街道を行く
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とても励みになります。
翌朝、アリエルと泊まった日は定番となる濃厚な口づけで目を覚まし、少しイチャついた後旅の準備の為に着替えを済ませ、全ての荷物を鞄に詰め込み部屋を出るとキャッティさんとクゥさんが待っていた。
「おはようなのれす!」
「おはよう、サーラ、アリエルさん」
「おはようございます」
「おはよう」
2人を見ると荷物を背負い袋に詰め込んだ姿が背負子を背負っているかの様にすごい事になっている。
アリエルはセキュリティはついて無いけど、ポシェットタイプのホールディングバッグを持っていてその中に荷物を詰めてある。
ちなみに私の鞄はショルダーバッグ、たすき掛けスタイルで、普段はローブで見えない様にしている。
「サーラもアリエルさんもホールディングバッグ持ってるんだぁ……いいなぁ」
「仕方が無いれすよ。あれはメチャクチャ高額なのれすから」
「それで荷物は全部かしら?」
アリエルがキャッティさんとクゥさんの背負っている荷物を指差して聞くと、コクコク首を振る2人。
「確か……うん、あった」
アリエルが2つ袋を取り出して広げると、ナップサックだった。
「容量もそんなに入らないし、ダサいけど、これでよければあげるわよ」
「い! そんな高価なものあげるなんてとんでもないです。せめて買い取らせてくださいぃ」
「お、おおお、お金足りるれすか?」
なんの気兼ねなしに使っていたこのホールディングバッグ、実はそこまで超高額とは思いもしなかった。
『ホールディングバッグの相場って幾らぐらいなの?』
『1番安いもので金貨250枚ってところかな?』
『はいぃぃ!? そ、そんなにするのぉ!』
『あたしのポシェットは収納はそこまで大容量じゃないけど、レアデザインバッグだったから700枚もしたのよ』
金貨1枚は10万円相当に値する。その為1番安い金貨250枚のものでも2500万円する事になる。じゃあ私の持っているバッグは……
値段を聞くのが怖くなって私は言うのをやめておいた。
「いいのよ、どうせ使ってなかったものだから、大切にしてくれるならそれでいいわ」
恐縮している2人に時間も無いからと半ば強制的に手渡し、感謝しながらキャッティさんとクゥさんが荷物を詰め込んだ。
朝食を済ませて待ち合わせの場所に行くと既にセインさん達が待っていて、テトラさんがモールを背負いながら尻尾と手をブンブン振っている。さすがデプス4まで行けるだけあるのか、セインさん達は全員ホールディングバッグを持っている様で、空っぽに見えるバックパックや大袋を持っていた。
「これで7人揃ったな」
「それにしてもよ、アリエル以外全員見事に前衛だなぁ」
「どうせ街道を歩くだけなんだから問題ないでしょう?」
「ちげぇねぇ」
街道を7人で会話をしながら歩いて行くと、行商人達や同じ様な冒険者達の姿も多く見られ、盗賊情報も魔物が現れたと言う情報もないため、本当にノンビリと旅行か何かを楽しむ様に歩いて行った。
時折親しげに声をかけてくる冒険者や行商人とも仲良くなっていき、会話をしたりフルーツを分けてもらったりして、旅行どころかピクニック気分になってくる。
地下墓地の町まではだいたい3日ほどで辿り着く。1夜目、あちこちで野営ができはじめたところで私達も野営についた。
「こんだけ野営しているなら見張りも必要ないだろ。どうせ出てきたってせいぜい野生動物辺りで、この数の野営見たら大抵は逃げ出すさ」
「シリクそうもいかないだろう。いきなり俺たちのところに姿を見せる事だってないわけじゃない」
結局見張りの順番を決めて休む事になったが、何事もなく朝を迎えた。
2日目の日中の移動は何事も起こる事なく進んでいき、問題が起こったのはその日の夜だった。
「で、出たぞぉぉ!」
遠くからこんな声が聞こえてきた。
「噂に聞いた人探しをしている謎の人物のご登場か」
シリクさんがそう言って一応装備を整えている。見ればセインさんやテトラさんも装備の点検をしている。
『サーラ、もしかしたらスネイヴィルス様が言っていた事と関係があるかもしれないから、用心に越した事はないわ』
『そうだね』
感知と予測を使っておく。アリエルも騎士魔法が使える様になったため、同じ様に使った様だ。
「……違う」
「違う……」
「……お前でもない」
そう言って徐々に近づいてくる。まずセインさん、次にテトラさんにシリクさん、次いでキャッティさんとクゥさんと近づいては違うと言って通り過ぎていく。
アリエルの前まで来て見つめた後、「お前じゃない」と言って最後に私を見てくる。
心臓が高鳴り、不安が押し寄せてくる。
なかなか私の前から動かずに見つめてくるその人物は、ごく普通の男でおかしい点といえば焦点が定まっていないぐらい……
『サーラどうする?』
「おいおい、いつまでサーラんとこにいるつもりだ」
「サーラ、さんから離れろ!」
『もう少し様子を見てから』
いつまでも離れず見つめてくる男に業を煮やしたシリクさんとテトラさんが武器を構えてにじり寄っていく。
セインさんとキャッティさんとクゥさんも武器を構えて身構えはじめた。
男がニタァと笑うとフラフラと私から離れ去っていった。
「なんだったんだあれは一体」
「サーラ、さんだけ違うと言ってすぐに離れなかった」
「でも、立ち去ったのだから大丈夫れすよね?」
「だといいがな……って、何そこイチャついてやがんだ!」
心配したアリエルが私を抱きしめて頭を撫でていて、それを笑顔で撫でられている私。
「あら、女同士でくっついていたらいけないのかしら? ねー」
「ねー」
ぐぬぬとシリクさんが歯嚙みして言い返せないでアリエルを睨みつけるが、撫でられて嬉しそうな顔をしている私を見て、諦めたのか腰を下ろして黙り込んだ。
『サーラ、今日の深夜は注意が必要そうね』
『そうだね、真夜が勝負なのかもしれない』
私達は今晩何かが起こると予想する。不穏な空気が辺りを漂っている気がした。
本日分の更新です。
久しぶりに本編に関わりそうな話が混じりました。
ですが、このお話は外伝、あくまで本編には大きく関与しないように気をつけて描いていかなくては……
次の更新ですが、明日の予定です。
書き進みの状況によっては、もう1話更新出来るかもしれません。




