地下墓地(カタコンベ)ランド閉園
ちょうど昼時になり、地下墓地ランドの名物ランチという[死体飯]を食べに食堂に入る。
心臓を模したパンや腕の形をした肉、目玉ゼリーや血の色のお茶などが持ってこられ、そのあまりのリアルな見た目のグロさに食欲を失せてしまう。
喜んで食べていたのはもちろんクゥさんただ1人だけで、テトラさんも「見た目はアレだが美味い!」と食べきっていた。
午後もいろいろなアトラクションにチャレンジしていき、夕方が近くなった頃だ。
「次のアトラクションを最後に帰るぞ!」
「えぇ〜、閉園までは時間あるのにぃ〜」
ブーたれるキャッティさんを他所に、シリクさんが最後のアトラクションへと向かう。
「最後のアトラクションはもう決まっているんれすか?」
「ああ! あれだ!」
【超絶絶叫ハウス】そこにはそう書いてあった。
げっ……
「おー、ホラーハウスって奴か」
「どうせたいしたことないわよ」
口々に余裕を見せているとシリクさんがさらなる提案をしてくる。
「だろうと思ってな、昨日下調べをしておいたぜ」
入り口には羊皮紙があって、そこに示された場所には何があったのかをチェックしてくるなんていう余計なものが用意されているという。調べてきて全て答えられると記念景品も貰えるんだとか。
「つまりそれを全部確認してこれたチームの勝ちだ」
「チーム?」
「2、2、3人でチームを組むんだよ」
それを聞いて全員が盛り上がる。そんな中。
「あ、あたしパース」
アリエルがここでいきなりの参加拒否を示した。
「なんだよ、アリエルびびってんのか?」
「残念だけど違うわ。ほらそこ」
当アトラクションのルール[神官の方の参加は出来ません]
「まぁ人数ちょうどペアが出来るしいいか。よし!ペア組む相手をくじ引きで決めるぞ! ってサーラ、さっきから何ずっと黙ってんだ?」
「私実はこう言うのは苦手で……」
「俄然燃えてきたぜ! おっしゃサッサとこの棒を取れ。そこに書いてある数字と同じ奴がペアだ!」
私に……拒否権はないようだった。。。
「私は1」
「僕は2れす」
「さんです……」
女性陣がクジを引いて番号が決まり、男性陣がクジを引き始める。
「俺は……キャッティとかよ!」
「げぇ〜、一番当たらないで欲しかったのにぃ」
「ひでぇ言い草しやがって、見てろよ俺のカッコいいとこ見せてやるぜ」
続いてテトラさん。
「む! 共に行くぞ、カタコンベクゥよ!」
「おお! わかったのれす、カタコンベテトラさん!」
すっかりカタコンベマンに影響を受けている2人がペアになった。
ということで、残るセインさんは私と一緒と決まる。
「サーラさん、よろしく頼むよ」
「……はい」
「僕じゃ嫌だったか」
「そうじゃなくて入るのが嫌なんです」
「嫌われていたわけじゃなくて良かった。大丈夫、僕が守るよ」
だからそうじゃないのに……
入り口に3組に分かれて立つ。係りの人の合図でまずキャッティさんとシリクさんが入っていき、少し間を置いた後にポーズを決めているクゥさんとテトラさんが入っていった。
「あのぉ、そちらのお客様は大丈夫なんでしょうか?」
「はい、僕が守りますから」
「は、はぁ……それではどうぞ」
セインさんに手を引っ張られて建物の中に連れて行かれた。
一体どれだけ悲鳴をあげただろうか。どれだけセインさんにしがみついただろうか。
「サーラさんにこんな弱点があるとは思わなかったよ」
「その、幽霊の類は嫌いなんです!」
セインさんが笑いながらしがみつく私を支えてくれながら歩いていく。
「たぶんそろそろゴールだよ」
「え? チェックは?」
「そんなに怖がっているのに無理強いはできないから、さっさと抜けてきた」
「ごめんなさい……」
いや、いいんだ。そう言って進んでいくと骸骨がゴールと書かれた看板を持っている部屋に辿り着く。
「さぁ出よう」
「待ってください」
しがみついていた私は、振り向いたセインさんに感謝の気持ちで口づけをした。
「最高の景品が貰えたよ」
照れながらもにっこり微笑むセインさんが素敵だった。
外に出るとアリエルが待っていて、セインさんが笑いながら中での私の様子を話してさっさと出てきた事を説明している。それをアリエルは爆笑して聞いていた。。。
しばらくするとキャッティさんと青い顔をしたシリクさんが、続いてクゥさんとテトラさんが出てきた。
「残念でした。全てを発見できませんでしたので景品は無しです。お疲れ様でした。引き続きお楽しみください」
出てきたキャッティさんは呆れた顔をしながら、中でのシリクさんの事を話し出す。
猫獣人のキャッティさんは夜目が効き、耳がいいため、驚かすような仕掛けは全て看破していたけれど、シリクさんはその仕掛けごとに飛び上がって驚いてはキャッティさんにしがみついてきたんだそうだ。
「お陰で何が出てきても覚めたわ」
またクゥさんとテトラさんはカタコンベマンの話で盛り上がってしまい、突然飛び出してきた幽霊を模したものとかそっちのけだったんだとか……
「帰る前にバシネットを買うのれす」
「俺も俺も」
をいをい……
そのまま地下墓地ランドを後にして、夕飯を食べに行った後、明日のコンサートの待ち合わせをして解散となった。
「中で何があったのか気になるなぁ」
宿屋に戻る時不意にアリエルがそんな事を口にする。
「な、ないない、何にもなかったよ」
「ふぅーん」
まるで中で何があったかを知っているかのような顔でアリエルは笑っていた。
本日分です。
昨日この話まで更新んさせたかったんですが、毎日一話更新が出来なくなりそうな気がしたので遅らせてしまいました。
明日までに頑張って書き溜めていきます!




