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【幸】

新興宗教の信者のオカンを救うため立ち上がる息子。主人公『神宮光太郎』計画性なし。単細胞。NSCに入りたい。

「光太郎!時間!行くよー!」

朝の5時。辺りはまだ暗いというのにオカンは化粧をし服もよそ行きだ。あぁ今日だったか。週二回ある朝の集いだ。

一年ほど前からオカンが参加している新興宗教『幸福論』。あまり大きな団体でもない様だが活動は不明で怪し過ぎる。さすがにオカンをそのままにしておく訳にもいかず俺もオカンについて朝の集いに行き、実態を掴むこととなった。

朝の集いを終え8時頃に帰宅した。内容は瞑想、幸福体操、幹部方の徳高いお話、今日の格言、再度瞑想をして締めくくる。

団体の教祖は神明アラタと言う人物で、ある日突然に天啓を受けたという。ここでは神とは言わず聖司セイジと言うらしい。ギャグみたいな話だ。


でだ、この新興宗教はやはり胡散臭いことをしていた。幹部が高額なお布施を強要するのだ。

「お金に縛られてはいけない。人間が作り出した汚い文化は捨てなさい」

即興で考えた文句だろう。オカンを助けるため俺は立ち上がった。

これで二回目の朝の集い。

俺は考えた。常軌を逸したやり方には同じくらい、それ以上で対抗するしかない。というか、俺は少し楽しんでいた。

小さな公民館を利用し始まる集い。狭い部屋に座布団が隙間なく並べられている。参加者は30代から40代の女性が主だ。瞑想が始まったら俺の作戦スタートだ。

幹部らしきオバハンが前に立った。ゆるーいオルゴールのBGMが流れる中、瞑想を始めて下さい。とオバハンが号令を出した。

皆、俯き目を閉じている。俺は少し時間を置き、いきなり体を前後左右・縦横に激しく動かし始めた。

「ぐうあぁぁぁーあぁあ」

出来る限りの低い声を出し目をひん剥いて体を横に倒した。異変に気付いた周りが騒がしくなり始める。隣のおばさんが大丈夫?と体を揺すってくるが無視して奇声を発しのたうちまわる。

とうとう幹部のオバハンが近付いて来たのを確認し俺は跳び起きた。俺ができるもっとも穏やかで全てを悟った表情(例えるなら仏顔)をして直立不動。幹部のオバハンはびっくりし、ハッ!と小さく叫んだ。周りの人達はポカーンとしている。

俺はゆっくり口を開き、俺の出来る1番高い音域の声を出して言った、もちろん顔は仏。

「今、セ〜ジ様から天啓をうけました。私は全てを悟りました。私は今1番セ〜ジ様に近い存在なのです。今こそ、神明アラタ氏を離れ新しい道を人々に示します。私を産んだ偉大なる母にしてジャパマリアと共にーーーーーーー」

オバハンは状況をのみ込めていない様子だ。幹部ババァをじっと見つめ、念を押した。

「よろしいでしょ〜か?」

「はっ、はぁ」

幹部ババァが腑抜けた声を出した。まぁ普通そうなるだろう。

「それでは失礼しますよ」

と言いオカンの手を取り神様のイメージでフワフワ浮かんでいるような歩き方をして公民館をでた。後に『幸福論』からは頻繁に連絡が来るようになってしまった。

「どこに行けば光太郎氏の講話が聞けるのでしょうか?」

とか、極めつけは…

「明神アラタ氏が光太郎氏を次期幸福論代表にと申しておりまして」



数年後、幸福論信者の全家庭には明神アラタと俺とオカンの写真が飾られることとなった。



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