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真夜

ちょっと厳しいけど2話目です。

私とアリエルは敢えて真夜(・・)の見張りを引き受ける事にした。

もちろん最初は2人きりの見張りは反対されたけど、私とアリエルの強い希望で納得させる。


そして今、交代してアリエルと2人で見張りをしている最中で、周りにも見張りをしている冒険者達の姿も見られるから、この状況で襲いかかってくる事は無さそうに思えた。



『サーラ!』

『分かってる』


感知(センス)で近づいてくる者がいる。アリエルも感知(センス)で気がつき、私に警戒を呼びかけてきた。



月明かりと焚き火の明かりに映し出された人影は先ほどと変わらぬ姿をしている。ただ近づくにつれ違ったのはその目で、白目の部分がない黒一色になっている。


『あの目、あの時迷宮で会ったやつと同じ!』


アリエルから恐怖とも取れる声が上がった。



異変に気がついた他の野営の見張りをしている冒険者達もこちらに気がついて、声を張り上げて仲間を起こし始め、その騒ぎで跳ね起きる様にセインさん達も目を覚ますと防具をつける間もなく剣だけひったくる様に掴み身構えた。



「な、んだ、コイツは……」

「目が、目が真っ黒だぞ」


駆け寄ってきた冒険者達が口々に言い始める。未知の相手には十分に気をつけるのは当たり前だろう。



「如何されました、皆さんお揃いで……私に何かご用でも?」


真っ黒な目をした男が流暢に言葉を話しだし、先ほどまで片言の様に人探しをしていた人物とは思えないほど、ハッキリと意志を持って喋っている。


「それはこっちのセリフだ。何の用で戻ってきた!」


私の盾になる様にセインさんが前に立って剣を突きつける。

男は平然と薄ら笑いを浮かべて両腕を開き、何も持っていない事をアピールしてきた。


「何もしていなければ武器も所持していない。そんな私に貴方は武器を突きつけている。これは……一体どういう事ですかねぇ?」

「なら、なぜ彼女に近づく?」


分が悪く感じたのかセインさんが突きつけていた剣を下ろした次の瞬間、男がニタァと笑いセインさんを蹴り飛ばし、飛んできたセインさんが私を巻き込んで一緒に吹っ飛ばされる。



いたたたたたぁ……


「2人共大丈夫か……って、ああぁぁぁぁぁあっ!」


背中から倒れて、シリクさんの声で慌てて頭を起こすと……


「セイン、テメー毎回どさくさに紛れて何処に頭突っ込んでやがんだ!」


セインさんが私の股に顔を突っ伏して倒れている。いくらズボンを履いているとはいえ、女性としての私のとっさの反応が当然出てしまう。


「ひゃあぁぁぁぁぁぁぁあ!」


悲鳴と同時に足も閉じる。けど閉じきる事は出来ず、セインさんの頭を挟み込む形になってしまい、私の腿で絞められたセインさんが呻き声の様な声を一度だけあげるとそのまま力なく倒れた。


そんな間にシリクさんとキャッティさんとクゥさん、他の冒険者が黒目の男に攻撃仕掛けたようだけど、悲鳴と共に吹っ飛ばされていく姿が見えた。



「その程度かノロマ!」


そんな中テトラさんのモールが黒目の男に命中させて、今度は逆に男を吹き飛ばしたのが見えた。



倒れたまま起き上がってこないのか、男を他の冒険者達も加わって武器を身構えて取り囲み、いつでも攻撃できる態勢を整えている。


「大丈夫?」

「ありがとうアリエル」


アリエルが私の元に駆け寄り、気を失っているセインさんを退かして立たせてもらい、すぐに取り囲んでいる場所に行くと、突然倒れていた男がムクリと起き上がる……



ウボオォォォォアァァァァア!


気味の悪い声を上げながら体全体から黒い煙が立ち昇って一つの煙の塊になる。ものすごい速さで黒い煙の塊が何処かへと飛び去っていき、残された男は力なく崩れる様に倒れた。




「な、なんだったんだありゃぁ」

「ゴースト、でも取り付いていたのか?」


様々な憶測が飛び交っていた。もちろん倒れた男に手を差し伸べる者もいたけど、既に息絶えていたようだった。そしてセインさんではなく、私の元にも何人もの冒険者が駆けつけ無事を喜ばれる。



『サーラ、心当たりある?』

『かなり前に、似た様な事が以前に一度だけあったけど、その時はこういう感じじゃなかったよ』




怪我人は出たけど軽症程度で済み、騒ぎもひと段落するとそれぞれの場所に戻っていった。



「後はコイツだなぁ」

「あぁ、いくらリーダーとは言えサーラ、さんの……とにかく断じて許せん!」


男性陣はそんな感じで盛り上がりをみせている中、アリエルがキャッティさんとクゥさんに回復魔法を掛けるのを支えたりしながら私は手伝いをしている。


「サーラさん、あれは一体何者だったのれすか?」

「私に聞かれても分からないですよ」

「触れられもせずに弾き飛ばされたよ……」

「触れられもせず? クゥ、貴女も?」

「は、はい、たぶんそうれす。気がついた時はもう弾き飛んでたのれす……」


キャッティさんはさすが猫獣人だけあって、弾き飛ばされた状況を見ていて、衝撃による痛みはあったけれど転ぶ事なく着地したんだとか。



しばらくしてセインさんが目を覚まして私を見ると思い詰めた顔で謝罪してくる。


「サーラさん、本当に申し訳ない……」

「セインさん……気にしないでください。わざとじゃないんですから」

「そう言ってくれると……助かる」



すっかり落ち込んでいるように見えるセインさんに私は何も言えなかった。


『サーラのせいじゃないよ』

『……うん』



夜は更け3日目の夕方に私達は地下墓地(カタコンベ)の町に辿り着いた。




続きは明日です。

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