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プロローグ  南の海にて

 オーストラリア大陸の近く、ニューギニア島の西。その辺りに点在する島々はソロモン諸島と呼ばれている。1568年にスペイン人のアルバロ・デ・メンダーニャ・デ・ネイラとかいうオッサンがこの辺りで砂金を発見。それに感激してイスラエルのソロモン王の財宝になぞらえ、この一体の島々を「ソロモン諸島」と名付けたのだった。その後、イギリスの植民地になったりしたが、はっきり言おう。この辺は辺境どころかド田舎であった。一応、オーストラリアからユーラシア大陸に延びる航路があったりする物の、一番近いところでもヌーメア、ラバウル、そしてポートモレスビーくらいしか町らしい街はなかったりする。碧い海が広がり、そこに緑のジャングルで覆われ、白い砂浜で縁取られた島々が点在し、後毒蛇やら疫病やら人食い人種が棲む・・・そんな長閑な場所であった。

 



 艦隊が晴天のもと、南に向けて突き進んでいた。先頭を切るのは駆逐艦数隻が先頭で楔形陣形をとり、その後には、やはり数隻の駆逐艦が潜水艦を警戒してか、単縦陣で進む3隻の戦艦を囲むように航行していた。

 

「どうしてこうなった・・・」


一人の少女が勇壮に進む艦隊を見つめながら、途方に暮れたように呟いた。

黒髪碧眼の小柄な少女だった。身長は150センチ弱くらい。年は・・・おそらく十代前半くらいだろうか?海軍士官のカーキ色の陸戦隊服に身を包み、腰から軍刀を下げていた。階級は少佐。彼女が呟いた場所は、戦艦のウィング。そしてその戦艦の名前は『戸隠』といった。

 彼女が乗り込む戦艦戸隠は、ソロモン海に展開する第二艦隊の一因としてラバウルに展開していたのだが、ある任務を帯びて現在は僚艦達と共に、多くの島々がひしめくソロモン諸島の中央水道を南下していた。少し太平洋戦史を囓ったことのある方ならば、この海域を航行する艦隊に戦艦が含まれていると言うことを聞くと、直ぐにピンとくる方もいらっしゃるだろう。

 彼女たちの目的地は言うまでもなく、ソロモン諸島東部に浮かぶガダルカナル島であった。現在そこは、その地にあるヘンダーソン飛行場を巡って日米両軍がしのぎを削る消耗戦の舞台となっていた。戸隠以下の艦艇は、そこを砲撃し、この島に展開する地上軍部隊の支援を行うことを目的としていたのだった。

 そして、そこには迎撃に出てきた米艦隊がいるのかもしれなかった。それを理解しているが故に、少女の顔は冴えなかった。と言うか死ぬかもしれないと言うことで、顔面は蒼白だったりする。


「なんで私がこんな目に遭わなきゃいけないんだ。大体こんなのは訓練積んだ軍人の仕事だろうに・・・」


真っ青な顔でひたすら、ただひたすらぼやいていると、後ろから突然声がかけられた。


「今更何をボヤいても始まらないと思うよ?」



振り返るとそこには、少女を遙かに超える長身の女性の姿があった。金髪黒眼。少女とは違い、水兵服を着ていた。明らかに階級がしたのはずなのだが、彼女が少女に書ける言葉は明らかに階級を意識させない砕けた物であった。


「氷雨か・・・どうかした?」


氷雨と呼ばれた金髪少女は少女の顔を見るなり溜息をついた。


「そんな感じにグダグダしていると思っていたから気になって見に来たの」

 

「そんなこといってもさぁ・・・この先絶対、敵艦隊が待ち受けてるんだぜ?」


「そう言ったって、命令は命令だし、従わなきゃダメだと思うよ?」


「まぁ、そうなんだけど・・・」


「それに、多分私たちの力を上手く使うなら何とかなると思うよ?」


「多分?」


「多分!」


不安そうに聞き返す少女に氷雨は自信たっぷりに言った。

彼女のその雰囲気に少女は少し笑みを浮かべた。


「お前、相変わらずだな」


「こんな風にした人が言わないでよ」


「そんなもんか・・・?」


「そうよ・・・じゃ、元気になったみたいだし、そろそろ戻るね?」


氷雨はそれだけ言うと一瞬輝いたかと思うと姿を消した。

少女は暫く青空が立っていたところを見つめていたが、やがてまた艦隊に視線を戻した。



 彼女はおもむろに懐から煙草を取り出した。丁寧な包装がされたそれは、この時代では絶対にあり得ないビニール製の包装がなされていた。彼女は何でもないようにそれを破ると、箱を開け、煙草を一本取り出し、火を付けた。

 

「全く、いったいどうしたらあんな風になるもんなのかねぇ・・・」


 彼女は苦笑しつつそうボヤいた。

吐き出された紫煙は、かすかな甘い香りと共に、蒼い空へと散っていった。


 それを陶然と眺める少女の名は、村上辰美。海軍予備少佐で、この戸隠の乗組員である。

だが、彼女は同時に、この戸隠の艦魂であると共に、21世紀よりやってきた転生者でもあるという、なんか意味不明な存在でもあったりする。






皆様お久しぶりです。

ついにやってしまいました・・・艦魂もの。

むしゃくしゃしていましたので書きました。反省はしていますが後悔はあんまりしていません。

活動報告で書いたかもしれませんが、私は元々、艦魂モノをもう一度書きたいと思っておりましたので、別府造船の方がなかなか進みませんのでこっちを書いてみました。でも年内には上げたいです。

(最初は二次を書こうと思ったのですが、文章の整合性が大変なことになって投げちゃいました)

戸隠の性能データはそのうち挙げたいと思いますが・・・そんなに強くはならない模様です。




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