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見事な采配

3人の姿を見る限りどう見ても装備も揃ってなくてまるで冒険者か何かのように見える。



「済まないが、そう言うわけで出来ればおとなしくしてもらえると手間がかからないで済む」


3人のうち1人が言ってくる。雇われたにしては様子がおかしい。どう見ても喜んで従っているようには見えない。


武器は全員剣で、戦士のようだけど見た目的には実力はさほどないように思える。もっとも私が異常な強さを持ってしまったからなのかもしれないけど、



「つまり私がおとなしく従って、蹂躙されればそれでいいと思っているわけですね」


囲ってはきたけど私の言葉で躊躇して3人はお互いの顔を見合う。その姿はやっぱり何かおかしいとしか思えない。



「ええい、貴様ら! おとなしく儂の命令に従わなければ、どうなるかよもや忘れたわけではあるまい!」


何か弱みを握られ嫌々ながら従っているようで、遺跡の領主の言葉で覚悟を決めたのか頷き合ってしっかりと武器を構え出した為、私も身構える。


「あんたに恨みはないけど、俺たちは、俺たちわあぁぁ!」


3人が鞘のままの剣を振りかぶってきたその時、バタンと扉が開け放たれた。



「そこまでにしていただこう」


扉の方を見るとアルクレスタさんとキャッティさん達がいた。



「迷宮の! ……ちょうど良かったぞ。その女が儂の命を狙ったのだ。即刻捕らえて貰おう」


アルクレスタさんは私を見てそっと微笑む。まるでもう大丈夫だよとでも言ってくれているように見えた。そして遺跡の領主に向き直り、落ち着いたまま静かに口を開いた。


「その前に一つ伺いたい。ここに私のサーラがいるのは分かるとして、そこの3人は一体何者なのか? 賓客用の部屋へは領主以外いないはずだと聞いていたのだが。」


ピンチに姿を現し、私のサーラとか言われてドキドキしてしまい、顔が真っ赤になる自分自身に気がつく。


遺跡の領主は抜け目なく、アルクレスタさんを睨みつけ、


「儂も同じよ。いつ命が狙われるか分からんから護衛を雇っておいたのだ。そしてコッソリとこの部屋にいさせたまで」


やはりこの手の豚は知恵がまわる。あらかじめ想定してなのかわからないけれど、平然と3人を護衛と言い放った。


「なるほど、武器も持たない女がどの様にして貴方を殺そうとしたのかご説明願えるかな?」

「そんなもの簡単だ。眠っている儂の首でも締めればそれで済むだろう」

「それでは尚のことをおかしくはないですかな? もしそうであれば貴方は寝衣になっているはずで、そのデスクではなくベッドの上か側にいるはず。

サーラが入ってきただけで殺しに来た、は理由にはなりませんぞ」


完璧なまでのアルクレスタさんの言葉に遺跡の領主もグヌヌと押し黙る。


「ああ、なるほど。よその土地に来た不安から勘違いされた。そうですな?」

「む、うむ。そうだ、その通りだ。儂が早とちりをした様だ。サーラと言ったか? 儂の勘違いであった許せ」


こ、この豚があぁぁぁ。


ここで少し冷静に考えて、アルクレスタさんが全て上手く丸め込んでいることに気がつき、私は怒りを抑え引きつった笑顔でお辞儀をした。


「これで一件落着ですな。それではゆっくり休んでくだされ。

サーラ行くぞ」

「は、はい」




遺跡の領主の部屋を出てしばらく歩いた所で、私はなんで気がついたのかを尋ねてみた。


「私は読唇術が得意なんだよ」



あの会食で私に遺跡の領主が近づき声をかけた時に、読唇術で何を言ったのか分かっていたと言う。そこで遺跡の領主の部屋に向かったのを見てキャッティさん達を連れてやってきたという。


隣を歩いていたキャッティさんが肘打ちをしてきて、ボソッとこのぉ、愛されてるねぇ。などとニヤけながら言われると、妙にアルクレスタさんを意識してしまい、頭が下がってしまう。



キャッティさん達を部屋まで送った後、2人で部屋へと向かう途中、


「その、ありがとうございました」

「君を守るためなら私はなんだってするよ」



『胸が締め付けられる』

『え? 何が締め付けられるのサーラ』


締め付けられる想いから手を胸に当てたつもりが、間違ってアリエルと繋がってしまう。


『う、うううん、何でもない。何でもないよ』

『サーラ』


アリエルに騙しきれそうになく、 今あった事をざっと話す。嫌われてしまうのではと心配もしたけど、返ってきた言葉は違った。


『男に戻った時はあたしがケアしてあげるから、サハラさんが心を許せるのならありなんじゃない?』


はっ! そうだった。危ない、危なかった。


魂が女性にしようと蝕み、男であったことを忘れさせようとしていたけど、アリエルのおかげで思い出す。


『ありがとうアリエル』

『うん、あ、あと……』


「サーラ、どうかしたのか?」


私がアリエルと繋がっている間、立ち止まって黙っているのを心配したアルクレスタさんが、顔を覗き込む様にしながら肩に触れてくる。


「な、何でもありません」


肩に触れられた事によってアリエルとの繋がりが途切れてしまい、そこで話が途切れてしまう。


後でもう一度繋げて状況を確認しなきゃ。




部屋に入るとアルクレスタさんは当たり前の様に服を脱ぎ始め、私はベッドに座って目を閉じてアリエルの視界を垣間見ると、デプス4特有の洞窟の様な場所で休んでいる様に見えたため、もう一度繋がって話しかけた。



案の定デプス4に到着したところだったらしく、しっかり休んでから先に進む方針らしい。

アリエルが先ほど言い掛けたのは、もし緊急時に私と距離があっても始原の魔術が使えたら助けて欲しいと。もちろん可能なら喜んで助けると伝えた。


その為には明日は私が注意しておかないといけない。アリエルからは私に繋がる事は出来ないから。




アリエルとの繋がりを終えて目を開けると、心配そうな顔をしたアルクレスタさんがジッと見つめていた。




これで本日分と土日分の3話更新で、明日明後日はお休みさせていただきます。


次回更新は月曜日の祝日に更新します。

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