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不穏な噂

夕飯を食べに〔湖上古城亭〕に行き、テーブル席に着くとさっそくクゥさんが注文をし始める。


「ちょっとクゥ、あれだけクレープ食べてまだ食べれるの?」

「あれは別腹なのれす」



笑いあいながら持ってこられた食事をしていると、セインさん達がやってきて隣のテーブルに座ってきた。


「やぁこんばんは、明日の準備はもう整ったのかな?」

「迷宮に入るわけじゃあるまいし、地下墓地(カタコンベ)の町まで街道をたったの3日でしょう?」

「今からでも大丈夫れすよ?」

「コンサート様に服は買ってきたわよ?」

「そうか、それなら良いんだ」


たぶん隣のテーブルに着いた挨拶代わりのつもりが、団結した女性陣の前にセインさんもタジタジの様子で困っている様に見える。


「セインさん達はあれからどうしていたんですか?」


その様子が可哀想になって私が声をかけると安堵の表情を浮かべる。

コロナさんが注文をしている間に身を乗り出してシリクさんが今日聞いた噂を話し始めた。


「知ってるか? 今日町に超絶可愛い4人組が現れたんだってよ。それを追って俺たちも見に行こうってなったんだけど、行った時にはもういなくてどっかの宿屋に入って行ったらしくてそのまま消えたらしいんだ」



それを聞いて私たちが顔を見合わせて、ニマニマ笑顔を浮かべあう。


「ふーん、それは残念だったわね?」

「もしかしたら近いうちに会えるかもしれないですよ〜」

「コンサート辺りかもしれないれす」


あはは……



「そういえばシリクが変な噂を聞きつけたらしい。なんでも夜な夜な街道に誰かを探し求め彷徨う人影が近づいてきて、お前じゃないとか言いながら去っていくんだそうだ。

ま、特に害もないらしいから気にしなくても良いだろうけど、念のため気をつけておいて欲しい」


それを聞いて一瞬、昔似た様なことがあった事を思い出して引きつった顔になっていた様で、心配したテトラさんが声をかけてくる。


「大丈夫、もし出てきてもサーラ、さんは俺が守るから」

「あらぁ、サーラだけなのね」

「テトラ様酷い!」

「い、いや、サーラ、さんが怖がってたみたいだから」

「なんなら俺が添い寝して守ってやるぜ?」


シリクさんがそう言った瞬間、酒場が静まり返り、アリエルはもちろんセインさんにテトラさん、テクセルさんからコロナさんまでが食事の手を止めて、シリクさんを睨む様に見る。

いや、よく見たら酒場で話し声が届く範囲にいた他の冒険者からも睨まれていた。



「あ、はははっ、冗談だ冗談。まいったなぁ冗談ぐらいでよぉ」


静まり返った酒場で必要以上に大きい声で、酒場にいる人達に聞こえる様に焦った口調で言う。


「お前の場合冗談に聞こえないんだ。もし戻ってきた時に下手にちょっかい出していたら、俺の魔法で呪いでもぶっ込んでやるから、そう思っておけ」

「コロナ……そこまでするか?」



すぐに酒場は騒がしさが戻り落ち着きを取り戻した。

隣に座るアリエルが私を肘打ちしてきて、片目を瞑って見せた。


「サーラはモテモテだねぇ、キシシッ!」


そう言って笑う。


むぅ、アリエルの意地悪。




食事も済み、セインさん達と別れた私達は宿屋に戻ってきて会話を楽しみながらお茶を飲んでいる。


「サーラさんまたあれが食べたいれす!」

「あれってクレープですか?」

「あー、私も食べたいなぁ」

「材料はまだあるからちょっと待っててください。アリエルはどうする?」

「うん、食べる」


アリエルは食べるとは言ったけど、何かを考えている感じで気になったけど、とりあえずクレープ生地を焼いて4枚バナナと生クリームを巻いて手渡していき、食べながらまた会話を楽しんだ。



「ねぇそろそろお風呂行くけど、サーラとアリエルさんはどうする?」

「あ、行きます」



話がひと段落したところでお風呂に入ることになって、脱衣所に向かい湯着に着替え、お湯に浸かる。


「明日から移動だね。なんかずっと迷宮の町にいたから旅行に行くみたい」

「あたしも大戦以来かしら。あの後この町に来てずっとここにいずっぱりだったし」

「サーラさんは何処から来たんれすか?」


いっ! そういう事聞かれること考えてなかった。まぁマルボロ王国でいいかなぁ。


「マルボロ王国ですよ」

「じゃあやっぱり大戦の時戦ったんだ?」

「一応ですけどね」


あまり触れられたくなく、適当にごまかしながら返事をしていく。


「じゃあ、サーラさんはマルボロ王国で侍女をやっていたんれすね」


うわ、これは下手に返事できないや。


「そうですよ」

「じゃ、じゃあ、王様とか女王様にも会ったんれすね」

「会ったと言うか……侍女でしたからね」

「羨ましいれす!」


目を輝かせて私の事をクゥさんが見てくる。


「そうだよね、私もそう思う。だって新国王のマルス様って英雄の1人でしょ」

「そ、そうですね」

「あたしは国王になる前の時にレジスタンスの隠れ家で会ってるわよ。と言っても見ただけだけど」

「へ、へぇ〜」


うぅ、すごく受け答えしにくい。


気がついてくれたのか、アリエルがそろそろお風呂を出ようと促してくれて何とか乗り切った。



お風呂から出てそれぞれ部屋に分かれて、アリエルと2人きりになった。


「ひゃ〜、危なかったよぉ」

「そうだね、あたしなんか危うくサハラさんのこと言いそうになっちゃった」

「うわぁダメだってば!」

「分かってるって」


そう言って背後から抱きついてきた。お風呂上がりのアリエルからいい匂いがする。首を回してキスをしようとしたところで、気配を感じてそちらを見る。


「うおっほん……」

「誰よあんた!」

「【自然均衡の神スネイヴィルス】様!」

「え! 嘘?」



部屋の中には【自然均衡の神スネイヴィルス】様がいた。




本日分の更新です。


次回は明日更新します。



独立した話のつもりでいるけれど、本編に絡めてしまいたくなるこの気持ちを抑えるのが大変です。

もっとも終わりが見えなくなり過ぎない様にもしないと……

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