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事後処理

私が目覚めて間も無く会議の方が終わったらしく、急ぎ足でやってきたアルクレスタさんが無事な私の姿を見るなり抱き締めてきた。

その姿を見てセインさん達が驚いて目を見開いて見ている。


「無事で良かった」

「あの、アルクレスタさん。その……」

「サーラ、今、服着てませんよ」


抱き締められて見えはしなかったけど、今私はスッポンポンで、セインさん達にバッチリ見つめられているんですが!


抱き締める力が弱まったのを見計らって直ぐにシーツを体を隠す。


「見えた」

「ああ、バッチリ目に焼き付けたぜ」

「う、うむ」


ヘコヘコヘコヘコ……


「テトラ!私の身体にしがみついて腰をふらないでくださいよ!」

「す、すまん。獣人のサガだ」


うきゃあぁぁぁぁ!

見られた! 見られたの?




落ち着きを取り戻し、状況の説明をし始めた。


まず、遺跡の領主の処遇は要観察となってひとまず解放されるそうだ。

それを聞いてキャッティさん達が動揺するが、アルクレスタさんは説明を続ける。

それによると、遺跡の領主の兵達は失敗がわかると自害してしまい、証拠が一切取れず勝手にやった事となってしまったそうだ。

遺跡の領主が逃げ出したのも、兵士の反乱で自分が疑われると思ったからと言い逃れをしたと言う。


「ありえない、俺が見ている! 」

「私もその場に一緒にいました! 【旅と平和の神ルキャドナハ】様に誓って証言しますよ」

「それがダメなのだ……」



相手が貴族であるため冒険者では証人になりえないと言う。

いわゆる権力による揉み消しを図ったと言ったところで、あの豚は最初から失敗したときの事も想定もしていたのだろう。



「要観察と言ったけれど、どう処遇するというっつーんだ?」

「君は確かシリクだったか? 安心したまえ、遺跡の領主には本来私につけるべきであったセブンスターナイトがイスカニエル様の権限を持って見張る事になった」



明日にも辿り着くであろう7つ星の騎士が、遺跡の領主の見張りとしてしばらく様子を見て、その間に新代表としてアルクレスタさんを選出するそうだ。


「アルクレスタさんが新代表に選出されたら何かが変わるんですか?」

「私に最初の権限である各地の領主の代表を選出が出来るのだ」


つまり、新代表が決まると各地にいる貴族から新たに領主が選びなおす事が可能になると言う。

大抵はいざこざを避けるためそのまま領主が変わる事がないが、今回ばかりは遺跡の領主以外が了承した事で決まったそうだ。


「遺跡のには横暴だと言われたがね」



アルクレスタさんは遺跡の領主だけ変更するそうだ。



「サーラ、君には私の妻になって貰えないだろうか。そして支えて欲しい。もちろん君が後10年と生きられないのは分かっているが、絶対になんとかしてみせる」


あ、言っちゃった。


一斉に私に視線が集中する。


「え!? サーラ、どういう事?」

「サーラ、さん?」


うー、内緒にって言ったのに。


仕方がなく私は後10年で死ぬ呪いのようなものにかかっている事を話し、付け加えてそれを甘んじて受け入れたいと話した。


「なんでれすか!?」

「呪いなら私の神聖魔法で治せるのでは」

「私も一緒に神に祈らせて貰う」

「力及ぶか分かりませんがぁ、私も【守護の神ディア】様に祈りますぅ」


神聖魔法を使えるテクセルさん、アーテミスさん、カトレアさんが進み出てくれるけど、私はそれを首を振って断る。


「何故だ!」


何故だってそりゃあ嘘だもん。呪いじゃないし下手にもし解けたりでもしたら、それこそ大変な事になっちゃう。


「私がそれを受け入れてますから。だからこの事はそっとしておいて貰いたいんです」



もちろんこんな事で納得なんかしてもらえるはずもなく、生きる事の素晴らしさなんかを説き伏せようと必死になってくる。


「ならその10年の間だけでもいい。私が君の残りの人生を幸せにする。してみせる。子も作れば生きたい気持ちも出てくるかもしれない!」


思わずぽわぁっと上の空になる。私がアルクレスタさんとの間に子を作り、成長を見守る光景が脳裏をよぎったけど、直ぐに首を振って拒絶の意思を見せる。



「もうこれ以上はやめませんか? こればかりは何がなんでも譲れませんので。

そうでないと私は気に入ったこの町を、今直ぐ立ち去らないといけなくなります」


ここまでの拒絶を見せるとさすがのアルクレスタさんもキャッティさん達、セインさん達も何も言えなくなったようで押し黙ってしまった。


ちょっと言い過ぎかもしれないけど、さすがにこればかりは仕方がないのよね。って、あれ? なんで私泣いてるんだろう。


そうか。こんなにも私の事を想い、心配してくれる人がいるからか。



アルクレスタさんは諦めたのかふらふらと部屋を出て行き、続くようにセインさん達も部屋を後にする。キャッティさん達女の子だけになるとベッドから出て着替え始め、髪の毛をポニーテールに紐で縛ると、いつもの冒険者衣装に黒いローブを身に纏う。


「本当にそれでいいの?」

「はい」


それ以上キャッティさんも何も言わなかった。窓の外を見ると陽が完全に登り町を照らし出している。


私は部屋を後にしてアルクレスタさんに挨拶を済ますと侍女としての依頼をキャンセルして館を出ようとした。


「サーラ、これを」

「これは……」


給金だと言って渡される。かなりのお金が詰まっていて、びっくりして受け取るのを断ろうとすると、今日までの働きの分だと、そして問題も取り敢えず片付いたから依頼は達成したと言って手渡された。



「サーラ、考えが変わっ……」


きっとこの人はまた私を惑わす言葉を言うと思い、私は私自らの口でアルクレスタさんの口を塞いで黙らせる。

呆気にとられているアルクレスタさんから口を離し頭を下げると館を後にした。


館を出るとき、ふと視線を感じて振り返ると、一室からイスカニエル様がこちらを見ていて、会釈するとにこやかな笑顔を見せていた。




館の門を出てすぐの木陰から見覚えのある3人がこちらに近づいてくる。遺跡の領主のところで私を捕まえようとした冒険者達だ。


また厄介な事に巻き込まれそうだなぁ



私の受難は止まる事はなかった。



本日分の更新です。


次回更新は明日の予定ですが、進行具合によっては本日もう一度更新するかもしれません。

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