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災難は続くよどこまでも

揉まれた揉まれた揉まれた。



ミノタウルスと対峙しているというのに、私の頭の中はそれでいっぱいで、私に向かって振るわれたモールを杖術でいなしながら身を守る。



「なんだこのミノタウルスは! 少しばかりしぶといんじゃないか?」

火球(ファイヤーボール)を受けて未だ平然と戦えるというのか!」

「セイン! いい加減しっかりしてください。回復魔法だって万能ではないんですよ!」


大打撃とまでいかないけれど、セインさん達は怪我を負いながらも押しているはず。なのに未だミノタウルスは平然と攻撃してきている。


あのモール……魔法の武器? まさか攻撃すると回復する?


私が全力で戦えば一撃で倒せる。だけどそれは後々面倒な事が起きるのは分かりきっているため、あえて他の方法を考えて戦わないといけなかった。


あの武器、ディザームするしかない。


「セインさん、あの武器!」

「分かった!」


テトラさんが足止めをして、シリクさんが撹乱する。セインさんと私がミノタウルスの武器を狙って攻撃をし、怪我をすればテクセルさんが回復をしたり、目眩しの神聖魔法を使ってサポートしてくれる。

だけどミノタウルスはなかなか武器を手放そうとしない。

コロナさんは此処一番に備えているようだった。


仕方がないか……


私はそっと気を杖に入れて神鉄アダマンティン化させると、ミノタウルスのメイスによる攻撃を杖で逸らし、直後に振りかぶる動作をする事なく、尚且つミノタウルスの手首を誤ってぶった切らない程度にヒュンと振り当てる。


ブモオォォォォと激痛による悲鳴のような声と共に、ボトッとミノタウルスのモールが落ちた。


「今だ!」


セインさんがそう叫ぶとテトラさんは素早く自身が使っていた武器を捨てて、ミノタウルスの持っていたモールを拾い上げて振り回し、セインさんとシリクさんが一斉に攻撃に転じたーーー


結果、何とかミノタウルスは倒れてくれた。



「やったな」

「ああ、それにしても、サーラ、さんのそんな杖の戦い方は初めて見た。攻撃速度が早かった」

「それは僕も思った。振りかぶる動作無く振り下ろして攻撃をしたりいなしたりしてたな」

「そんなこたぁどうでもいいじゃんか。サーラちゃん約束の抱擁をしてくれぇ」

「そんな約束してません!」

「うう、テトラとセインだけずりぃなぁ」

「ばっ! 馬鹿野郎あれは偶然だ」

「僕もそうだ……じゃなくてサーラさん、さっきは済まない……」

「わざとじゃないのはわかってます! わかってますからもういいですって。その事はもうさっさと忘れてください」


思い出してしまい、顔が赤くなるのがわかる。


私は男、私は男なんだ。


自分に言い聞かせる。じゃないと本当に引き返せないことをそのうちしかねないほど、女性化に引っ張られている。


「くぅ〜、羨ましいかぎりだぜ」

「シリクはそれしかないんですか」

「それしかないんだよ」

「クズ野郎だな」

「おう! 頼りになるだろ」


たはは……




全く気がつかなかったけれど、部屋の隅にあった宝箱をシリクさんが見つけた。ミノタウルスって財宝集める趣味あったっけかな?


「こんだけ手こずったんだ、いいもん入ってるといいなぁ」

「喜びすぎて、罠ミスんなよ」

「おうよ!」


カチャカチャとシリクさんが宝箱と格闘しているのを初めて見る私は、物珍しく側で魅入っていると不意にシリクさんが私を見つめてくる。何事かと首を傾げる。


「さっきのあれぁなんだ?」

「はい?」

「誤魔化すなよ、ただの杖でミノタウルスの腕を狙って攻撃をした程度で、あんな悲鳴はあげねぇよ」


う……シリクさん、普段ふざけた態度を取っているけどやっぱり見るところは見てるんだ。


「実は……」

「おう……」

「杖術というものなんです」


ガクッとシリクさんがなる。実際に嘘ではないしね。


「杖術? 剣術みたいなもんか。初めてきいたなそんなの。他にもなんかありそうだけど訳ありっぽいから聞かねぇことにしとくわ」

「ありがとう!」

「その代わり……な?」

「嫌です」

「そりゃねぇよぉ」


私は笑ってごまかしてその場を離れた。


あー、危なかったー。でも、今回みたいな時のために何か考えておかないと。




宝箱の中には相当な枚数の金貨が詰まっていて、その場で分配しはじめた。

ミノタウルスが持っていたモールはテトラさんが気に入り、特に他に誰も欲しがらなかったこちもあって、金貨を放棄して手にすることになった。

さっそくコロナさんに鑑定をお願いしたり、ブンブン振ってみたりして、新しいオモチャを貰った子供……狼じゃなくて犬? みたいに見える。


「サーラさんも受け取ってくれ」

「私は……ううん、ではいただきます」



分配も終わるとここで一晩明かすことになり、魔法の再記憶のためにコロナさんはさっさと横になってしまう。


「見張りは最初は僕がやろう。後はテトラとシリクの順で頼む」

「ああ」

「おう」

「あの、私も見張りしますよ?」

「サーラさんは、僕たちが勝手に連れてきたんだからゆっくり休んでもらっていいよ」



悪いとは思ったけれど、押し問答になってしまったので素直に休ませてもらうことにした。ただ最初の見張りのセインさんに少し話を聞いてからにした。


話を聞いて分かったのは、セインさん達はデプス4まで行ける冒険者だった。詳しく聞いてみると、デプス4までは迷宮でデプス5に行くための場所には守護する魔物がいて、それが倒せなくて進めないと言う。


「守護者ですか?」

「みたいなものかな? この迷宮はほぼ真っ直ぐ下に降りていて、デプス2が地下7階層、デプス3が地下9階層、デプス4が10階層とされてれてる。

現状分かっているのはそこまでで、その守護者は抜けようとすれば攻撃してくるけど、退けば追ってきたりしない」

「なるほどー、ならそこまで行ける冒険者を集めて戦ったらどうなんですか?」

「狭いんだよ。通路の先にある扉を守ってるんだ」


なるほど。それじゃあ確かに小規模なパーティで叩かないと無理かもしれない。そして仮に倒せたとしてもその後に扉があるため、連戦になりかねないといったところなんだと思う。

最後に私は気になったことを確認する。


「セインさん達は迷宮を制覇するつもりなんですか?」

「そのつもりで力をつけているつもりさ」


そうなんだ。そういう冒険者もやっぱりいるんだ。


その後私は休む事にして壁に寄りかかるように座って眠りについた。





「ん〜〜〜」


変な声に気がついて目を開けると、目を閉じ、口を尖らせて顔を近づけてくるシリクさんが……

そこでバチッと目が覚めて慌てた私は思い切りシリクさんの顔面を殴りつけた。


「ブフォあぁぁ」

「な、ななな、何をしようとしてんですか!」

「モーニングキッスと言うやつだが?」


キリッとした顔で言うけど、鼻から血が吹き出ていて様になっていない。

この声に目が覚めたセインさん達が呆れた目で見ている。


「寝込みの女を襲うなんざ最低クズ野郎がやるもんだ」

「ば! 俺は起こそうと思って」

「迫ったんでしょう? 同じことです」


コロナさんとテクセルさんに諌められる。


あ、今までフードを被っていてあまり顔見えなかったけど、テクセルさんカッコいい……じゃなーーーい!


ぶんぶん頭を振って、私は男、私はサハラ。呪文のように念じた。



携帯食を食べた後、この後私にどうするか尋ねてきたので、町に一度引き返しますと答える。


「そうだなぁ、じゃあ僕達も一度引き返そう。あのミノタウルスでの消耗はちょっと大きすぎた」


私は単にセインさん達がいると全力が出せないからのつもりだったけど、結局迷宮を出るまで一緒になってしまった。


とりあえず本編で更新してあったところまで内容を少し変更を加えて投稿終えました。


本日後ほどまた更新します。


「散々な目にあったなぁ……

っと、誤字脱字の指摘とあと感想とか貰えたら嬉しいです。でも変な希望や期待はしないでくださいね。私、男ですから!」



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