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最後の受難

本日ラストまで駆け抜けます。

「サハラ様? もう10年経っていんすよ?」


へ? あぁそうか、ってあれ?


「何も変わってないように思うんだけど? わぁぁ!」

「ど、どうしたでありんすか?」


どうしたもこうしたもない。声が男に戻っているし身体も男に戻っている。加えて服も破れてところどころ裂けている。当然サイズが違ったのだから仕方がない。


「いやあぁぁぁぁぁぁぁ!」

「その姿でその悲鳴は気持ち悪いものを感じるのでありんすが……」


だけど……心がついていけてなくて、女のままだった。



『アリエル? 大変なのぉぉぉ!』


何も考えられずただパニックになってアリエルに繋がった。



『えーっと、サハラ、さんですよね?』

『それ以外に誰がアリエルと繋がれるって言うのよ』



とりあえず状況を説明して身体は男に戻ったけれど、心はサーラのままである事を必死に半泣きになって伝える。



『はぁ……10年振りの再会がこんな事になるとは想像もしてなかったわ。良い? 落ち着いて聞いてね。それなら10年前にあたし達が初めて会った時に話してくれた、使うか迷っていた巻物(スクロール)を使えば良いんじゃないかしら?』


おおおお! さすがアリエルだぁ。


『うん、分かったよ、ありがとうアリエル』

『う、うん……』

『あ、魔法の記憶が必要になるから巻物を使うのは明日になると思うんだ。だからもう少しだけ待っててね』

『分かったからさ、そのおっさんの声でそういう口調は気持ち悪いからやめてよね』

『うわ、酷い! アリエ……』


一方的に切られたぁ!! いくらなんでも酷すぎるよぉ〜。



「アリエルってば酷いよ。気持ち悪いからって一方的に話すのやめられちゃった」

「アリエルのその気持ち、わっちにもよく分かりんすによりて」


アルからもショックな返答が返ってきた。仕方がなく呪文書を取り出して記憶してみると、十分すぎる休養で既に再記憶が可能だった。


とりあえずさっさと読魔法(リードマジック)を使ってキャスがくれた巻物(スクロール)を読んで、早速自分自身に使ってみる事にすると、一瞬意識が吹っ飛び直後に戻る。

ぐるぐると頭に女体化時期の内容が思い浮かび吐き気を催す……


ウオエェェェェ……


やっちまった、最後からどれぐらいぶりだっただろうか。



心配したアルが背中をさすってくれて一息ついた。


「ごめん、助かったよアル。たぶんもう大丈夫だ」

「サハラ様?」

「どうした?」

「サハラ様!」


アルが飛びつき、しがみついてきた。


「うわ! どうしたんだよ、いきなり」

「会いたかった、会いたかった、会いたかった、おゆるしなんし、おゆるしなんし……」



なんかよくわからないが、アルが泣きながらひたすら謝罪している。


「泣いていたら分からないよ、何をそんなに謝るんだ?」


正直、歌姫(ディーバ)と言われるだけあって銀髪の美少女にしがみつかれているのは嬉しい。だけど謝りながら泣かれるのは困った。

しばらく落ち着くまで待って、もう一度聞いてみるとグシグシいいながら話し始めた。



「わっちのせいでサハラ様が死んだんです」

「死んだ? あぁ未来の話の事か」

「なんで!なんででありんすか? わっちのせいでわっちなんかを庇って死んだんでありんす? なのに何でそんなに平然としていんすんでありんすか!」

「何でってなぁ、今俺生きてるしそれは未来の事じゃないか、それに仲間を守って死ねたんなら、まぁ本望じゃないかな?

それに未来が分かっているのなら変えりゃ良いことだろ? 現状だってアルの知っている未来と食い違いが出てきているのなら変えることだってできるはずだ」



コクコクと頷いて目を輝かせて俺にしがみつきながら見つめてくる。未来の俺よ、この子とは一体どういう関係だったんだ。



「さてと……アリエルにもみっともないとこ見せたし、さっさとマルボロ王国に直接行って驚かしてやろう……っと、その前に着替えだな」



破れたり裂けた服を引きちぎるように脱ぎ捨てていく……ブラと女物のパンツを履いている自分の姿に思わず情けなさを感じ、湿って臭いパンツを脱ぎ捨てた時は男に抱かれた自分にまた吐き気を催した。


ん?


視線を感じて後ろを見ると、アルが顔を赤くしながら指をくわえて見つめている。


「ちょ、見ないでもらえるかな」

「え? だっていつなるときも普通にわっち達の前で着替えていんしたよ?それにこなたの間はアリエルと一緒に愛し合ったではないでありんすかぁ」


未来の俺よ。お前はこの子に何をしでかしたんだ。


「いや、未来の俺は今の俺じゃないし、アリエルとの時は女体化していたじゃないか。とりあえず着替え難いから見ないでくれないかな」



アルが背中を向けたのを確認してさっさと着替えを済ませる。



「長いな……うざったいし切るか」


伸びに伸びた髪が邪魔で、鞄から悪鬼(デーモン)が持っていた剣を取り出して束にした髪の毛を雑に切り捨てる。


恐ろしく切れ味良いなこの剣……後で鑑定するか。


通常切り難い髪の毛の束を一凪でスパッと切れた切れ味に気持ちよく、乱雑に髪の毛を切りそろえていく。


「こんなものか……」


邪魔だった髪の毛がなくなり、フードを目深に被ってなんとなく懐かしい本来の自分に戻った気がする。

準備も整い、いざアリエルが待つマルボロ王国に向かおう。



「アル、移動魔法をマルボロ王国近くに出せるかな?」

「わかりんした」


そう言ってアルが何もない空間に見たこともない空間の歪みを作り出し、それはワームホールだと言う。

抜けた先は直線ルートで結んだマルボロ王国の側だと言って、アルが先に入り込んでいき俺も後に続くとそこは歪んだ景色のトンネルだった。



本日の予定


お昼頃に “ワームホール” を更新して夜22時頃に最終話を更新予定です。

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