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化け物

評価してくれた方ありがとうございます!

一瞬静かになる。

そして今まで一言も声を発しなかった、黒い翼を持つ人が声を上げて笑い出した。


「大丈夫? 助ける? どのようにしてだ?

貴様の罪状は、その容姿の偽りから始まる出来もしない嘘だ。

いいだろう、死んだ方が楽だと思うだけの苦しみと恐怖を与えてやろう」



容姿……目の前にいるこの相手は私の本当の姿が見えていると言うの?

うううん、今はそんな事はどうでもいい。


修道士(モンク)特有の呼吸法をし、杖にも気を入れてアダマンティン化させて身構える。部屋の広さをそっと確認すると縮地法を使ってアリエルさんの足を捉えているロープの前まで移動すると同時に杖で叩き斬り、落ちる前にアリエルさんを受け止める。



「我がロープをただの杖で叩き切っただと!?」



勝手に驚いていればいい、私は怒っているんだ。お前さえ姿を見せなければこのままこの町にいられたんだ。それをーーー



アリエルさんを抱えたまま、高速移動で未だ手を広げて大の字のようにしているポラベアさんの襟首を掴むと、部屋の中で1番相手から離れた奥に当たる場所まで走る。



「アリエルさん、ポラベアさんの治療をお願いします」

「あ、貴女は一体……うううん、そんな事今はどうでもいいわね。分かったわ、任せて」


予測(プレディクション)で翼を持った相手の動きを注視していたため、あのポラベアさんの目を撃ち抜いた炎の矢を射撃してくるのがわかり、サッと掌を後ろに伸ばして防壁(バリア)を使い、パキンっと音を立てて放たれた矢を弾く。


直後に今度はオルカさんの側まで縮地法で移動して、同様にアリエルさんに傷の手当をお願いする。

オルカさんは私の事をじっと見つめてきた。


きっと化け物とでも思われてるんだろうなぁ……まぁ仕方がないよね。



「途中、邪魔もしてきたみたいだけど、お待たせしましたね」

「くっ、貴様一体……フン、まぁいい、その素早い動きを我がロープで身動き取れなくしてくれるわ!」


そう言うと、私に向かってロープが伸びてきて身体中に絡まり、そして引き寄せられる。

もちろん避けようなどとしなかったからだ。


「その余裕もいつまで持つか! 貴様の悲鳴をその体からタップリと聞かせてもらうぞ!」


全身に絡みついたロープが締め上げ、体のラインが強調される。そして、先ほど同様いつの間にか手に持った剣で私の体を刺し貫こうとする。


「こういった趣味は私には無いのだけど……」


剣を突き出してきた。


「なっ! 消えた……だと? 我が捕縛を逃れたというのか? どこだ!」


私は修道士(モンク)の奥義とも言える虚身でエーテル化させて捕縛から抜け出ると、相手の背後に移動して実体化させる。



「アリエルさんの分……」


杖で払うように片足に叩きつける。

グシャっと音がなり、片足があらぬ方へ向く。

苦痛に顔を歪めて後ろを向いたところで、逆手に構えた杖で逆手突きをして肩を貫く。


「オルカさんの分……」


グアァァァァァァ!


悲鳴が上がるけど、逆手突きで貫いた攻撃は止まる事なくそのまま引き戻して手をスライドさせる。ヌチャっと貫いた杖先から血糊の感触があり気持ちが悪い。それを我慢して上段から頭を叩きつけ、杖を引きスライドして持ち直しもう一度上段から叩きつける。


「これがポラベアさんの分……」


さすがに目を貫くのは気持ちが悪いので、頭を叩きつけるだけにした。


「この我が……人如きに……許せん、許さんぞおぉぉぉぉぉお!」

「余計な口を開いている暇があったのなら……攻撃なり、逃げるなりすれば良かったですね」


そして、連撃を叩き込んだ。


「はあぁぁぁぁぁぁぁあぁぁぁあ!」


頭を横薙ぎに打ち付け、反対に吹き飛ぶより先にアダマンティンと同等の硬度と威力になっている拳で殴りつける。相手からすれば左右から同時に攻撃を受けた感覚になっているほどの速度だ。連撃はそれで終わりではなく、ありとあらゆる方向から杖で打たれ、拳で殴られ、蹴り飛ばされる。

いわゆる、フルボッコだ。


そしてボロ雑巾のようになった相手にトドメの一撃を入れる。


「そしてこれは……私のやり場の無い、怒りの分!」


思い切り力を込めて横薙ぎした杖は、相手の上半身と下半身を二分させて地面に転がっていった。


いつまで相手が生きていたのか分からない。もしかしたら連撃の最中、とうに死んでいたのかもしれない。

今地面に転がっている2つになった体からは一切動く気配もなく、完全に沈黙させたのは間違いなさそうだった。



あ〜あ……終わっちゃったな。でもこれで良かったのかな? 元々この町には身分証明を作るためだけに来ただけ。うん、そうだよ。

でも、何故か凄く寂しいと思うのはなんでなんだろう。



オルカさん達の姿を見ることなく、ふらふらと1人、上の階に通じる扉の方へ足を向けて歩き出した。



「道案内は、要らないのか?」


背後からオルカさんの声が聞こえた。


「そうよ、帰り道分からないでしょう?」

「迷宮で女の1人歩きは危険だぞ?」


その暖かい言葉に目に涙が溢れてくる。


「私は、化け物ですから……」


振り向かずにそれだけ答えた。


「んー? そういや魔物の奴はどうしたんだ? 俺両目潰されてたから何にも見えなかった」

「あ、あー、あたしも回復魔法掛けるので必死で見てなかったけど、なんかいつの間にか死んでるわね」


わかりきった嘘を棒読みでついてくれる。まだ出会ってほんの少しだったけど、やっぱりこの人達はこんなにも素敵な人達で、私の我儘なんかを押し通さないで良かったと心底思った。



そこへオルカさんが私の肩に手を乗せてきた。


「町へ戻りたいのならついて来い」


この町に来て初めて会った時の事を思い出す。今回はあの時とは逆になったけど。


「はい、ありがとうございます」


堪えきれなくなった涙をボロボロとこぼしながら答えた。




本日分の更新です。


「過去トップレベルの残酷さじゃないですか? 今回」


ですかねぇ、やっぱり悪魔ってこう命を弄ぶというか弱みにつけこんだりするもんでしょう。


「読者さんに嫌われますよ?」


う……でも、冒険ってこう危険な物なんじゃないですか?最もサーラは余裕ですけどね。


「それだと私に関わる人は不幸になるみたいで嫌だなぁ」


話の都合上仕方がありませんね。どこか別の誰かもきっとこういう事になってるはずだから。


「むぅ……」



次回更新は明日の予定です。

結構先まで書いてますが、こっちは書き下ろしに近く終わりが見えてません……

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