はなれてもずっとおともだち④
すいません。手直ししてて少し投稿遅れました。
「だぁ!」
ルージュの胸に抱かれたジャジャが俺を見つけて嬉しそうに手を広げている。
ああ、ジャジャ。
迎えに行きたいのは山々なんだが、どうにもそっちに近寄る事が出来そうにない。
何故ならばーーーーーー。
「く、薫平さん。どうですか?」
「ん。水着ってなんか落ち着かない」
この龍娘達が俺の理性をガリガリと削り取っていくからだ!
未だ目をグルグルさせて俺に支えられている三隈といい、もう少し俺の思春期に配慮してくれないかな!? 困る! 薫平困っちゃう!
「に、似合ってたら良いんですけど」
「似合ってる」
「あ、ありがとうございます……?」
あ、思わず即答してしまった。
青くて長い髪を天辺で括っているポニーテール。隠されなくなったその白いうなじが眩しすぎる。
そんなアオイの水着もビキニだった。上下がセパレートしていて可愛らしくてすべすべなおへそが丸見えの奴。
白を基調とした薄い青の水玉模様で、ストラップは首で巻かれていて、胸元までを具逆三角形にすっぽり覆う布面積の多いタイプだ。
ただ困るのはやけに肌にぴっちりと密着しすぎているせいで、アオイの華奢なボディラインが一切隠されていない事。
肩口は完全露出されていて、むしろ普通の水着より色気がある。
やばい。何がやばいって普段から知っているアオイの裸を思い出しそうで正直やばい。
ていうか下の奴! ちょっと下がりすぎじゃないですか!?
「私は泳がないから要らないって言ったんだけど。アオイといちかが無理矢理」
ジャジャを抱きながら自身の体をキョロキョロと眺めるルージュ。
コイツが一番ヤバい。
元々が俺より少し小さいぐらいの高身長で、なまじファッションモデルみたいなスタイルをしているもんだから、その黒一色のオーソドックスなビキニがど偉い似合っている。
真っ赤な長髪は普段通り自由に風に踊っているが、そのコントラストのせいで黒ビキニが映えてしまって、正直直視できない。
エロい。
素直に言ってルージュがストレートにエロい。
「兄ちゃん、顔が赤すぎて怖い」
え? そんな真っ赤?
そういやちょっと頭がクラクラして来たかもしれん。
「このエロガッパめ」
「し! 仕方ないだろ! 俺だって男の子なんです!」
佐伯の冷たい声に思わず正直な反論を返してしまった。
でもこればっかしはどうにもならない。
むしろこの、見渡す限り可愛い水着女子っていう状況を意識しない思春期男子はそれはそれで心配になるだろうが!
「く、薫平さん。意識してくれてるんですか?」
嬉しそうに笑うアオイが徐々に近寄ってくる。
「は、はぁ!? いや全く全然! そんな事ないね! ないったらないからお願いアオイそれ以上近づかないでああ腕を掴まないでくっつかないで顔を覗き込まないで! って三隈お前一体いつのまに復活してーーーーーーって当たってる当たってる! 当たっちゃいけないおっきいのが当たってるから! 助けて翔平! ってルージュ!? なんでお前までそんな、ああジャジャがこっち来たがってるのか! わかった! ジャジャを抱っこするからすぐはなれーーーーーーなんで背中に回るんだお前! 佐伯テメェ余計な事吹き込んでんじゃねぇぞ! ドギー巡査! 井上巡査! これ未成年にとってもよろしくない状況じゃないですかね!? なんでそんなニヤニヤしてるんですか! 待って! ナナもパパのお顔掴まないで逃げられなくなっちゃうから! へ、ヘルプミィイイイイ!!!」
なんだこれ!
◆◆◆◆◆◆◆◆◆
「だぅ!」
「あぅ?」
少し時間が過ぎて、今俺はジャジャとナナを水で遊ばせている。
さっき作った簡易プールにジャジャ達を入れて、水と戯れるその愛らしい姿に癒されていた。
俺も内側で水に浸かり、ジャジャの背中をしっかりと支えている。
「死ぬかと思った」
あのパラダイス地獄という新ジャンルの地獄を終わらせたのは、興奮し過ぎて気を失いかけた情けない俺なのは内緒である。
くそう……普通の男子なら大喜びするんだろうか。いや、あの状況だとどの男子だってオーバーキルだと思う。親父の予想通りに醜態を晒してしまった。悔しい。
「あだぁ!」
「うお、冷いぞージャジャー」
ジャジャが水面をバシャバシャと叩く。
飛んで来た飛沫が俺の顔にかかって、心地よい。
制作した俺達の目論見通り、双子達が座ってもおへそのちょっと下程度までしか水に浸からない。
ちゃんと俺が背中を支えているから倒れる事も無いし、水量が増えた掻き出せばいいしな。
「あー?」
「ナナはなんでさっきから不思議そうにしてるの?」
ナナを支えているのはアオイだ。
俺と同じようにナナの背中に手を添えながら、尻尾で水面を叩いて双子達を遊ばせていた。
「お水が流れる感覚が不思議なんじゃ無いかな? お風呂とは違うなって」
俺の正面に座る三隈がアオイに答えた。
ああ、そういやそうだな。
家の小さなバスタブと、この大きな川だと感じ方もまた違うはずだ。
何をやるにも初体験のジャジャとナナはお得だな。いつだって新鮮な驚きがある。
「だいっ!」
「んやぁ!」
水面を叩いて遊ぶジャジャ。その飛沫が隣のナナの顔にかかり、ナナが嫌そうな顔をした。
「んだぁ!」
「きゃーい!」
お返しとばかりに弱々しく水面を叩くナナ。
なんとかジャジャの顔に水飛沫を当てれたが、ジャジャは平気そうに大声で喜んだ。
「だぁ!」
「んーやぁ! ふに、ふにぇええっ!」
はしゃぐジャジャの反撃の飛沫を受けたナナがついに泣き出してしまった。
「あはは、楽しんでるジャジャには敵わないなナナ」
テンション高い奴って無敵なんだよな。
ジャジャは遊んでいるつもりだから、決して意地悪してるわけじゃ無い。
「ジャジャー? ナナが嫌がってるときはやっちゃダメだよ? ほらナナ、おいで」
「ふえええっ! ふああああああっ!」
アオイに抱き上げられたナナが、その胸元に顔を埋めてグリグリと甘える。
「ナナ、そんなにグリグリしたら水着取れちゃうよー。夕乃さんやルゥ姉様みたいに大きくな……い……」
「おい、アオイ」
なんでお前は自分で自分を傷つけるような事を言うんだ。
真顔になるな真顔に。
「薫平さん、ちょっと着替える時に胸を落として来たみたいなんです……私、探してーーーーーー」
「落としてない落としてない! 正気に戻れバカ!」
普段と変わらない可愛らしい胸してるじゃんか!
「アオイちゃん、大きくてもあんまり良い事ないよ?」
「大きい人は平気でそんな事言いますけど! それがどれだけ残酷な事か知った方がいいのです! テレビで見ました!」
三隈の慰めの言葉にアオイは涙目で噛み付いた。
またテレビ情報かよ。お前が普段見ているテレビ番組を改める必要があるな。
「こうちゃん、気をつけてよー!」
「お前泳げないくせによくやろうと思ったなー」
翔平と佐伯の声が聞こえて来た。
振り向くと、大きな岩の上に乗った浩二が川に飛び込もうとしているようだ。
「おいおい! 危ねぇぞ浩二!」
あいつ泳げないんじゃなかったか?
「にぃ!」
どや顔の浩二。
「一応ここ、ギリギリで足が着くんだけどさ。でもこうちゃんやっぱり止めとこうよー。こうちゃん浅瀬でも溺れた事あるじゃーん」
「うわお前ダサいなっ! 姉ちゃんちょっと恥ずかしいぞ!」
どうやったら浅瀬で溺れる事ができるのか。
「薫平」
「ん?」
川べりにレジャーチェアを置いて俺達を見ていたルージュが声をかけて来た。
地龍は水に触れると沸騰させてしまうらしいから、最初から川に入る気は無かったようだ。
「なんだ?」
「何か近づいてくる。地の精霊が教えてくれた」
へえ、精霊ってそんな事も教えてくれるの?
「他の観光客かな」
「違う。人間じゃない」
へ?
「にぃいいいいいいい!」
突然、浩二の悲鳴が聞こえて来た。
「ど、どうした! 何かあったのか浩二!」
「うだぁ」
ジャジャを抱いて立ち上がる。
隣のアオイもナナを抱いたまま川から上がった。
「にぃ! にぃ!」
「ああ? 森がどうかしたのか?」
「兄ちゃん。こうちゃんが、森の中に何か居るって」
なんで翔平は浩二の言葉がわかるんだろうか。
「何かってなんだよ浩二!」
「にぃ!」
「速くてわかんない?」
まあ、佐伯は姉だし同じ短毛三毛猫族だしな。
わかってても何も不思議じゃないんだが。
「薫平、みんなを落ち着かせて。悪い物じゃない」
「ルージュ? わかるのか?」
「ん。これはーーーーーー」
ルージュ説明しようとした時、俺達の対岸の草むらが激しく揺れた。
「どうしたのみんな?」
「野生動物かな。そういやここら辺、猪とか出るんだっけ」
ウッドデッキから俺達を見ていた巡査ペアが階段を降りて来た。
「いや、あの、みんな落ち着いーーーーーー」
ルージュが珍しくワタワタしている。
「とりあえず浩二君はそこ動かないでね! みんなもこっちに上がって来て!」
「急いで!」
巡査ペアの声に反応した佐伯と翔平が川から出て来た。
「なんだなんだ。野犬でも出て来たか?」
ウッドデッキから親父も続いて降りて来て、若干場が慌ただしさを増した。
「ええ、まあ用心するに越した事はないでしょう」
「そうだな。翔平早く上がってこい」
「う、うん」
井上巡査に同意した親父の指示で翔平が急いで川から上がる。
「いや、ちょっとみんなルージュの話もだな」
「アオイちゃん、ナナちゃん達連れてコテージに上がっておこう?」
「大丈夫ですよう。動物さん程度なら負けませんから」
いや、勝つとか負けるとかじゃなくて!
ちょっとみんな落ち着こうよ!
「出てくるよ!」
翔平の声に皆が一斉に草むらを見た。
「……キュウ」
出て来たのは、真っ黒な毛むくじゃらの小さな熊だった。





