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迷宮を覗く

冒険者ギルドに依頼を出して館に戻るだけになった私は、木陰に腰を下ろしてデプス4の迷宮にいるアリエルの状況を見る為に集中してアリエルの視界を借りる。


瞬時に景色が変わり、迷宮の中にいるような状態になった。先頭を歩くオルカさんとポラベアさんの背後をアリエルがついてきている様だった。特に走っているわけでもなく回廊を移動中のようだった。


もちろん私自身は座っているだけだけど。


『無事で良かった』

『あ、サーラ。うん大丈夫だよ、そっちはどうなの?』


手短に領主同士の争いに巻き込まれて大変な事になっている事を伝えた。


『助けに行きたいけど今晩じゃ絶対間に合わないなぁ』

『こっちは大丈夫だよ、それよりアリエルの方はどうなの?』

『こっちも今の所はオルカも何も反応示さないから大丈夫そう、っと玄室に入るからごめんね』



視界だけそのままで見続けていると、玄室内に突入していくオルカさんとポラベアさんの姿が見えて、小走りで中にアリエルが入り込んだのか景色が早く動く。

迷宮にいる錯覚から、気がつけば私は感知(センス)予測(プレディクション)を使っていた。


玄室に入ったオルカさんとポラベアさんは辺りを見回して魔物を探しているようで、辺りを見回している。



『アリエル後ろ! 真横に飛んで!』


返事はなかったけれど私を信じて横っ飛びをした様で、景色がぐるぐる回る。


「アリエルどうした! うおっ!フェイズスパイダーだ!」


ピシュッ


無言でオルカさんが矢を放つが既にフェイズスパイダーの姿が消えていた。




フェイズスパイダーとは2メートルもの巨体に、顔に当たる部分が人の顔の様に見える蜘蛛で、エーテル界から物質界に狩りにやって来た貧欲な捕食者。

エーテル界と物質界を自在に行き来する為、攻撃の機会が少ないうえに、毒を与えて捕らえてエーテル界に引きづり込み、弱ったところを捕食する。えげつない魔物だ。



『うんちくは良いから来る場所教えて!』

『あう……えっとアリエル魔法の準備して待機して』

『分かったわ』


「【自然均衡の神スネイヴィルス】の名において、次元界移動するものを阻止する光を放ちたまえ」


『アリエルの真上!』


真上に視線が映ると2メートルの巨大な蜘蛛、フェイズスパイダーが姿を見せてアリエル目掛けて襲いかかってくる。アリエルは掌を真上に向けて、


次元間移動拘束(ディメンショナルアンカー)!」


緑色の光線が掌から放たれ蜘蛛に命中する。そのタイミングで視界がブレたと思ったら、ポラベアさんに蜘蛛からの一撃を引っ張られて投げ飛ばされた様だった。


体を起こしたアリエルが蜘蛛に視線を移すと煌めくエメラルド色に包まれている。


「これで次元間移動出来なくなったわ!」

「あとは任せろ!」


エーテル界に逃げ込めなくなったフェイズスパイダーはオルカさんとポラベアさんの敵ではなく、あっという間に仕留められた。


『ありがとうサーラ』

『うん』


アリエルの視界にいるオルカさんが私を、アリエルを見つめている様に見える。


『前にオルカの直感鋭いって言ったよね? 疑われてるから後は任せて、サーラはサーラのやるべき事をやって』

『うん、アリエル気をつけてね』



そこで集中を解いて視界が元に戻る。

実際には見えていたけど、集中し過ぎて回りに目を向けていなかっただけだけど。


って、うわあぁぁぁぁぁぁぁ!


周りを見たらいつの間にか人だかりに囲まれていて、それをセインさん達が守ってくれていた様だった。



「あ!、サーラ、さん大丈夫?」

「テトラさん……えっと、はい?」

「何こんな木陰で寝てんだよ。無防備にもほどがあるぞ」

「街中だから安全かなぁと……」

「馬鹿かお前は! スリだって人攫いだっているんだ。お前自分の事もう少し分かれよ」

「自分の事、ですか?」

「サーラさんは美人だから自覚しろとシリクは言いたいんだよ。もちろん僕も同意見だ」


あはは……変なところは男のままなんだよね。でも体に触られたりすればすぐに気がついて対処出来る自信はあったし、鞄だって私以外中身は取り出せないから大丈夫だと思うんだけどなぁ。



で、セインさん達もギルドの依頼を引き受けて館に向かう途中、木陰に座り込んでいる私を見つけたそうで、人だかりが出来ていて危なかったから見守っていてくれたらしい。


「今朝そんなに疲労していた様にはみえなかったんだがなぁ」

「いやコロナ、あの時サーラさんは……」

「うわぁあ!! セインさん余計な事言わないでください!」

「あ……す、すまない」



人だかりを避けながらセインさん達と館に向かい歩き出したところで、人だかりも一緒についてくる。


振り返ると手を振ってきたり、顔を赤くして背けたり、喜ぶ者様々な反応を見せる。


「あのぉ、なんで後ろの人達はついてきているんですか?」

「おいおい、お頭大丈夫かよ。俺らを含む後ろの奴全員、依頼を引き受けた冒険者だぜ?」


そう言いながらシリクさんが私の肩に手を回してきた。



「シリク、お前とは短い付き合いだったな」

「ですね」

「はぁ? 何言ってんだお前……ら……」


慌てて肩から手を退けて距離を置いたかと思うと、やたらと背後を警戒している。

振り返っても人だかりがついてきているだけで、特に何かいる様には見えない。


不思議そうに首をかしげる。


「シリクの奴、サーラさんに馴れ馴れしく肩に手なんか回したから、背後の冒険者達に睨まれたんだよ」


セインさんがそっと教えてくれる。

それを聞いて思わずため息をついて、頭に手を当ててしまう。




館の敷地に辿り着くとさらなる人だかりが出来ていて、私の姿を見るなり大歓声が起こる。


「俺たちが守ってやるぜ!」

「安心してくれサーラさん!」

「何度見ても美人だよな」

「いや、あれは可愛い、だろ」

「でも、もうすぐ人妻になるんだよなぁ」

「俺たちで祝福してやろうじゃないか!」

「嫌だ! 俺は迷宮の領主だけは守らねぇ」



……な、何これ?



「サーラ、さん大人気」


パタパタ尻尾を振りながら言うテトラさん。


守るの領主達、だからね?




本日分の更新です。


こんなに長くするつもりはなかったのに、どんどん長くなってゆく……



次の更新は明日です。

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