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誤解だらけの受難

私は今罪人審問されているーーー


「私はこの町の領主のアルクレスタだ。

サーラと言ったか? 虚偽罪と聞いたが事実か?」

「身に覚えは全くありません」


とも言い切れないのですけどね。


「それではギルドの報告は間違いであったと言うつもりか?」


ここで助かるためには友人であり国王であるマルスに貰った、マルボロ王国承認証明証を出すのが1番てっとり早いのはわかっているけれどそれだけは避けたかった。またこの場から逃げ出すのも簡単だけれど、それでは罪を認めた事と変わりがなくなってしまう。そもそもーーー



「虚偽罪とはそもそも何の虚偽ですか? 私は今日この町に来たばかりで、町中で危ないところをオルカさんに助けられて、冒険者ギルドで登録をしただけです 」

「虚偽内容は登録における内容とある。詳細は書かれて、いないな。ふむ……」


アルクレスタさんが私をジッと見つめてくる。まだ30歳ぐらいの若さだけれど、落ち着いていて聡明な雰囲気がある。


「この報告者は誰か?」

「はい、ギルド受付嬢の……」

「あぁ、もういい。サーラと言ったね、済まなかった。すぐに容疑を撤廃し解放しよう」

「えーと?」


今日これで何回目のえーとだろう。


「後で私の方から注意しておこう。君は気にしなくていい。うん、冒険者の登録という事は君も古城の地下迷宮を?」


違う、違います。ただ冒険者証が欲しかっただけです。なんて言えないよね。


「は、はい……」

「そうか、頑張ってくれたまえ」




何とか容疑は晴れ領主の館は出れた。のは良かったのだけれど、成り行きとはいえ古城の地下迷宮とやらに行く羽目になってしまった。


「ついてないなぁ……」


独り言をつぶやいてみても仕方がない。こうなった以上、古城の地下迷宮とやらをさっさと制覇してこんな町抜け出してしまおう。

まずはこういう時は情報収集から、なんだけれども今の私に当ては全くなく……

定番だけれどこういう時は酒場だよね。あと宿も先に決めておかないと。




宿は町で1番大きくセキュリティもしっかりしていそうな場所を選ぶことにする。お金の心配は友人であるルースミアが残してくれたお金が使い切れないほどあるため問題は全くなくて済む。宿屋が決まる頃には夕方になっていて、酒場に行くのにちょうどいい時間になっていた。



〔古城に浮かぶ月亭〕か。大きいし人もたくさんいるみたいだからここが良さそうかな?


〔古城に浮かぶ月亭〕に入ると中は冒険者達でごった返していて、カウンターしか席が空いていなかった。

私が入ると数名の視線を感じたけど、気にする事なくカウンター席に腰を下ろした。



「おー、黒髪のかわい子ちゃん、1人かい?俺達と一緒に飲まない?」


すぐに声をかけてきたほろ酔いの冒険者を見てみたけれど、武装などからあまり情報も得られそうにないので断る事にした。


「ちょっと色々と考え事がしたいのでごめんなさい」

「お、う、そうか、そうなんだ」


しつこく迫られる事なく、すぐに立ち去ってくれた。

酒場の主人に料理を頼み軽食を食べ、お茶を飲みながら周りの話を盗み聞いてみた。


やっぱり無理よねー。


慣れない事してもこの大人数の中から情報だけを聞き取る、なんて能力は私にはやはりなかった。


「はぁ〜」


さっき声を掛けてきた人でもいいから色々聞けばよかったと後悔する。


「どうしたんだい娘さん、ため息なんかついてせっかくの顔も台無しだぞ」

「あ、ご主人。すいません」

「いやいやいいんだ。何か困り事かい?」

「そうですねぇ、成り行きとはいえ古城の地下迷宮に行く事になったんですが、全く何もわからないんで……」

「ほぉ、娘さんも古城の地下迷宮に行くのかい。あそこは未だデプス4以上進んで戻った冒険者がいない場所と言うのは知っているかい?」

「ええ、そこまでは」

「ならそれだけで十分だ」

「はい?」

「それ以上行かなければ十分に稼げるよ」

「なるほど〜」


どうやらここにいる冒険者達は無理をしないで稼ぎながら生活しているということなのかもしれない。地下迷宮に行き、稼いで町で楽しむ。確かにそれはそれで十分なのかもしれない。きっと己の力量を試したいとか過信した冒険者がデプス4以上に進んで、戻ってこなくなっているといったところなんだろう。


あの人、オルカさんも同じなのかな?



そんな事を考えていると数名から危ないお誘いをされるので、全て断るとそこで引き上げてさっさと宿屋に戻ることにする。





旧トラキアルであるメビウス連邦共和国は地熱のお陰で温泉が湧き、大浴場もある所にはあって、ここ私が選んだ宿屋にももちろんある。


「こういう時はお風呂でも入ってのんびりしよ」


やはりと言うか混浴の為、しっかりと紐を結んだ湯着を着て浴場に入る。王宮暮らしの間は湯着を使わなかった為か妙に違和感を感じる。長く伸びた黒髪は巻き上げてタオルを巻いて留めた。

結構高価な宿屋にも関わらず浴場は賑わいを見せ、男性もかなりいて湯着を着ていない姿に見慣れているはずなのにドキドキしてしまう自分がいた。


もう、男だった頃の感覚がないなぁ。

ダメだ、ダメだぞ私! 私は男、私は男。



お風呂から上がり、部屋に戻った私は明日とりあえず古城の地下迷宮に向かう事に決めて眠りについた。




翌朝、冒険者ギルドをこっそり覗くと受付嬢が私に気がつきすっ飛んでくる。


「昨日は本当に申し訳ありませんでした。公私混同してしまいあの様な事を」


なんか相当怒られた様で、泣き腫らした顔をして頭を下げて謝ってくる。


「公私混同……一応理由を伺ってみてもいいですか?」


その質問をすると受付嬢さんは目を泳がせながら答えてきた。


「そのーーー様と仲良くされていたので」

「うん?」

「オルカ様と仲良く歩いていたので! その」


ああ、そういう事だったんだ。


「それはほんっとうに勘違いです。オルカさんには助けて貰ってここまで案内してもらっただけです」

「本当にそれだけですか? あ、申し訳ありません……全部私の勘違いだったんですね。お許し願いますでしょうか?」

「ええ、もう気にしてませんから」


そこへまた別の人が声を掛けてきた。


「昨日は当ギルドのサリアが大変迷惑をおかけした」

「も、もう本当に気にしていませんから」


そこにギルドマスターと思わしき人が現れ頭を下げて謝ってくる。周りの冒険者達の目もあってさっさと済ませたい。


「ところで、古城の地下迷宮に向かおうと思うんですけど、その、場所とかを教えていただけませんか?」

「え? いや、失礼した。昨日この町に来たばかりでしたね。サリア、今後はお前に此方の方の担当を任せる。それでは本当に申し訳ありませんでした。私はこの後用があるのでこれで失礼させてもらいます」


そう言ってギルドマスターっぽい人が奥の部屋へ入っていくと、サリアさんが湖上の中央にある古城の地下迷宮について色々とレクチャーしてくれた。


要約すると、古城の脇に地下牢獄に繋がる場所が入り口になっているそうで、そこから中に入ると人為的に作られたような迷宮が広がっているという。

そしてやはりというか、デプス4以上は進まないようにサリアさんが強い口調で言ってきた。

理由を尋ねると、デプス5に行った冒険者は今までも何組かいたけれど、戻ってきた人が誰1人いないことかららしい。

また古城の方は今は持ち主がいない事もあって、冒険者ギルドで管理をしていて、そこで簡易的な宿泊、食事ができるようにしてあるそうだ。

古城の上層階は存在しない城の主を配慮して、侵入禁止にされているという事だった。


一通り説明を受けた私はサリアさんにお礼を言ってさっそく古城へ向かう事にする。


こういう嫉妬からのいざこざって王宮ではなかったから勉強になったなぁ。





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