって呼ばれるぐらい法整備が整ってるから、ダンジョン探索にもルールがあるの」
だ、ダンジョンって財宝が眠る不思議な場所って認識しかなかった。そんなややこしい事になってるのか。
「それで、私達が定期的に巡回したり、相談に乗る事で彼女達の安全を守るって事になった訳。安心した?」
あ、安心どころじゃない。
身体の力が抜けてしまった。
「で、でも。アオイ達の姿を見たらバレちゃうんじゃ」
角と尻尾と翼!
あれは隠しようが無いじゃん!
「何も知らない不器用君に、このアルバ・ジェルマンが教えよう!実は角や尻尾、そして翼を持つ種族って数え切れない程いるんだよね!魔族って知ってるかい?」
な、なまえはしってる。
「知らないみたいだね」
だから、名前は知ってる!
「ここより南、君たちのよく知るオーストラリア大陸の西に移動して来た、その名も球大陸!全てを土のドームに覆われた巨大な大陸を生息地にした、暗所を好む魔法種族!それが魔族さ!」
きゅ、球大陸は授業で習ったぞ!
オーストラリア大陸の1.5倍ぐらいある、ほとんど丸に近い不思議な大陸の事だ。
「そして、この日本国には、交換留学生制度で来た魔族が結構な数いるのよ。指定校だから全国的には少ないけど、御誂え向きにも、この町にも一校あるわ。だから、魔族だって名乗ってしまえば、誰も龍だとは気づかない!」
そ、それは!
「た、助かる!」
「そう、助かったの!」
「助かったね!」
助かったぞジャジャ!ナナ!アオイ!
「あはっ!あはははははっ!」
「うふふふふ!」
「チチッ!チチチチチチチチッ!」
俺たち二人と一匹は、高らかな笑い声で喜びを分かち合った。
「おかえり兄ちゃん。ネズミさんに夜泣きの事聞けた?」
あ、忘れてた。





