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会食

明日分です。後ほど日曜日分も更新させます。

料理が次々と運び出され、食事を取りながら話し合いが始まる。各領主の背後に立つ侍女達が領主に言われるままワインなどの飲み物を注いだりとテキパキと動いている。

私はマルボロ王国で教わった言われる前に察して行動するスタイルで、アルクレスタさんが何かを要求される前に行動していた。



刺客襲撃の話から始まり、どの領主も当然ながら否定する。中には他所の、マルボロ王国の刺客ではなどと言う者まで出てきた。


「つまり、私はマルボロ王国にまで目をつけられるほどの大物というわけかな?」


アルクレスタさんの切り返しが上手く、マルボロ王国を謳った領主はそれで黙り込んでしまう。


凄い。周りの領主達が圧倒されてる。やっぱりアルクレスタさんは聡明な人なんだなぁ。


そんな事を考えながら私は仕事をこなしていった。



結局無事だったこともあり、刺客の話もだんだんとうやむやにされ、現在のメビウス連邦共和国代表である霊峰の町の領主であるイスカニエル様が、7つ星の騎士団の1人を護衛に頼んだと……


げげっ! それって私が不味くない?



7つ星の騎士団とは、私の友人であり、先の大戦で英雄となったセッターが中心となって取り仕切っている、拠点こそ持っているものの、国としては一切機能せず世界平和のためだけに活動しているマルボロ王国が誕生する前の国、レドナクセラ帝国の騎士達で、騎士魔法を使いこなす集団だ。


つまり、もしセッターが来てしまったら、数少ない私がサハラであると正体を知っている人物で、他の騎士達もサーラとしての私を知っている。そうなるとせっかく所在を秘密にしていたのに明らかになりかねなかった。


でもまぁ、そうなったらそうなったで仕方がないか……



「それはありがたい。セブンスターナイトが来てくれればこれ以上の安心はありません。ご配慮感謝いたします。陛下」

「うむ」



そこで刺客の話は終わり歓談が始まる。

気を引き締めていた各町の領主の侍女達も楽にして、立ちながら提供される食事を口にし始めた。


「しかし迷宮の領主の侍女は素晴らしいですなぁ」

「うむ、儂も見ていて思ったわ」

「何も言わずとも全て察してくれよる。しかもそれがまた美人とくればなお羨ましい限り」

「ははは、嬉しいお言葉ですが、彼女は今だけやって貰っているのですよ」


何故か話題が私のことになり始め、盛り上がりを見せ始める。それぞれの領主に着く侍女達が羨む目で私の事を見られ、居心地が悪くなってしまう。



「今だけという事は近いうちに迷宮の領主の侍女を辞めると言うことかね?」

「そうなりますね」


ここでもアルクレスタさんは約束通り、プロポーズや私の寿命の話もしないでくれる。


ただ厄介な事に他の町の領主達から是非に侍女をと頼まれたり、中には結婚を申し込んでくる人まで現れ、頭を下げて全てを断らせてもらっていた。



「貴様! 侍女ごとき身分の分際で領主達の誘いを断るとは何事か!」


遂には怒り出す領主まで現れた。


「申し訳ありませんが、私は今回アルクレスタ様を護衛する為に雇われた冒険者です」

「何だと……それだけの振る舞いが出来て冒険者だと言うのか?」

「ははは、申し訳ない。遺跡の領主よ。この間の刺客で不安で冒険者を雇ったのだよ」


遺跡の領主と言われた肥って醜くだらしのない男は、驚きながらもなお食いさがることなく私に突っかかってくる。


「冒険者という事は何かを目的でもあるのか? 地位か? 金か?」

「いえ、ただゆっくりと過ごせればと」

「ならば儂の元に来い。いくらでもゆっくりと自由に過ごさせてやるぞ?」


うぅ、ひつこい。どうしよう……



「その辺にしておけ、遺跡の。我が国において冒険者は宝だ。済まなかったな迷宮の侍女よ」


霊峰の領主で現メビウス連邦共和国のイスカニエル様が、その場を諌めてくれた。


「その方、後で私の部屋に来ては貰えるか?」

「ご用命とあれば」

「うむ」



その後は滞りなく会食は終わり、片付けをキャッティさん達とメイドに任せ、私は各町の領主達をそれぞれの部屋へと案内する。


「先ほどは済まなかったな。其方があまりに美しく欲しくなり、つい言い過ぎた」

「いえ、私の方こそ申し訳ありません」

「しかし……本当に冒険者かと疑いたくなるほど見事な立ち回りだった。儂のところにも後で来てはくれぬか?」

「……畏まりました」


遺跡の領主はあからさまに下心が見て取れ、後ほど顔を出すのに抵抗があったのだけれど、アルクレスタさんの面子を保つ為にしぶしぶながら了承した。


全領主を案内し終えると、最初に部屋へと案内した霊峰の領主にしてメビウス連邦共和国代表のイスカニエル様の元へ赴きドアをノックする。


「イスカニエル様、お待たせ致しました」

「おお、入りたまえ」


失礼致しますと中に入り、用意してきたお茶を準備する。


「本当に見事なものだ。流石はマルボロ王国女王の侍女をしていただけあるな」

「やはり、覚えてらっしゃいましたか」

「忘れるはずなかろう」


実はイスカニエル様はマルボロ王国が建国された時に1度来たことがあり、元霊峰竜角山を登頂したマルボロ王であるマルスは元は旧トラキアル王国の男爵の子息であったため面識もあった。

その時に私が侍女として接待を受け持ったため覚えていてくれたそうだった。



「しかしまた何故冒険者になったのかね?」

「政治絡みから逃れたかったからです」

「結局逃れられなかった様だがな」

「確かに」


部屋に笑い声が上がり、穏やかなひと時を過ごす。


「それではそろそろゆっくりお休みください」

「そうさせてもらおう。

……そうだ。遺跡の領主には気をつけたまえよ。おそらくあ奴が刺客を送った張本人だ」

「何故それを私に?」

「本人がいる眼の前で言えるのかね? それに、迷宮のも気づいておるはずだ」


アッと思わずなり、自分自身の愚かさに顔を真っ赤にさせてしまう。


「完璧なようでそうでない部分がある。そこが其方の魅力なのかもしれんな」


はっはっはと笑われ肩身がどんどん狭くなっていく。


「そ、それではお休みなさいませ」


イスカニエル様の部屋から逃げるように出た私は、その足で遺跡の領主の部屋へ足を運ぶ。



純粋に私が狙いなのか、それとも他に狙いがあるのか。どちらにしても行くのだから気にしても仕方がないよね。



遺跡の領主の部屋の前まで行き、騎士魔法の感知(センス)を使うと、部屋の中には4人の存在が確認できる。しかもご丁寧なことに3人は1箇所にまとまって部屋の隅にいる。


あの辺りはクローゼットがある辺り。という事は隠れているという事ね。


予測(プレディクション)を使い、修道士(モンク)特有の呼吸法で気を巡らせてからドアをノックする。


「入れ」


入れ、ですか。


扉を開けて部屋の中に入ると、やはり遺跡の領主だけが見える場所にいて、3人の姿はクローゼットの中にいるようで姿が見えない。


「ご用件は何でしょうか、遺跡の領主様」

「うむ、儂の夜伽の相手をしてもらおう」


ど、どストレートでキターー!


「そのようなご用件であれば戻らせていただきます」

「儂の命令を聞けぬと言うのか。そうであれば無断で儂の部屋に入り、殺そうとしたとして、貴様を罰することも出来るのだぞ?」


わぁぁ、屑にもほどがあるぅ。ここで部屋を飛び出せばまさに思う壺で、証拠もなく地位的に豚に劣る私は不利になるだけだし、聞き入れれば豚の餌食。なんでこういう人間は、こういうことのために働く知恵だけは優れているんだろう。



「お好きになさってください。そのような脅し、私には効果はありませんよ」


その言葉で顔を真っ赤にして怒る遺跡の領主はまさに焼き豚にように見えた。ただし決して美味しそうではないけれど。


「お前ら出てこい! この女を儂の命を狙った罪人としてひっ捕らえろ!」


案の定クローゼットに隠れていた3人が姿を見せる。


こうして私は無実の罪を着せられ、勝手に罪人扱いされた。




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