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家族になろうよ④

 

「男の俺から母乳が出るわけ無いだろ!」


 誰かこの鼠に人間の体の事を教えてやってくれ。


「ひっ、ぎぁあああああ!!」


「お、おおう。違う違う。お前に怒ったんじゃないぞー」


 俺の怒鳴り声に反応した妹ちゃんが、俺の腕の中で更に声を張り上げて泣き出した。


「君の乳を吸わせるなんて、一言も言ってないだろう?」


 モコモコ鼠ことアルバ・ジェルマンは、杖を持っていない方の手を額に当ててヤレヤレと首を振った。

 口元はニヤけている。

 なんか感に触るなこのげっ歯類。


「君がするのは授乳の補助だよ。父親なんだから当然だろ?」


「あのなあ!俺とこいつは今日が初対面だし、自慢じゃ無いが俺は母親以外の女に触れた事すら無いんだよ!」


「本当に自慢にならんな。情けない長男だ。父さんが若い頃はもっとモテてだな」


 うるさいよ!親父は黙ってろ!


「いーや。君がこの子達の父親で間違いないよ。話は授乳をしながらにしよう。子供達が可哀想だ」


「あっ、あの、薫平さん」


 アオイノウンが俺の服の袖を引く。


「おじさまは龍の事に関しては適当な事は言わないんです。それ以外は信じるなって母は言ってましたけど。それに、龍種に関してはおじさま以上の知識を持ってる方はいません」


「お前もなぁ、ちょっと色々知らなすぎじゃないか!?お前の子供の事なんだぜ!?」


 幾ら何でも、赤ん坊の飯の与え方すら知らないってどういうこった。


「あ、あの。龍種って滅多に増えないんです。昨日までは私が一番若い龍でしたし、それに」


 アオイノウンは顔を紅らめてうつむいた。


「さ、産卵期って私初めてで、しかも普通の龍より早かったんです。母もこんなに早く私が子供を持つとは予想してなくて、今度会うときに色々教えてもらう約束だったんですが」


「やっぱり、あの子は君に教えてなかったみたいだね。まあ、僕もアオイが産卵期を迎えて、更に命を宿らせるなんて思いもよらなかったからしょうがないかな」


 アルバ・ジェルマンは腕を組んで首を傾げた。

 いちいち大げさなアクション取りやがって。


「か、母ちゃんはどこにいるんだよ」


「最後に会ったのは四十年前です。今どこにいるかはちょっと……」


 ん?


「四十年前?」


 あれ?


「風待君。龍って、とても長命なのよ」


 は?

 ドギー巡査が衝立ついたてを移動しながら教えてくれた。


「アオイノウン、お前。今いくつ?」


「え?250歳、くらいだと思うんですけど」


 は。


「はぁあああああああっ!?」


 嘘だって!どこからどう見ても俺より年下にしか見えないんだけど!!


 度肝を抜かれた俺が激しく狼狽えていると、翔平が衝立ついたての向こうから顔を出す。

 

「兄ちゃん、少しは勉強した方がいいよ。常識って訳じゃないけど、普通だったら知ってる事だもん」


「言ってやるな翔平。学校じゃ習わない類の話だ。普通だったら友達とかの話題で出るタイプだぞ。龍の伝説や噂話なんて」


 親父が悲しそうな表情を浮かべ、俺の肩を叩いた。


「友達、いないんじゃしょうがないよな。元気出せって」


「う、うるさいよ!!」


 慰めないでよ!


「ほら、準備できたよ。泣かしたまんまじゃもう見てられないから、兄ちゃんもさっさと来てよ。わかんないけど兄ちゃんが必要なんでしょ?」


 だ、だから!なんで俺が父親なんだよ!


「お願いします。おじさまは龍に関しては私達自身より詳しいんです。なぜなら」


 アオイノウンは自分の腕の上にいるアルバ・ジェルマンを見て、俺に視線を戻した。


「世界でただ一人の、龍種専門のお医者様なんですから」




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