従属化
宿屋に戻った私達は早速今日【自然均衡の神スネイヴィルス】様に会ってきたこと、従属化の話をする。
シリクさんとの話はもちろん内緒で……
「……という事で、アリエルが受け入れてくれれば、私の従属化する事で精神的に繋がりができるんだって」
「良いよ」
アリエルの返事は悩む間もなく、即答で返ってきた。
「いいの? 従属化だよ? 悩んだりしなくていいの?」
「だって、サーラの従属化でしょう? だったら別にいいよ。あたし信じてるから」
信じてる、その言葉がすごく嬉しかった。アリエルと恋人になって初めて、私から抱きしめて口づけをする。アリエルも私を抱きしめ返してきた。
「じゃあ始めるね」
「うん」
私は【自然均衡の神スネイヴィルス】様に教わった通り言葉を綴っていく。
初めて見る代行者としての私の力なのか、薄っすらと全身が淡い青い光を発する。その状態でアリエルの手を取って従属化するための言葉を唱える。
「汝アリエル、【自然均衡の神スネイヴィルス】の定めに従い従属化せん。汝、我、【自然均衡の神スネイヴィルス】の代行者サハラの剣となり、盾となり、愛し、敬い、慰め、その命果てる日まで従う事を誓うか?」
「誓う、誓います」
「ならば今日、今これより汝アリエルを我が手足となるゴッドハンドと認め、従属化とする」
全てを言い終えるとアリエルの体が私と同じく淡い青い光を灯し始める。光が消えていき完全になくなるとアリエルはポフッとベッドに倒れてしまった。
あ……アリエルを感じる……凄い、まるでアリエルが私の中にいるみたい。
胸の辺りに両手を当て目を瞑る。アリエルの暖かさが全身に伝わってくる。
目を開けてアリエルを見ると既に身体を起こしたアリエルが、私と同じように胸の辺りで両手を当てて、顔を真っ赤にさせながら私を見ている。
『サーラを感じる』
『私もアリエルを感じるよ』
言葉が必要なく精神で会話する。まるで2人が1つに繋がったように感じる。
スネイヴィルス様に教わった通り、集中してみるとアリエルの見ているものが頭に思い浮かぶように映像化される。
当然ながら今私の脳裏に映し出されているのは、胸の辺りで両手を当てて、アリエルを見つめている自分自身の姿だ。
「これであたしはサーラの、サハラさんの物に完全になっちゃったのね?」
「そう、なるのかな?」
「大切にしてね?」
「うん、大切にするよ」
アリエルが手を差し出して私をベッドに招かれて抱きしめ合う。
月夜の光に2人は包まれながら、長い時間抱きしめ合い甘い吐息が漏れる。
「ねぇサーラ、サーラはあたしを従属化したらどうなったの? あたしはサーラの居場所が分かって危険な状況かどうかが分かるみたい」
「私も似ているけど、見たものが見えるし私の力をアリエルに通して使えるみたい。 えっと……」
“私は自然均衡の代行者”
“あるゆる自然現象を想像し”
“具現化する”
“想像するは心地の良い風の流れ”
“空間に風を起こし”
“風のベールで包まん”
『アリエル、続き言って』
『うん』
「ブリーズ(微風)」
アリエルが最後の言葉を綴ると部屋中に微風か流れる。火照った2人の身体を優しく冷やしてくれる。
「凄い……これって始原の魔術よね」
「うん」
「あたしが行使したの?」
「途中までは私が力添えしているけど、行使したのはアリエルだよ」
アリエルが驚きながら自分の手をグーパーしながら見つめている。
「ねぇ」
「うん?」
「体の熱も冷めたし、続き、しよう?」
「……うん」
またアリエルが抱きしめてくる。部屋を流れる微風が心地良く、アリエルと私はお互いを確かめ合うように何度も抱き合い、気がついた時には2人眠りに落ちていた。
それに気がついたのは目が覚めて、朝日に照らされて隣で静かに寝息を立てて眠るアリエルを見たからだった。
そっとアリエルに顔を近づけ口づけをする。いつもアリエルがしているように、今日は私からした。
「おはよう、アリエル」
「おはよう、サーラ」
アリエルを従属化して初めての朝を迎えた。
本日分更新です。
めちゃくちゃ話長くなってますね……
さてアリエルが従属化してしまった為、外伝だけで終われない登場人物になってしまいそうです。
男に戻った時の反応を楽しみにしていてください。
次回更新は明日予定ですが、進行状況によっては本日もう一度更新するかもしれません。




