女の子同士のパーティ
扉を開けて部屋の中に踊り込んだ私達を待っていたのは、1番多く見かけるスケルトン3体だ。冒険者の成れの果てのため大抵は5〜6体いるはずが3体しかいない所から、生前は相当な実力者だったか、仲間がいなかった事になる。
持っている武器を見る限り、このスケルトンは後者のようだ。
「サクッと行くよ!」
キャッティさんがそう指示を出して、プレデターが持つような武器、リストブレードを伸ばして攻撃しはじめる。
リストブレードが武器屋で売り出されていた時は不思議に思ったけれど、キャッティさんを見て獣人達のための武器だったんだと気づかされる。
そしてクゥさんはショートソードとダガーを持って二刀流スタイルなのだけど、身長のせいかロングソードとショートソードを持っているように見えなくもなかった。
私も残る1体と対峙し、杖のひと凪でスケルトンを粉砕する。
「わお、サーラ凄い」
「僕も負けてられないれす」
「まぁ、豪快にやりますわねぇ」
「ほぉ……」
三者三様の返事が返ってきた。
もちろんキャッティさんとクゥさんも苦戦することなく倒してしまい、クゥさんがスケルトンの持ち物を漁りはじめた。
「やっぱり駆け出しの冒険者みたいなのれす」
「まぁそりゃそうよね、先行こ」
キャッティさんのパーティはほぼ全員接近戦が可能なのと、毎回同じ道を行く方法のおかげで、この狭い迷宮で苦戦するということもなく、セインさん達と会った時と同じ地下5階層まで辿り着いた。
「次の部屋の魔物を退治したら早いけど休もう」
「了解なのれす」
「はい」
なんかセインさん達の時と被り不安がよぎる。扉の前まで来た時、私が感知で中の動く物の数を確認するとその数は5体いるのがわかる。一箇所に纏まっていないでバラバラになって動いていることから、統率された感じには思えなかった。
「じゃあ、行くよ!」
勢いよく中に踊り込むと、私の感知通り5体バラバラに蠢くワイトの姿があった。ワイトとはゾンビのような外見のアンデッド種の1つで、生命力を奪い殺した相手を即座に同族にしてしまう恐ろしい魔物だ。
私達の姿を見つけるなり近づいてくる。
「チッ、ワイトよ。大して強くはないけれど、攻撃を受けると生命力が奪われるから気をつけて」
「生命力?」
「肉体的の老化れす」
「なるほど」
「感心している場合ではないよ」
相手が近よってきているとはいえ、バラバラに向かってきている。確実に1体づつ倒せなければあっという間に取り囲まれてしまい、攻撃を受ける人が出かねない。
「各自自己責任! 分散して1人1体づつやるよ!」
「分かったのれす」
「わかりましたぁ」
「承知した」
「えーと、はい!」
なんかいい加減なような気もするけど……きっとそれは仲間を信じているからこそ出来るんだろうな。
一斉にそれぞれのワイトに向かって走り出して攻撃を仕掛け出す。
キャッティさんはリストブレードで、クゥさんはショートソードとダガーで、そしてカトレアさんはぱたぱたとワイトに走って行くと、モーニングスターでグッシャリやり始めた。思ってた以上に接近戦も出来そうというか、あのプレートアーマーならこのパーティでも1番防御力もあって壁役が出来そうな気もする。
アーテミスさんは流れるような動作でロングソードを扱い、まるで愉しむようにワイトを切り刻んでいる。
私は向かってくるワイトをさっさと杖の一撃で頭を粉砕して倒すと、キャッティさん達の戦いを観察する。
キャッティさんはリストブレードを使って猫のように相手を翻弄しながら戦っていて、さながらにゃにゃにゃ! とオモチャと戯れる猫みたいに見える。そうこうしているととどめを刺した。
クゥさんはショートソードとダガーでワイトの攻撃を躱しながら未だに一撃も与えていない。と思った次の瞬間攻撃を仕掛け、一撃で倒した。まるで戦士と言うよりもシーフかアサシンの急所攻撃のような戦い方に見える。
カトレアさんは既に倒し終えていて、ワイトはグッチャングチャンに潰されている。戦いに割って入らないで、仲間達をノンビリ眺めるように必要に応じて神官魔法を準備しているようだ。
女性神官戦士のアーテミスさんは普段は前衛を勤めるだけあって、鋭い突きや斬りつけをしながら的確に攻撃を加えていきあっさりと倒すと、見惚れるような動作で血糊を払って鞘に剣を収めていた。
「ふぅ、これで片付いたわね」
「余裕なのれす」
「デプス1程度ですものねぇ」
「サーラはワイトも一撃か、凄いな」
「これは確かにテトラ様達も仲間に誘おうとするわけよね」
うーん、だってただのワイトだし。それにクゥさんだって一撃だったじゃない。
ワイトの死体を部屋の隅に運んで纏めていると宝箱を見つけた。
「わお、ワイトの宝箱よ。少し期待していいのかな」
「デプス1だとせいぜい金貨数枚れすよ」
「いいからいいからぁ、さっくり開けちゃおう」
「今開けるから待つのれす」
あれ?クゥさんが開けるってまさかシーフ……あああっ!ガパッと普通に開けたー! 罠とかそういう心配はぁ⁉︎
と言うわけで宝箱から金貨にして10枚分ほどに相当する銀貨や銅貨が入っていた。
そのまま誰かが持つと重量がかさむので、だいたい5当分して分配すると、私の分は鞄にお金を突っ込んでしまいこんだ。
「さてと、じゃあ今日はこの部屋で休もう」
「わーい、ご飯なのれす」
「あ、やばっ! 私ご飯の事サーラに行ってなかった!」
「キャッティ、それは間抜けじゃ済まされませんよぉ」
「あ、大丈夫です。携帯食あるんで」
そこで鞄からクッキーのようなエルフの携帯食を取り出して、一欠片分割ると口に放り込んだ。私が一欠片だけで満足している姿を皆んなにまじまじと見つめられる。
「そ、それだけで足りるの?」
「あらぁ何ですかそれはぁ」
「えっとエルフの携帯食です。知り合いに頂いたもので、一欠片でお腹が満たされるんです」
横から小さな手が伸びてきてそれがクゥさんだとすぐに分かる。
「ちょっぴりだけ欲しいのれす」
「いいですよ」
カキッと割って手に置くとクゥさんは一度まじまじと見つめた後口に放り込んだ。
「こ、これ凄いのれす! 味はまぁまぁれすが、お腹がいっぱいになるのれす」
結局全員興味を持ったため、私は皆んなにも一欠片づつ分けていく。
これが女の子同士の一口ちょうだい的なものなのかな?
「あ、本当だ。これっぽっちなのにちゃんと空腹が満たされた感じがするね」
「不思議な体験ですねぇ」
「確かにこれは凄い」
お腹が満たされた私達は、見張りの順番を決めて休んだ。
うん、同性同士だと確かに安心感あるね。
あれ?
本日の更新分です。
「なんか急にバトル物になったのれす」
「当たり前よ、迷宮にいるんだもの」
「本編と違うのですからぁ、もう少しのほほんとしたものでも良いんじゃないかしらぁ?」
まぁダラダラ続ける気は無いので。
「何それ酷い! それじゃあまるでさっさと外伝終わらせて本編に戻ろうとしてるみたいじゃない!」
そういうわけではなくて、メリハリですよ。それに本編に戻るとちょっと気に入ってきている外伝の登場人物は出てこないですからね。
「つ、使い捨てれすか」
心が痛い……
というわけで次回更新は明日を予定しています。