コンサート当日
女体化時期終盤近づいてきました。
コンサート当日、集まって朝食を食べ終えてから、キャッティさんとクゥさんがコンサート用の衣服を持って私とアリエルが寝泊まりしている宿屋にやってくる。
「入るよ〜」
「入るれす〜」
「じゃあパパッと着替えちゃいましょう」
4人が一斉に着替え、髪の毛にブラシを念入りにかけ、化粧を軽くしていく。
普段ポニーテールの私は髪の毛を編み込みシニヨンのアップスタイルに仕上げ、その後アリエルの髪の毛を勝手に編み込んでフィッシュボーンに仕上げる。
「うわ、凄い」
「おぉ! サーラさんそれ凄いれす! 僕もそんな風にして貰えないれすか?」
「あーずる〜い、私もお願い」
というわけでキャッティさんとクゥさんも編み込んで髪型を作り、仕上がりを見て喜んでくれた。
準備も整い、待ち合わせの場所に向かうために宿屋を出ていくと、さっそく男の人達が私達を二度見し、声をかけてくる男の人は無視して行った。
「お待たせ〜」
待ち合わせの場所には既にセインさん達が待っていて話し込んでいるところにアリエルが声をかける。
「おせぇよ、一体どんだけ……」
「4人共凄く綺麗だ」
シリクさんは言葉を失い、テトラさんは素直な感想をしてくれて、セインさんは目を見開いて固まりついていた。
「迷宮の町で騒ぎになった凄い美女って、お、お前らだったのか」
「そういう事。さぁ行くんでしょう? エスコート宜しくするわ」
テトラさんはキャッティさんとクゥさんを両脇に挟まれる形で歩き、アリエルはシリクさんと歩いてコンサートのチケットの忘れ物は無いかなどを話しながら歩いていく。
残った私はセインさんにエスコートしてもらう。
「サーラさんどこかいいところのお嬢様かと思ったよ」
「そんなお世辞なんかいいですよぉ」
「お世辞なんかじゃないさ。本当に綺麗だ」
照れてしまい、上手い言葉が見つからなくて黙り込んでしまう。でも悪い気はしなくて少しづつ普段通り会話をしながら会場へ向かった。
コンサート会場に辿り着くとシリクさんが、チケットを手渡し確認を取ると、係りの中でも管理者クラスのような人が、わざわざ場所まで案内するために先導していってくれる。
「こちらになります。それではお楽しみくださいませ」
そこはまさに闘技場のように円形のホールになっていて中央に舞台がある。
いわゆるアリーナというものなんだろうか?
そして私達はその舞台の一番前、舞台の正面がどちらになるのか分からないけれど、最前列だった。
「すごーい、最前列よ最前列。こんなに近かったら息使いまで届いてきそう」
「だろぅ? 感謝しろよ」
「シリク、でかした。褒美にサーラと喋る権利を与えてやろう」
「俺はサーラと喋るのにアリエルの許可を得なきゃいけないのかよ!」
私以外に普段絶対に見せないアリエルのハイテンションさに、シリクさんもタジタジになっている。
「テトラ様本当に最前列ですよぉ!」
「カタコンベマンの方が良かったなぁ」
「テトラさん! 今日はダメれす!」
「なんか私の知らないテトラ様がいるぅ」
こちらはこちらで盛り上がって、いるのかな?
「凄いですね。こんな最前列なんてよく取れましたね」
「シリクに頼み込んだんだ。サーラさんが喜ぶだろうってね」
お礼の相談をしていた時に、セインさん達は相談しあって私が喜んでくれるだろうと思う事に、礼として付き合ってもらうという事で話は決まったそうで、じゃあ何が? となった時にテクセルさんがこのコンサートはどうだろうと提案したんだけど、チケットがそう簡単に取れるはずもない。
そう思っていたらシリクさんがとある人のコネから入手できたんだとか。
「コネですか?」
「チケットが何故1枚多かったと思う? コンサートの最前列を俺達全員分とサーラさんの分、そしてあと1枚これは決してアリエルのためではない」
そうだった。ここに連れてこられた時も係りの人が、まるで要人を誘導するように扱われて先導してくれた。
それだけの人物、私が知ってる人は1人しかいない。
「アルクレスタさん、でしたか」
「ご名答。だけど領主様は代表に選ばれた為チケットを取れた後に急用で行けなくなってしまったんだ」
そうなんだぁと思いながらステージを見て、会場を見渡してみる。
とてつもなく広い会場でこれでは一番遠い人は大して聞こえないんじゃと思っていると、ステージに1人の人物が現れ声を張り上げて説明をしはじめる。
「会場にいらっしゃるお客様に注意とお願いがございます!」
ざわついていた会場が静まり返った。
それでも一番遠い人は聞こえ難いと思える。
「只今より会場には魔法封鎖を施させていただきます」
そう言うとステージの人が四方に合図を送った。
「続きまして、音声拡張魔法を使わせて頂きます!」
ステージにある箱のようなものにコマンドワードを言っているようだ。
「あー、テステス、大丈夫ですな。皆様大変長らくお待たせいたしました。
あともうしばらくで歌姫ブリーズ=アルジャントリーの歌が始まります。
オペラではございませんので、リズムに乗って踊られるのも自由でございますが、ステージには決して登らないようお願い致します」
会場中に声を張り上げなくても声が行き届くようになり、観客達も興奮を抑えきれずヒューヒュー口笛などが飛び交う。
「それでは今しばらくお待ちください」
そう言うと男はステージから降りて、こちらに近づいてきた。
「本日はよくお越しくださいました。えーと、どちら様がアルクレスタ様でしょうか?」
いや、とセインさんがアルクレスタさんが来れなくなった事を伝えると残念そうな顔をして「楽しんでいってください」と立ち去っていった。
程なくすると楽器奏者が姿を見せステージ脇に座って楽器の調整を兼ねた演奏をしはじめる。
弦楽器や管楽器、打楽器が鳴り始め、指揮者がテスト的に音楽を指揮しはじめると、会場は静かに聞き入りはじめた。
「いよいよだわ!」
「うん、アリエル凄い嬉しそう」
「もちろんよ、あのブリーズ=アルジャントリーの歌が聞けるんだもの」
「アリエルは聞いた事があるのか?」
「ないわ」
「おいおい、聞いたこともないのにそんなによく興奮出来んなぁ?」
「べ、別にいいでしょっ!」
そんな会話をしながら始まるその時を待っていた。
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