決断
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宿屋を決めて、私とアリエルとアルの3人一緒の部屋に入り込むと、さっそく話し合いが始まる。
当然1つは私の事。もう1つは魔物の襲撃の事だ。
「それで、サーラは決めたの?」
「正直なところまだ迷ってる。ただ、そのまま待つのは無いから2択だけどね」
「そうなると、優先順位は魔物の襲撃って奴よね。ねぇアル、その大群って言うのは未来ではどうなったの?」
はぁ、と諦め混じりのため息をついてからアルが口を開いた。
「本来なら迷宮の町が一度魔物の巣窟となるそうでありんすぇ。その後すぐにセブンスターナイトが駆けつけて一掃しんす。
確かトータークといわす人物が黒幕でありんしたはずで、死の間際に目的は果たせたと言っていたと記録されていたはずです」
「そ、その目的ってわかる?」
「確か、トータークをおとしめた人物を殺すことでありんしたかと……」
間違いなくアルクレスタさんの事だとわかる。
「でも迷宮の町には相当な数の冒険者もいるわよ? 人望もある領主を放って逃げだしたりしないでしょう」
「もちろん冒険者の方達も戦ったようでありんすが、みんなお亡くなりになりんしたそうです」
アリエルが絶句している。いくら大群とはいえ全滅するほどとは思いもしなかったのだと思う。私はアルにその魔物とはどんな奴か尋ねてみた。
「その魔物は……悪魔と言われる魔物でありんすぇ。こなたのころはまだ知られていないはずでありんすが、その形跡は少なからずあったと記録されていんす 」
それを聞いてアリエルが即座に反応を示す。
私を一度見てから、アリエルは迷宮で出会った炎を吐く狼と有翼人の話をすると、アルがそれはヘルハウンドとエリニュスだと言う。
ヘルハウンドは悪魔の飼犬の様なものであり、エリニュスは復讐の女神と恐れられる悪魔で、苦しみを引き出すことが出来る力を持つ、そのため出会ってしまったら速やかに死ねることが唯一の苦しみから逃れる方法だとされている。
薀蓄を聞いてアリエルが迷宮で出くわした時の事を思い出したのか身体を震わせている。
「つまり、魔物の大群は悪魔でそのエリニュスかそれ相応の魔物だと言うことなのね?」
頷いて答える。
「なら、私が守る」
「サーラ!?」
「ごめん、でも私はそれを知って見捨てるなんてできない。アル、貴女は戦えるの?」
一度ため息をついてから諦めた様にアルが口を開いた。
「わっちは、わっちのいた世界では悪魔と生き残るために戦っていんす。
わっちは、こう見えてもこなたの任務を任されただけの力は持っていんす」
それを聞いて安心する。
ただいつ魔物の大群がこの町に現れるのかを聞くとアルは起こる事は記憶してきたけれど、いつと何処からというところまでは覚えてきていないという。
もちろんこんな話をいきなりアルクレスタさんに話したところで信じてもらえるはずもなく、言えるはずもない。
「アル、この魔物の進軍のあと大きな出来事は?」
「確か少ぅしばかりは落ち着きんす」
なるほど……
「これが終わったら私はこの町を去るつもりなんだけど、はぐれたときのために落ち合う場所を決めておこうと思うんだ。
それで、アリエル」
「何? サーラ」
「アリエルは戦いが終わったら、マルボロ王国に行ってもらえないかな……」
私が言いたい事がわかった様で悲しい顔を浮かべる。
「ごめん」
「うううん、わかった。あたし待ってるから」
鞄から取り出したものをアリエルに手渡す。
「これって!」
「うん、私のマルボロ王承認の身分証。戦いの後使い魔を飛ばしておくから、それを見せれば信じてもらえるよ。国王様と女王様は友人だから信用できるし、きっと色々守ってくれるよ」
「……うん、ってサーラ、使い魔って!」
「うん、実は少しだけ魔法使えるんだ……」
あ、なんかアリエルがキラキラした目で見てる。
「そっか、サーラはサハラさんだったもんね。別れて今度会う時はもうサーラじゃ無くなっちゃうんだね」
「うんー」
なんだか重い空気に包まれて会話も止まってしまう。
困った。でも私がこの選択をしたのには訳がある。私自身の時を進める方法ならアリエルともずっと一緒にいられる。けれど今回の戦いで私が関わった事でサーラという名を広めてしまう事は間違いない。
当然悪魔は危険視して私を探しまわると思うし、見つかれば潰しにかかると思う。町など人のいるところで攻撃されでもすれば、関係ない人達まで巻き込まれ、私はただの厄病神と変わりが無くなってしまいかねない。
だけど、見つからなければ探し続けるだけで、そこまで大事は起こらないはずだろうと推測する。見つからない、つまり時を超える事だった。
「とりあえずアリエル、脱がしてやっちゃいんすかぇ?」
「うん……今のうちに堪能しておく」
「だからなんでそうなるのぉぉぉ!」
重苦しくなった空気を変えるべくアルが考えたんだろう……けど、ちがーーう!
ガシッとアルが私を羽交い締めにしてきて、アリエルが飛びかかって……来なかった。
それどころか「うえぇぇぇぇぇん」と泣き出してしまう。
うえぇぇぇぇぇんって……
これにはアルも驚いて羽交い締めを解いたため、私はアリエルをそっと抱きしめていつもしてくれていた様に、私が頭を撫でてなだめた。
少し経って落ち着きを少し戻したアリエルは、私ではなくアルに声をかける。
「ねぇアル、あたしはまたサーラに会えるんだよね? お願い、確証が欲しいの!」
この質問は当然未来に関わるためアルは答えないと思った。だけど違った。
「すみんせん ……今更でありんすが、ぬし、会えないでありんすぇ。と、おっしゃるよりそもそもサハラ様がアリエルと出会ったといわす記録がないんです」
今ここに来てアルは、ブリーズ=アルジャントリーは衝撃的な事を言い放った。
本日分の更新です。
物語も終わりが近づいています。
トータークの狙いも分かり、またブリーズ=アルジャントリーの知っている、生きてきていた未来と食い違いが出てきています。
どこで歴史が変わったのか、狂ってきたのか、上手く描けるか不安です(^ ^;
次話は明日、おそらく夜の更新になります。
それでは




