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遺跡の領主の怪しい行動

本日2話目です

近く3人に警戒しながら鞄から杖を取り出すと、先頭を歩く男が手を前に差し出して振りながら敵意はない事をアピールしている。


「何か用ですか?」

「昨晩は、その、済まなかった」


そう言うと3人共一斉に頭を下げてくる。


「特に何かあったわけではないのでもういいです。それより……」


瞬時に聞いたりしたら面倒な事になりそうだと判断して途中でやめる。


「ああ、俺達が領主に従っていた理由か……」


聞いてません。聞きません。聞きたくないです。


「実は……」



結局話を聞かされる事になってしまう。

彼らは遺跡の領主の土地の遺跡探索をしている冒険者で、本当は仲間があと1人いるんだそうで、それが女性だと。

もう言われなくても分かりそうな内容で、遺跡の領主に見初められ妾に誘われるが断った。それが領主の逆鱗に触れ、あらゆる手段を使いその女性に罪を被せて領主の館に罪人として連れ去ったそうだ。

冒険者ギルドを使ってなんとか抗議に成功するけど、解放の条件として今回の役割をやらさせられたという。

あの時私が「つまり私がおとなしく従って、蹂躙されればそれでいいと思っているわけですね」と言った時、自分たちがしていることが遺跡の領主と変わりがない事に気がついたという。


「結局、あの時迷宮の領主が来なければ、俺達は同じ事をしたんだと思う」

「そうですか。でも私はこうして無事で済みました。貴方達がもし躊躇してくれなかったら今頃どうなっていたか分かりませんでした。ありがとうございます」

「礼を言うのは俺達の方だ」


キリがない。そう思って頭を下げて立ち去ろうとするけど、逃がそうとする気配がなく、何かを言いにくそうにしている。


「何か他にあるんですか?」

「実は……」


彼らはとんでもない事を言い出す。遺跡の領主はとある怪しい人物と接触していて名前までは分からないが、怪しい魔術の様なものを教わっていたそうだと言う。


「あれはたぶんガウシアン王国の紋章だったと思う」


その国の名前は私に衝撃を与える。

さすがにその国の名前をだされれば放っておくわけには行かず、何をどうしたのか詳しく聞いてみると、必要な品を揃えてある場所に埋めて願えば叶うというものだった。


そんな事で願いが叶うなんてありえないとは思うけれど、彼らが嘘をついているとも思えない。確認だけはしてみた方が良いよね』


「それで遺跡の領主は何を願ったのか分かりますか?」

「いや、そこまでは……」

「何故それを私に」

「あんたは迷宮の領主に信用がある人と思ったからだ。頼む、何か嫌な予感がするんだ。すぐに迷宮の領主に伝えて欲しい」



了承して出てきたばかりの館へと踵を返し、3人も証人として来てもらうことにした。

館の前に行くとメイド達が私が戻ったことに喜びの声を上げる。


「ごめんなさい、別に戻ったわけではないの。至急アルクレスタ様に取り付いで貰える?」


ぺこりとお辞儀をすると1人のメイドが走り去っていった。

程なくして笑顔のアルクレスタさんが姿を見せるが、私と一緒にいる3人を見てすぐに何かを察したのか会席で見せる様な顔に戻った。


「サーラ、考え直して戻ってくれたわけではなさそうだね。何かあったのか?」

「ここでは何ですので」

「分かった。3人も必要なんだな? 一緒に来たまえ」


応接室の様な場所へ連れて行かれ、そこで侍女服姿のカトレアさんがお茶を用意して入ってきた。


「まぁ、サーラさんお早いお戻りですねぇ」

「ち、が、い、ま、す!」


にこやかにそして鎧をガチャガチャ音を立てながらお茶を準備していく。


カトレアさんは鎧さえ着ていなければ、十分侍女の素質を持っている。鎧さえ着ていなければ。


お辞儀をしてカトレアさんが部屋を出たところで、先ほどの話を私から話をして、詳しく3人にアルクレスタさんが訪ねていた。



「今遺跡の領主はどこにいるんですか?」

「今は賓客の部屋に閉じ込める形でいてもらっているよ。他の領主達も長い会議で疲れた様で、今日もここで休んで行くことになっている。今頃皆寝ていると思うな」

「アルクレスタさんは休まないで大丈夫なんですか?」

「君が心配してくれるだけで十分癒された。それよりそうなると、もう一晩だけ護衛を頼めないだろうか? 明日各地の領主が帰路に着くまででいい」


ぐはぁっ! 上手い具合に利用されたぁ。


「う、わ、分かりました」

「それは良かった。それと君達3人はどうする?」



突然3人に話を振られ慌てながらも何も考えていなかった様で返事に困っている様だ。

それを見越した様にアルクレスタさんは兵舎でここの護衛を一晩お願いする。


「もし何か動きがあるとすれば寝静まった夜だ。それまで3人は休んでいて欲しい。それとサーラは今すぐ冒険者ギルドに行って護衛が出来そうな冒険者を集めるための依頼書を出してきてほしい。条件はデプス3まで行ける冒険者がいいかな」



羊皮紙を取り出し、すぐに依頼を書き出して丸めると蝋を垂らして指輪印章(シグネットリング)で封蝋したものを私に渡す。


「頼んだ」

「お任せください」





3人とアルクレスタさんに別れを告げて早速冒険者ギルドへと向かった。


カウンターへ行くとサリアさんが私の姿を見るなりすっ飛んできて要件を聞きに来たので、領主アルクレスタ様からの依頼である羊皮紙を手渡そうとすると、指輪印章(シグネットリング)の封蝋を見るなり受け取るのを止めて、ギルドマスターを呼びに行った。



「お待たせしました。アルクレスタ様からのご依頼だそうですが……」


そ、そうだよねぇ。一介の冒険者が領主の依頼の羊皮紙持ってるって怪しいよねぇ。


「急ぎだったのでこの格好でし……」

「いえ、封蝋は本物だし噂は聞いておりますから問題ありませんよ」

「はい? 噂!?」

「ん、あぁ、領主夫人になると噂になっていて、現に今、館暮らしですよね」


どぅええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇい!

噂が一人歩きどころか一人走りしてるうぅぅ。


「いえ、それは侍じょ」

「サーラさんの館暮らしを知って嘆いている冒険者も多いらしいようで、酒場が葬式ムードらしいとか」


はっはっはじゃなーい!それに私、この町にそんな沢山の知り合いはいないはずだし!



「ちょ、ちょっと待ってください!」

「ああ申し訳ありません、急ぎの依頼でしたね。では拝見させてもらいます」


違う、そうじゃない。あ、依頼は急ぎだけど。うう……


冒険者ギルドのマスターは羊皮紙を見ると職員をすぐに数名呼び、古城へ連絡を出す為の早馬を出させ、町中の宿屋酒場に通達する指示を出し始めた。



「夕方までに館まで間に合った冒険者を派遣させますとアルクレスタ様にお伝えください」

「……はい」



これは後でアルクレスタさんにしっかり言って責任とってもらわないと!




次回は明日更新です。

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