ヒーローショー
カタコンベランド続き
はしゃぐキャッティさんの後を追うようについて行くと次はどうやら射的をやるようだ。
射的とは吹矢を吹いて、欲しいと思う標的に矢の代わりにコルクで出来た弾を吹き出し当てて落とすアトラクションだ。
これは全員が試してみて、私は吹き方がよく分からずコルクの弾が勢いよく飛び出す事なくポトポト落ちてしまう。
アリエルも首を捻りながら試行錯誤を繰り返したようだけど上手く飛ばす事は出来なかった。
「これ本当に飛ばせるの?」
「飛ばせたとしたって、的まで1メートルは無理だよね」
ポンッ!
良い音が鳴って、見るとシリクさんが見事に的に当てて落とす。
「シリクさん凄ーい!」
「おうよ、褒めろ褒めろ」
ズパーン!
更に良い音ではなく、物凄い音をさせて的を落とす人物がいた。
「せ、セインさん凄ーい!」
照れながら私を見て頭を掻いている。
「相変わらずだなぁ、セインの奴」
「テトラ、どういう事?」
「セインはどんな武器でも昔からすぐに使いこなすんだ」
「お、お客様ぁ、もう少し加減なさらないと景品が……」
当たって落ちた景品を係りの人が持ってきたけど、そこにコルクがめり込んでいて無残な姿になっている。
「な、なるほど、なかなか難しいものだな」
あはははは……
射的を終えて移動し始めると「間も無くヒーローショー開演でーす」という声が聞こえてきた。
「む! もうそんな時間か。皆んな急ごう!」
急にテトラさんが張り切りだし、先陣を切って歩いていく。
向かった先はヒーローショーステージで、皆んなの意見を聞く事なくテトラさんが入っていってしまう。
「テトラさんこう言うの好きなんだね」
「私もテトラ様の意外な一面を見たわ」
「呆れたのかしら?」
「素敵!」
あはは……
中に入るといつの間にか最前列に場所をキープしたテトラさんが手をブンブン振っている。
「ただいまよりヒーローショーを開演いたします。なお最前列にお座りのお客様に注意がございます。
悪者がもしかしたらお客様を攫いに来る事もあります。その時は慌てずに落ち着いてヒーローに助けを求めましょう!
それでは開演でーす」
わあぁぁぁぁぁぁぁと会場が盛り上がり、幕が上がった。
本当によくありがちなヒーローショーで悪役が現れ、これから如何に悪い事を仕出かすかを私たちに説明していくように独り言を言いだすところから始まる。
盛大な独り言だなぁ、ププッ。
そんな事を思っていると、悪者さんがいつの間にか私の前に来て手首を掴んできた。
「すいません、お手伝いお願いします」
礼儀正しい悪者さんだぁ。
決して痛くない様に、でもはたから見れば引きづるかの様に舞台に連れ去られていく。
ちょっとだけ私も演技をして「イヤ! ヤメテ! 離して!」と言っておくと悪者さんの人がグッジョブしてくる。
「サーラ、さん! おのれ、悪者め!」
テトラさんが燃えていた。そして会場の観客達も「あんな美人を!」「悪者めー!」と騒がしくなる。
おいおい……
アリエルを見ると爆笑して見ているため、私も悪ノリして、「誰か助けてー!」とか叫んでみたり。
「サーラさん! 今助けに行くのれす!」
「よし! クゥ、共にサーラ、さんを助けるぞ!」
必死に2人を止めるキャッティさんとシリクさんを見て吹き出しそうになるのを堪えていると、他の観客達も立ち上がり鼻息を荒くしながら仲間達に抑えられている光景が見られ、微かに悪者さんの人の手が震えていて、「も、もう少し控えめにお願いします」とか小声で注意されてしまったり。
そこへ正義の味方が現れた……
「悪を働く悪者め! このカタコンベマンが成敗してくれる!」
あ、あはははは……地下墓地男って……
会場が湧き上がり、カタコンベマンを讃えている。だけど私の目にはヒーローの方が悪人というか、変態に見えてしまう。なぜなら……
カタコンベマンの姿は赤いマントを翻し、全身ムキムキの裸で腰にはふんどしの様に布が巻き付けられているだけ、そして頭にはバシネットを被っているのだから。
バシネットとは金属製のバケツに鳥のクチバシをくっつけた様な兜だと思って貰えればいいと思う。
つまりダサい。怪しい。キモい。
そして、ホコツ民の皆さんゴメンナサイ。をい。
対する悪者さんの人は素顔で悪人面こそしているけれど、決して不細工ではなく格好も盗賊っぽい格好をしている。
それは置いといて、ヒーローが現れた。
「お嬢さん、もう安心してください。今すぐカタコンベマンが助けます!」
なんかやっぱり嫌です。悪者さん頑張ってください。
願いが叶ったのか、悪者さんがカタコンベマンを押して行き不利になっていく。
「クッ……悪者め! 今こそ正義の力を見せてやる! トォウッ!」
舞台から飛び降りて姿を消すカタコンベマン、次に姿を見せた時は舞台の高い上の方で、何故かバシネットが黄金に輝いている。というか、被り直しているだけだけど。
「喰らえ! カタコンベキィーック!」
腰にはロープを巻かれていてゆっくりとキックのポーズのまま降ろされて行き、下に降りてくる。
全然位置が合ってないよ!
そんな心配も空しく、悪者さんがフラフラと位置を合わせて胸の辺りに足が当たると、私の手を離した後、物凄く大袈裟に転がりながら「うわぁぁぁ」と吹き飛んでいく演技を見せてくれる。
「もう安心だ! 悪は私が倒した! では名残惜しいが次の悪が私を呼んでいる。さらばだ美しき人よ!」
そう言うとタタタタタッと走り去り舞台から消えていった。
そばで見ている私はもう目が点。
こんなので観客が喜ぶのかと観客席を見ると歓喜している姿が見れ、更に目が点になる。
まさかっ! とアリエル達の方を向くと、アリエルは笑顔で手を振ってきて、キャッティさんやセインさんは拍手をしていて、クゥさんとテトラさんに至ってはスタンディングオベーション状態になっていた。唯一シリクさんだけは冷めた目をしている。
『アリエル、これが面白かったの!?』
『内容はアレだけど、こう言うのは脳内補完しながら雰囲気を楽しむものよ』
な、なるほ……ど……でいいのかな?
すぐ後、カタコンベマンと悪者さんが私を挟む形で並んでお辞儀をする。
「こちらのお嬢さんにも拍手〜!」
わあぁぁぁぁぁぁぁっと歓声と拍手が送られ、ヒーローショーは幕を閉じた。
「サーラ、さん演技が上手かった」
「迫真の演技れしたよ!」
「あ、あはははは、ありがとう……」
「よぉ〜っし、次行こう次ぃ」
こうしてヒーローショーが見終わり次のアトラクションに移ろうとした時、テトラさんとクゥさんの姿が見えず、探していたらカタコンベマンと握手するために列に並んでいた。
本日2話目です。
知っている人は知っているネタがあって申し訳ありません。
昔やっていたウルティマオンラインからネタを頂きました。
次でカタコンベランド終わりますが、本日更新出来たらするつもりです。
ブックマークと評価がいつの間にか上がっていて、とても嬉しいです。




